神ノ創造する日本

鍵山 カキコ

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語られる事実

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「さて、皆来た?」
「うんお兄様。一応ね」
 肩にもたれかかる明日香の頭を優しく撫でながら私はシアターの椅子に座った。
 カチッ。
 部屋の電気が消え、たちまち暗闇になった。
「!?」
 明日香が一瞬震えた。
[只今より、映画『神々の決断』を上映致します]
 ハキハキとしたアナウンス。
 この声は、きっと一ノ瀬さん──リョーゼだ。
 スクリーンに映像が流れ始める。
 穏やかな自然の映像。
【大昔、この地には多くの自然がありました。たくさんの生き物たちもいました。しかし、それらはどんどん無くなりつつあるのです。そう、人類のために】
 映像が人間を映すものに切り替わった。
【自分達の発展のために多くの犠牲を出し、これでもかという程自然を滅ぼしていきました。だが、それはそれで面白い。と、我ら神は人類がどうしていくのか、見てやろうと考えていました】
 またしても映像が替わる。
 今度は、輝く程の白い神秘的な塔が映った。
【しかし、天界の主──我らの王が代わったことで、天界全体で人類に関する意見が変わっていったのです】
 今度は日本列島が映された。
【新・天界の主は、日本が嫌いだという。その理由は明かされていないが、主は日本を滅ぼそうと決めたのです】
「んな勝手な!」
 伊藤の叫び声。
[伊藤拓海。上映中はお静かに]
「……黙っていられるかこんなもん! なんだよ! って! こっちの身にもなれや!」
(伊藤……)
 伊藤は私達が思っている事を、代弁してくれた。
[……伊藤君。貴方がそんなこと言える立場じゃないの、知ってる?]
「知らねーよ! 大体、なんだよ神って! そんなモンいるか!」
 伊藤が前の椅子を蹴る。
[……生意気な人]
 パチンッと、指を鳴らす音が聞こえた。
「う、うわああああ!」
 伊藤の隣に座っていた男子が、情けなく悲鳴をあげる。
「い、伊藤が……消えたぁぁぁああ!」
「!? な、何を……」
[伊藤拓海は私が消しました。生意気な態度をとっているとこうなりますよ、貴方達も]
 リョーゼの姿は見えないのに、恐ろしさが伝わってくる。
 伊藤の消滅を悲しむ暇もなく、映像が流れ始める。
【……最も憎い者を殺せるなら、貴方はどのような方法をとりますか?】
 ここで一旦、映像が停止する。
(?)
[さて、まずは端にいる東野明日香さん、お願いします]
「わた……し?」
[ええ]
 もう涙も枯れてスッキリした明日香が指名された。
「どう殺すか……って事?」
[はい]
 自分が愛していた子にそんな事を訊かれるなんて、どんな思いだろうか。
「私は──すぐに殺したい! 姿すら分からなくなるくらいにグチャグチャにして!」
(怖……)
[そうですか。ありがとうございます。続いて、加瀬ゆうなさんお願いします]
 ドキリとした。
 これ、全員指名されるのか……?
「え……えっと……私は……」
 実際、分からない。
 私には、言う程憎い人間がいない気がする。
(あ、でも──)
 兄はそういったものに詳しかった。
 詳しいというか、好んでいた。
(えっと、確か──)
「ありえないくらいの屈辱を味合わせて、じっくり拷問して、ここだなって時に、ゆっくり殺します」
 私に、兄が取り憑いたような感覚だった。
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