6 / 14
語られる事実
しおりを挟む
「さて、皆来た?」
「うんお兄様。一応ね」
肩にもたれかかる明日香の頭を優しく撫でながら私はシアターの椅子に座った。
カチッ。
部屋の電気が消え、たちまち暗闇になった。
「!?」
明日香が一瞬震えた。
[只今より、映画『神々の決断』を上映致します]
ハキハキとしたアナウンス。
この声は、きっと一ノ瀬さん──リョーゼだ。
スクリーンに映像が流れ始める。
穏やかな自然の映像。
【大昔、この地には多くの自然がありました。たくさんの生き物たちもいました。しかし、それらはどんどん無くなりつつあるのです。そう、人類のために】
映像が人間を映すものに切り替わった。
【自分達の発展のために多くの犠牲を出し、これでもかという程自然を滅ぼしていきました。だが、それはそれで面白い。と、我ら神は人類がどうしていくのか、見てやろうと考えていました】
またしても映像が替わる。
今度は、輝く程の白い神秘的な塔が映った。
【しかし、天界の主──我らの王が代わったことで、天界全体で人類に関する意見が変わっていったのです】
今度は日本列島が映された。
【新・天界の主は、日本が嫌いだという。その理由は明かされていないが、主は日本を滅ぼそうと決めたのです】
「んな勝手な!」
伊藤の叫び声。
[伊藤拓海。上映中はお静かに]
「……黙っていられるかこんなもん! なんだよ! 日本が嫌いだから滅ぼすって! こっちの身にもなれや!」
(伊藤……)
伊藤は私達が思っている事を、代弁してくれた。
[……伊藤君。貴方がそんなこと言える立場じゃないの、知ってる?]
「知らねーよ! 大体、なんだよ神って! そんなモンいるか!」
伊藤が前の椅子を蹴る。
[……生意気な人]
パチンッと、指を鳴らす音が聞こえた。
「う、うわああああ!」
伊藤の隣に座っていた男子が、情けなく悲鳴をあげる。
「い、伊藤が……消えたぁぁぁああ!」
「!? な、何を……」
[伊藤拓海は私が消しました。生意気な態度をとっているとこうなりますよ、貴方達も]
リョーゼの姿は見えないのに、恐ろしさが伝わってくる。
伊藤の消滅を悲しむ暇もなく、映像が流れ始める。
【……最も憎い者を殺せるなら、貴方はどのような方法をとりますか?】
ここで一旦、映像が停止する。
(?)
[さて、まずは端にいる東野明日香さん、お願いします]
「わた……し?」
[ええ]
もう涙も枯れてスッキリした明日香が指名された。
「どう殺すか……って事?」
[はい]
自分が愛していた子にそんな事を訊かれるなんて、どんな思いだろうか。
「私は──すぐに殺したい! 姿すら分からなくなるくらいにグチャグチャにして!」
(怖……)
[そうですか。ありがとうございます。続いて、加瀬ゆうなさんお願いします]
ドキリとした。
これ、全員指名されるのか……?
「え……えっと……私は……」
実際、分からない。
私には、言う程憎い人間がいない気がする。
(あ、でも──)
兄はそういったものに詳しかった。
詳しいというか、好んでいた。
(えっと、確か──)
「ありえないくらいの屈辱を味合わせて、じっくり拷問して、ここだなって時に、ゆっくり殺します」
私に、兄が取り憑いたような感覚だった。
「うんお兄様。一応ね」
肩にもたれかかる明日香の頭を優しく撫でながら私はシアターの椅子に座った。
カチッ。
部屋の電気が消え、たちまち暗闇になった。
「!?」
明日香が一瞬震えた。
[只今より、映画『神々の決断』を上映致します]
ハキハキとしたアナウンス。
この声は、きっと一ノ瀬さん──リョーゼだ。
スクリーンに映像が流れ始める。
穏やかな自然の映像。
【大昔、この地には多くの自然がありました。たくさんの生き物たちもいました。しかし、それらはどんどん無くなりつつあるのです。そう、人類のために】
映像が人間を映すものに切り替わった。
【自分達の発展のために多くの犠牲を出し、これでもかという程自然を滅ぼしていきました。だが、それはそれで面白い。と、我ら神は人類がどうしていくのか、見てやろうと考えていました】
またしても映像が替わる。
今度は、輝く程の白い神秘的な塔が映った。
【しかし、天界の主──我らの王が代わったことで、天界全体で人類に関する意見が変わっていったのです】
今度は日本列島が映された。
【新・天界の主は、日本が嫌いだという。その理由は明かされていないが、主は日本を滅ぼそうと決めたのです】
「んな勝手な!」
伊藤の叫び声。
[伊藤拓海。上映中はお静かに]
「……黙っていられるかこんなもん! なんだよ! 日本が嫌いだから滅ぼすって! こっちの身にもなれや!」
(伊藤……)
伊藤は私達が思っている事を、代弁してくれた。
[……伊藤君。貴方がそんなこと言える立場じゃないの、知ってる?]
「知らねーよ! 大体、なんだよ神って! そんなモンいるか!」
伊藤が前の椅子を蹴る。
[……生意気な人]
パチンッと、指を鳴らす音が聞こえた。
「う、うわああああ!」
伊藤の隣に座っていた男子が、情けなく悲鳴をあげる。
「い、伊藤が……消えたぁぁぁああ!」
「!? な、何を……」
[伊藤拓海は私が消しました。生意気な態度をとっているとこうなりますよ、貴方達も]
リョーゼの姿は見えないのに、恐ろしさが伝わってくる。
伊藤の消滅を悲しむ暇もなく、映像が流れ始める。
【……最も憎い者を殺せるなら、貴方はどのような方法をとりますか?】
ここで一旦、映像が停止する。
(?)
[さて、まずは端にいる東野明日香さん、お願いします]
「わた……し?」
[ええ]
もう涙も枯れてスッキリした明日香が指名された。
「どう殺すか……って事?」
[はい]
自分が愛していた子にそんな事を訊かれるなんて、どんな思いだろうか。
「私は──すぐに殺したい! 姿すら分からなくなるくらいにグチャグチャにして!」
(怖……)
[そうですか。ありがとうございます。続いて、加瀬ゆうなさんお願いします]
ドキリとした。
これ、全員指名されるのか……?
「え……えっと……私は……」
実際、分からない。
私には、言う程憎い人間がいない気がする。
(あ、でも──)
兄はそういったものに詳しかった。
詳しいというか、好んでいた。
(えっと、確か──)
「ありえないくらいの屈辱を味合わせて、じっくり拷問して、ここだなって時に、ゆっくり殺します」
私に、兄が取り憑いたような感覚だった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる