召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第1章 商人の街

次の町までの余談

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 問題を解決し、街を後にしたリオンは、魔王だったという少年、アキトと共に、平原を歩いていた。


「ねえ、次はどこに行くの? なにするの? どんな魔物を倒すのー?」

「……うるせぇ、黙ってろ」

「勝手にしろ、って言ったのそっちじゃーん」

「──!? 馬鹿、思い出させるんじゃねぇ!!」

 あの一件以来、やたらと絡んでくる、元魔王と言いながら今でも黒いマントを羽織ったままの自称元魔王に、リオンはうんざりしていた。

「ったく、未だに信じられねぇよ……」

 あれほど苦痛だった仲間と聖剣をたった一日で手放し、今はシンプルな冒険者といった格好に、貰った鉄の剣を携えていた。


「ねぇねぇ、これからやりたい事とかってあるの?」

「……別に、ただ適当に生きてくだけ」

「帰りたい、とかは思わないんだ」

「それは……」

「なんとなくわかるよ、僕もこっちの世界の方が生きやすい」

 (……こいつ、 今までどんなふうに生きてたんだろう)

 そんな疑問がよぎった矢先、二つの影が視界に入り、叫び声と共に上空から何かが降ってくる。



「「アキト様ぁぁぁぁ!!」」




 突如降ってきたそれは、地面に激突し砂煙を上げ、やがて二体の魔物が現れた。


「ガァァァゴイルゥ! いつも加減しろって言ってるだろ、テメェ!!」

「ケケッ、悪ぃ悪ぃ、オレ単体じゃねぇと急には止まれねぇもんで」

 現れた魔物の群れに、リオンは眉をひそめ、アキトに目を向ける。

「……知り合いか?」

「まあ…… 一応?」

 しばらくして魔物たちは起き上がり、こちらを確認するな否や、恭しく頭を垂れた。


「ケケッ、申し遅れました勇者様、ワタクシ魔王様の忠実なる従者ガーゴイルと申します、以後お見知りおきを」

「同じく、魔王様の従者、人狼ワーウルフと申します」


 空から降ってきた二体に、リオンは思わず顔がひきつらせた。


「……何が、どうなっているんだ?」

 その質問にアキトが答える。

「えーっと…… 今回一番頑張った二人、かな?」

「ケケケケケッ! ありがたきお言葉、感謝致します」

「うん、だって── 街の問題について教えてくれたのも、聖剣について教えてくれたのも、この二人だったから」

 初めの印象からは予測出来ないまさかの返答に、リオンは驚きを隠せなかった。


「……マジで?」

「ケケケッ、さすがに街中にある魔石装置の回収には骨が折れましたよ、ワタクシ単体と致しましては、研究資源が増えて大満足ですが」

「はい、僭越ながら、私は魔道具に関する知識を得意としておりまして、勇者様が聖剣による覚醒が十分ではないと判断した所存です」


 (うわぁ…… 思ってた以上に有能だぞ、この二体)


「ケケッ、もうちょっと早く人狼が魔将に気付いてりゃ完璧だったなぁ、アキト様がいなかったらぐっすりだったぜ」

「ええい、やかましい、前に聖剣に関する文献を読んでいたからわかったんだ、その魔法を扱う魔物がいたことにも驚いたが…… 」

 あれやこれやと、二体が自分たちの世界で話し合っている中、アキトが捕捉を加える。

「ちなみに商人の真似を教えてくれたのも、この二人」

「ああ、うん、それは何か気付いた」

「ン、ン……といったところでございまして。勇者様、私たちは最後の確認をしに参りました」

 ようやく戻ってきた二体は、真剣な面持ちでリオンを見つめる。

「確認? 何をだ?」

「ケケッ、それはもちろん── 勇者様が魔王様と敵対しないという確認ですよ」


 空気が一変して重くなる。
 ──その通りだ、自分は勇者として召喚された存在、そのことに変わりないのだ。


「大丈夫だよ、二人とも。彼は誓ってくれたんだ、敵対することなく、仲良くしてくれるって」

 当人であるアキトが、宥めるよう言い聞かせる。

「お前……」

「それに関係ないでしょ、ほら」

 アキトは向きを変え。片手でそっと、リオンの首元を掴んだ。


「僕がその気になれば、いつだって倒せるんだよ」


 不意を突かれ、リオンは動けなかった。

 表情の見えない殺意に、魔物たちが恐怖する。

 (こいつ……!? 勇者に殺されたくないから誓わせたんじゃねえ、自分が勇者おれを殺さないために誓わせたんだ──!)


「わかってくれた?」

「「は、はいぃ…… 」」

「じゃあ、もういいよね」

「も、もちろんでございます、ですが私たちの主は貴方様以外あり得ません、影ながらお仕えさせていただきます」

「そっか、ありがと」

「ケ、ケケッ、またお困りごとがございましたらいつでもお呼びください。……んじゃ、帰るぞ、人狼」

「今度こそ止まってくれるよな!?」

「ケケケッ まっかせとけってのー!」

「やはり信用ならーん!!」

 騒がしく飛び去ってく二体を見送りながら、リオンは同じく手を振るアキトに目を向けた。


 (あいつにとって、俺は倒すか生かすかの二択でしかないんだな……)

「……なんか複雑」


「ん? 今、なんか言った?」

「なんでもねぇよ!!」





 やがて二人は次の町に辿り着く、だかそれが──






「……ウフフ、なんて可愛らしい人間なのかしら」


 そこが魔将が支配する町だと、彼らはまだ知るよしもなかった。



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