神ノ創造する日本

鍵山 カキコ

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救いの女神 

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「君の事が好きだ! 付き合ってください!」
 話したことも無い男が、平気でそんな事をほざくのが気に入らなかった。
「顔に惚れて告白してくるな」という訳ではない。
 ただ、本当に単純に、告白なんてしてきて欲しくないだけだ。
 好きなのは分かったから、いちいち言葉にしてくるな。
 私に言うな。
「OK貰えなくても、想いを伝えたい」?
 ふざけるな。
 そんなものは自己満足だ。私を巻き込まないでくれ。
 ウザい、ウザい、ウザい、ウザったい!

「あ、コレ……田中から受け取ったんだけど……ごめんね。私、処理なんて出来なくて……!」
 男子から私への手紙を届けてくる親友のゆうな。
 ごめんなんて言わないで。
 貴方はなんにも悪くないのに。
 悪いのは、やめろって何回言っても聞かない、しつこい男共なのに。
 どうして、ゆうなが辛い思いをしなくちゃいけないの?

 愛を向けられることはあっても、愛を向けたことは無い。
 ゆうなへの想いだって、愛とはいえない。
(誰かを愛す事が出来れば、告白されるのを今ほど嫌だと思わなくなるはずなのになぁ)
 そんな事を常々考えている。

 ──奇跡は突然に訪れるものだと、この日知った。
「転校生を紹介する」
 先生と共に教室にやってきた、可憐な少女。
「皆さんこんにちは。い、一ノ瀬 リンです。よ、よろしくお願いします」
 腰まで届く程長いのに、サラリと美しい黒髪。
 宝石のように輝く大きな瞳。
 可愛らしいお鼻。
 大きく動かない口。
 緊張のあまり縮こまっている彼女に、私は心を射抜かれた。

「はじめまして! 私、東野明日香!よろしくね!」
「!」
 ビクリと体を震わせるリン。
 ハァ、可愛い。 
「あ、よろしく……ね」
 私が眩しいほどの笑みを浮かべていたからか、リンはぎこちなく微笑んだ。
 その笑みを見ているだけで、リンの事以外考えられなくなる。
 心が、今までの私の黒い部分が全て、洗われる。
 
 それからも私は積極的にリンに話し掛けたり、一緒に出かけたりした。
 ゆうなと遊ぶ事はほとんど無くなったが、ゆうなはそれを気にしていなかった。
 他にも遊ぶ友達がいたからか、それとも気遣いか。
 案外両方かもしれない。
 
 毎日が幸せだった。
 リンを見るだけで、他に何も要らないと思えた。
 なのに、なのに──
 本当の姿、は……何なの?
 とても信じられない。
 ショック。騙されていたんだ。
『神』であることは別に疑わない。
 私を救ってくれた、癒やしをくれた『女神』だとずっと思っていたから。
 だけど、だけどだけどだけど!
 彼女は『一ノ瀬 リン』じゃない。『リョーゼ=エニソン』なのだ。
 私が愛したのは、彼女だけど、彼女じゃない。
 そういう事か。
「明日香、辛いの?」
 不安そうな表情で、ゆうなが訊いてくる。
「どうして?」
「だって……泣いてるよ」
「え……? あ、本当だ……」
 床に一滴、涙が落ちる。
 それは、私の愛の証。
「……我慢しなくていいよ、思いっ切り泣いて」
 ゆうなが暖かい笑顔を向けてくれた。
「ありがとぉ……。ゔっ、ゔゔぅ」
 私はゆうなの胸の中で泣いた。
 ──良い親友を持ったな、私。
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