神ノ創造する日本

鍵山 カキコ

文字の大きさ
2 / 14

発見

しおりを挟む
 今となっては雨の際、ありえないくらいに水のかさが増すようになった日本。
 そのため私達は、崖の上で生活している。
 正直言って崖の上でも十分危険ではあるのだが、他にこれといった場所が無いのだ。
「ねえ、知ってる? 加瀬さん」
 水溜りを眺めていた私に声をかけたのは、元新聞記者の娘・『一ノ瀬いちのせリン』だった。
「ん? 何?」
「日本ね、もう、外国から見離されているらしいよ」
(きっと私が驚くのを期待して)目を輝かせていた一ノ瀬さんに対し、私はそっけなく答える。
「ふ~ん」
「……あれ? 興味ない?」
「そういう訳ではないんだけど……もし外国が動いてくれてるなら、とっくに何とかなってるでしょ」
「……そうだね」
 一ノ瀬さんはなんだか落ち込んだ様子で私から離れていった。
(う~ん、そんなに驚いてほしかったのかな?)
 それにしても、外国から見離されてる……か。
 このままどんどん関係を断たれ、いつの日か、日本が滅びたら……どうなるのだろう。
 どうして幸せな日常が続いていてくれなかったの……?
 なんて嘆いたところで、何も変わらない。
 ただ、生きることだけを考えないと……!
「どうした? ぼーっとして」
 誰かが後ろから私に話しかける。
「……なんだ伊藤か」
 振り向いた先にいたのは、両手をパーカーのポケットに突っ込んだ伊藤だった。
「なんだとは何だ! ったく、失礼なやつ」
「そう?」
「もういいよ……。ところで、さっき一ノ瀬から聞いたんだけど──」
「外国から見離されてるって話?」
 伊藤は目を見開く。
「知ってんのか」
「ついさっき聞いた」
「ふ~ん。それでさ、疑問なんだけど、何でアイツ、そんな事知ってるんだと思う?」
「さあ、単に私達を混乱させたいがための出鱈目でたらめかもしれないし」
 伊藤は興味無さそうに、
「ふ~ん」
とだけ呟いた。
(自分から訊いてきたくせに……)

「ハア、暇過ぎる」
 何も無い空を眺めながら、伊藤はため息をついた。
「仕方ないでしょ、生きてることに感謝しないと」
「う~ん。そうなんだけど……」
「我慢するしかないよ」
「……へいへい」
 ここまで、いつものやり取り。
 伊藤が何かを言えば、それに対して私が何かしら答える。
 その後は、また沈黙が続く。
 ──だが、今日は違った。
「……でもよ、どうせ近い内に死ぬだろ?」
「……何が言いたいの?」
 伊藤がニヤリと笑う。
「探検しねぇか?ほら、あの辺」
 伊藤は後ろを指差す。 
 そこにあるのは──巨大な岩の数々。
「どうせなんにも無いよ」
「分かんないだろ? それにあの岩、何かを囲っているように見える」
 言われてみればそう見えなくも無いが、う~む……。
「な、いいじゃん! 子供らしく、さ」
 先程の悪そうな笑顔とは一変、伊藤は爽やかな笑みをうかべる。
「ゔ……一回だけ……ね?」
「うっしゃー!」

「割と遠いんだね……ハァ」
「こんなんで息上がったのか?運動不足だな」
(運動する機会が無いっつーの!)
「それにしてもデカイなー。家くらいのサイズじゃねぇか?」
 そう言って岩の一つをペタペタ触る伊藤。
「ちょっと、あんまり触らない方が良いんじゃない?」
「ゆうなはビビリ過ぎなんだよ。もっと気楽にいろって」
「いや、だってこんな岩怪しいでしょ!」
 そう私が叫んだのを無視する伊藤。
「あ!」
「人の話を聞け!」
「ごめんごめん☆」
 伊藤は私に向けてウインクをする。
 反省した様子が微塵もない。が、伊藤が見つけた何かが気になったので、ひとまず許す事にする。
「で、何見つけたの?」
「ほら、なんか建物があるだろ?」
 そう言って、伊藤は岩と岩の隙間を指差した。
 そこには、謎の建物があった。
「本当だ……。って、えぇ!?」
 本当に、岩が何かを囲っていた……。
「しかも見ろよ。あの中、誰か居る」
 窓からこっそり中を覗くと、そこには人影が見えた。
「えっ……」
 どうしよう……。
 急な事に、頭が追いつかない。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...