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言いたい事
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「神じゃない? なら、どうしてあんなに落ち着いているんだ? 狂気じみているんだ?」
江田君は、遠野君が神であるという架空の事実を言い訳にしたいようで、リョーゼに質問攻めする。
「……それは彼自身の持っているもの。単にそういったものが好きなのかもしれないし、それに慣れなくてはならない環境にいた経験があるのかもしれない」
リョーゼは淡々と話す。
「いや、それにしたっておかしいだろ!? 絶対神だ! 遠野は!」
リョーゼが顔を歪める。
「神が必ずしもサイコパスだなんて思ってるの? 失礼だよ?」
「そ、そういうんじゃなくって!」
「じゃあ何なの? 君は、どうしたいの? いつも一緒にいた仲の良い友達の趣味やら好みやらを知った途端、突き放すの? 最期の最期までそんなこと言っててどうするの?」
「……」
私はふと遠野君を見た。
彼は悲しげな笑みを浮かべている。
でも私には、それが作り物にしか見えなかった。
遠野君は神じゃないにしろ、何か別の特別な存在なのではないだろうか。
他の人がどう思おうとも、私はそう考えた。
「もう、いいんだよ。リョーゼさん。気味が悪いと思うのは、当然といえば当然さ」
何かを悟ったような、遠野君の演技がかった声。
「……そう。
じゃあ、これで終わりでいい? 遠野君の質問タイム」
「ああ」
軽く頷く遠野君。
「もう他にいない? 質問があったりとか、あっ、告白とかでもいいよ」
「──!」
明日香はリョーゼの言葉を聞くと、ギュッと自分の服を掴んだ。
「ねぇ、リョーゼ。一回、『リン』の姿になってくれない?」
リョーゼはにこやかに
「いいよ」
と答え、クルリと回った。
あっという間に、『一ノ瀬リン』に変身した。
彼女の姿を見るなり、明日香は顔を赤らめ、手で口元を隠しながらにやけていた。
「……私貴女に、ず~~っと伝えたい事があったの! 私、私……」
明日香はすーっと息を吸った。
「リンのことが、好きなの!」
「「「「「えっ!?」」」」」
江田君、鎌田さん、トミー、小村谷君、そして遠野君までもが、驚きのあまり声を洩らした。
「……そっか。……ありがとう、明日香ちゃん」
リョーゼは嬉しそうに微笑む。
「ちょ、ちょ、ちょっと! なら俺だって、東野が好きだああぁぁ!」
江田君の突然の告白。
「はぁ?」
明日香は本気で嫌がっている。
「あ、ごめん……そんなに嫌?」
江田君は泣きそうになっていた。
その光景を見て、私は思わず笑ってしまった。
「フフフッフフッ」
「加瀬お前……人が振られたってのに!」
「ごめん、でも面白くて……」
「失礼だなぁ!」
でも江田くんは、言う程怒ってはいなさそうだ。
きっと、振られて気まずい雰囲気になるよりはずっとマシだと思ったのだろう。
(なんだか久々だなぁ……。この和やかな雰囲気)
ずっとこのまま、続けばいいのに。
でも──
パンパンッ。
「さて、そろそろお喋りも終わりでいいかな? 一時的な妹の同級生といえど、特別扱いはできないからね」
トミーは情も何もなしに話す。
まあ、神が人間に同情なんてしないか。
「消すって言ったって、どうするんですか?」
私は疑問に思い、トミーに尋ねた。
リョーゼが伊藤を消したように、指を鳴らすのだろうか。
「……消す時は結構呆気ないよ。さっきのリョーゼと同じさ。指をパチンッてね」
「……そうなんですか」
日本は、彼の指の支配下……という事か。
「さて、もういいかな?」
「はい」
「じゃあ、いっくよ~」
トミーは右手を掲げる。
「せ~のっ」
──パチンッ。
江田君は、遠野君が神であるという架空の事実を言い訳にしたいようで、リョーゼに質問攻めする。
「……それは彼自身の持っているもの。単にそういったものが好きなのかもしれないし、それに慣れなくてはならない環境にいた経験があるのかもしれない」
リョーゼは淡々と話す。
「いや、それにしたっておかしいだろ!? 絶対神だ! 遠野は!」
リョーゼが顔を歪める。
「神が必ずしもサイコパスだなんて思ってるの? 失礼だよ?」
「そ、そういうんじゃなくって!」
「じゃあ何なの? 君は、どうしたいの? いつも一緒にいた仲の良い友達の趣味やら好みやらを知った途端、突き放すの? 最期の最期までそんなこと言っててどうするの?」
「……」
私はふと遠野君を見た。
彼は悲しげな笑みを浮かべている。
でも私には、それが作り物にしか見えなかった。
遠野君は神じゃないにしろ、何か別の特別な存在なのではないだろうか。
他の人がどう思おうとも、私はそう考えた。
「もう、いいんだよ。リョーゼさん。気味が悪いと思うのは、当然といえば当然さ」
何かを悟ったような、遠野君の演技がかった声。
「……そう。
じゃあ、これで終わりでいい? 遠野君の質問タイム」
「ああ」
軽く頷く遠野君。
「もう他にいない? 質問があったりとか、あっ、告白とかでもいいよ」
「──!」
明日香はリョーゼの言葉を聞くと、ギュッと自分の服を掴んだ。
「ねぇ、リョーゼ。一回、『リン』の姿になってくれない?」
リョーゼはにこやかに
「いいよ」
と答え、クルリと回った。
あっという間に、『一ノ瀬リン』に変身した。
彼女の姿を見るなり、明日香は顔を赤らめ、手で口元を隠しながらにやけていた。
「……私貴女に、ず~~っと伝えたい事があったの! 私、私……」
明日香はすーっと息を吸った。
「リンのことが、好きなの!」
「「「「「えっ!?」」」」」
江田君、鎌田さん、トミー、小村谷君、そして遠野君までもが、驚きのあまり声を洩らした。
「……そっか。……ありがとう、明日香ちゃん」
リョーゼは嬉しそうに微笑む。
「ちょ、ちょ、ちょっと! なら俺だって、東野が好きだああぁぁ!」
江田君の突然の告白。
「はぁ?」
明日香は本気で嫌がっている。
「あ、ごめん……そんなに嫌?」
江田君は泣きそうになっていた。
その光景を見て、私は思わず笑ってしまった。
「フフフッフフッ」
「加瀬お前……人が振られたってのに!」
「ごめん、でも面白くて……」
「失礼だなぁ!」
でも江田くんは、言う程怒ってはいなさそうだ。
きっと、振られて気まずい雰囲気になるよりはずっとマシだと思ったのだろう。
(なんだか久々だなぁ……。この和やかな雰囲気)
ずっとこのまま、続けばいいのに。
でも──
パンパンッ。
「さて、そろそろお喋りも終わりでいいかな? 一時的な妹の同級生といえど、特別扱いはできないからね」
トミーは情も何もなしに話す。
まあ、神が人間に同情なんてしないか。
「消すって言ったって、どうするんですか?」
私は疑問に思い、トミーに尋ねた。
リョーゼが伊藤を消したように、指を鳴らすのだろうか。
「……消す時は結構呆気ないよ。さっきのリョーゼと同じさ。指をパチンッてね」
「……そうなんですか」
日本は、彼の指の支配下……という事か。
「さて、もういいかな?」
「はい」
「じゃあ、いっくよ~」
トミーは右手を掲げる。
「せ~のっ」
──パチンッ。
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