7 / 40
第1章 商人の街
次の町までの余談
しおりを挟む
問題を解決し、街を後にしたリオンは、魔王だったという少年、アキトと共に、平原を歩いていた。
「ねえ、次はどこに行くの? なにするの? どんな魔物を倒すのー?」
「……うるせぇ、黙ってろ」
「勝手にしろ、って言ったのそっちじゃーん」
「──!? 馬鹿、思い出させるんじゃねぇ!!」
あの一件以来、やたらと絡んでくる、元魔王と言いながら今でも黒いマントを羽織ったままの自称元魔王に、リオンはうんざりしていた。
「ったく、未だに信じられねぇよ……」
あれほど苦痛だった仲間と聖剣をたった一日で手放し、今はシンプルな冒険者といった格好に、貰った鉄の剣を携えていた。
「ねぇねぇ、これからやりたい事とかってあるの?」
「……別に、ただ適当に生きてくだけ」
「帰りたい、とかは思わないんだ」
「それは……」
「なんとなくわかるよ、僕もこっちの世界の方が生きやすい」
(……こいつ、 今までどんなふうに生きてたんだろう)
そんな疑問がよぎった矢先、二つの影が視界に入り、叫び声と共に上空から何かが降ってくる。
「「アキト様ぁぁぁぁ!!」」
突如降ってきたそれは、地面に激突し砂煙を上げ、やがて二体の魔物が現れた。
「ガァァァゴイルゥ! いつも加減しろって言ってるだろ、テメェ!!」
「ケケッ、悪ぃ悪ぃ、オレ単体じゃねぇと急には止まれねぇもんで」
現れた魔物の群れに、リオンは眉をひそめ、アキトに目を向ける。
「……知り合いか?」
「まあ…… 一応?」
しばらくして魔物たちは起き上がり、こちらを確認するな否や、恭しく頭を垂れた。
「ケケッ、申し遅れました勇者様、ワタクシ魔王様の忠実なる従者ガーゴイルと申します、以後お見知りおきを」
「同じく、魔王様の従者、人狼と申します」
空から降ってきた二体に、リオンは思わず顔がひきつらせた。
「……何が、どうなっているんだ?」
その質問にアキトが答える。
「えーっと…… 今回一番頑張った二人、かな?」
「ケケケケケッ! ありがたきお言葉、感謝致します」
「うん、だって── 街の問題について教えてくれたのも、聖剣について教えてくれたのも、この二人だったから」
初めの印象からは予測出来ないまさかの返答に、リオンは驚きを隠せなかった。
「……マジで?」
「ケケケッ、さすがに街中にある魔石装置の回収には骨が折れましたよ、ワタクシ単体と致しましては、研究資源が増えて大満足ですが」
「はい、僭越ながら、私は魔道具に関する知識を得意としておりまして、勇者様が聖剣による覚醒が十分ではないと判断した所存です」
(うわぁ…… 思ってた以上に有能だぞ、この二体)
「ケケッ、もうちょっと早く人狼が魔将に気付いてりゃ完璧だったなぁ、アキト様がいなかったらぐっすりだったぜ」
「ええい、やかましい、前に聖剣に関する文献を読んでいたからわかったんだ、その魔法を扱う魔物がいたことにも驚いたが…… 」
あれやこれやと、二体が自分たちの世界で話し合っている中、アキトが捕捉を加える。
「ちなみに商人の真似を教えてくれたのも、この二人」
「ああ、うん、それは何か気付いた」
「ン、ン……といったところでございまして。勇者様、私たちは最後の確認をしに参りました」
ようやく戻ってきた二体は、真剣な面持ちでリオンを見つめる。
「確認? 何をだ?」
「ケケッ、それはもちろん── 勇者様が魔王様と敵対しないという確認ですよ」
空気が一変して重くなる。
──その通りだ、自分は勇者として召喚された存在、そのことに変わりないのだ。
「大丈夫だよ、二人とも。彼は誓ってくれたんだ、敵対することなく、仲良くしてくれるって」
当人であるアキトが、宥めるよう言い聞かせる。
「お前……」
「それに関係ないでしょ、ほら」
アキトは向きを変え。片手でそっと、リオンの首元を掴んだ。
「僕がその気になれば、いつだって倒せるんだよ」
不意を突かれ、リオンは動けなかった。
表情の見えない殺意に、魔物たちが恐怖する。
(こいつ……!? 勇者に殺されたくないから誓わせたんじゃねえ、自分が勇者を殺さないために誓わせたんだ──!)
「わかってくれた?」
「「は、はいぃ…… 」」
「じゃあ、もういいよね」
「も、もちろんでございます、ですが私たちの主は貴方様以外あり得ません、影ながらお仕えさせていただきます」
「そっか、ありがと」
「ケ、ケケッ、またお困りごとがございましたらいつでもお呼びください。……んじゃ、帰るぞ、人狼」
「今度こそ止まってくれるよな!?」
「ケケケッ まっかせとけってのー!」
「やはり信用ならーん!!」
騒がしく飛び去ってく二体を見送りながら、リオンは同じく手を振るアキトに目を向けた。
(あいつにとって、俺は倒すか生かすかの二択でしかないんだな……)
「……なんか複雑」
「ん? 今、なんか言った?」
「なんでもねぇよ!!」
やがて二人は次の町に辿り着く、だかそれが──
「……ウフフ、なんて可愛らしい人間なのかしら」
そこが魔将が支配する町だと、彼らはまだ知るよしもなかった。
「ねえ、次はどこに行くの? なにするの? どんな魔物を倒すのー?」
「……うるせぇ、黙ってろ」
「勝手にしろ、って言ったのそっちじゃーん」
「──!? 馬鹿、思い出させるんじゃねぇ!!」
あの一件以来、やたらと絡んでくる、元魔王と言いながら今でも黒いマントを羽織ったままの自称元魔王に、リオンはうんざりしていた。
「ったく、未だに信じられねぇよ……」
あれほど苦痛だった仲間と聖剣をたった一日で手放し、今はシンプルな冒険者といった格好に、貰った鉄の剣を携えていた。
「ねぇねぇ、これからやりたい事とかってあるの?」
「……別に、ただ適当に生きてくだけ」
「帰りたい、とかは思わないんだ」
「それは……」
「なんとなくわかるよ、僕もこっちの世界の方が生きやすい」
(……こいつ、 今までどんなふうに生きてたんだろう)
そんな疑問がよぎった矢先、二つの影が視界に入り、叫び声と共に上空から何かが降ってくる。
「「アキト様ぁぁぁぁ!!」」
突如降ってきたそれは、地面に激突し砂煙を上げ、やがて二体の魔物が現れた。
「ガァァァゴイルゥ! いつも加減しろって言ってるだろ、テメェ!!」
「ケケッ、悪ぃ悪ぃ、オレ単体じゃねぇと急には止まれねぇもんで」
現れた魔物の群れに、リオンは眉をひそめ、アキトに目を向ける。
「……知り合いか?」
「まあ…… 一応?」
しばらくして魔物たちは起き上がり、こちらを確認するな否や、恭しく頭を垂れた。
「ケケッ、申し遅れました勇者様、ワタクシ魔王様の忠実なる従者ガーゴイルと申します、以後お見知りおきを」
「同じく、魔王様の従者、人狼と申します」
空から降ってきた二体に、リオンは思わず顔がひきつらせた。
「……何が、どうなっているんだ?」
その質問にアキトが答える。
「えーっと…… 今回一番頑張った二人、かな?」
「ケケケケケッ! ありがたきお言葉、感謝致します」
「うん、だって── 街の問題について教えてくれたのも、聖剣について教えてくれたのも、この二人だったから」
初めの印象からは予測出来ないまさかの返答に、リオンは驚きを隠せなかった。
「……マジで?」
「ケケケッ、さすがに街中にある魔石装置の回収には骨が折れましたよ、ワタクシ単体と致しましては、研究資源が増えて大満足ですが」
「はい、僭越ながら、私は魔道具に関する知識を得意としておりまして、勇者様が聖剣による覚醒が十分ではないと判断した所存です」
(うわぁ…… 思ってた以上に有能だぞ、この二体)
「ケケッ、もうちょっと早く人狼が魔将に気付いてりゃ完璧だったなぁ、アキト様がいなかったらぐっすりだったぜ」
「ええい、やかましい、前に聖剣に関する文献を読んでいたからわかったんだ、その魔法を扱う魔物がいたことにも驚いたが…… 」
あれやこれやと、二体が自分たちの世界で話し合っている中、アキトが捕捉を加える。
「ちなみに商人の真似を教えてくれたのも、この二人」
「ああ、うん、それは何か気付いた」
「ン、ン……といったところでございまして。勇者様、私たちは最後の確認をしに参りました」
ようやく戻ってきた二体は、真剣な面持ちでリオンを見つめる。
「確認? 何をだ?」
「ケケッ、それはもちろん── 勇者様が魔王様と敵対しないという確認ですよ」
空気が一変して重くなる。
──その通りだ、自分は勇者として召喚された存在、そのことに変わりないのだ。
「大丈夫だよ、二人とも。彼は誓ってくれたんだ、敵対することなく、仲良くしてくれるって」
当人であるアキトが、宥めるよう言い聞かせる。
「お前……」
「それに関係ないでしょ、ほら」
アキトは向きを変え。片手でそっと、リオンの首元を掴んだ。
「僕がその気になれば、いつだって倒せるんだよ」
不意を突かれ、リオンは動けなかった。
表情の見えない殺意に、魔物たちが恐怖する。
(こいつ……!? 勇者に殺されたくないから誓わせたんじゃねえ、自分が勇者を殺さないために誓わせたんだ──!)
「わかってくれた?」
「「は、はいぃ…… 」」
「じゃあ、もういいよね」
「も、もちろんでございます、ですが私たちの主は貴方様以外あり得ません、影ながらお仕えさせていただきます」
「そっか、ありがと」
「ケ、ケケッ、またお困りごとがございましたらいつでもお呼びください。……んじゃ、帰るぞ、人狼」
「今度こそ止まってくれるよな!?」
「ケケケッ まっかせとけってのー!」
「やはり信用ならーん!!」
騒がしく飛び去ってく二体を見送りながら、リオンは同じく手を振るアキトに目を向けた。
(あいつにとって、俺は倒すか生かすかの二択でしかないんだな……)
「……なんか複雑」
「ん? 今、なんか言った?」
「なんでもねぇよ!!」
やがて二人は次の町に辿り着く、だかそれが──
「……ウフフ、なんて可愛らしい人間なのかしら」
そこが魔将が支配する町だと、彼らはまだ知るよしもなかった。
5
あなたにおすすめの小説
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
第2王子は断罪役を放棄します!
木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。
前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。
それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。
記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる!
ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる!
スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します!
この話は小説家になろうにも投稿しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる