召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第2章 港と船と海の町

潮風に揺られて行く先

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 港町に辿り着いた二人は、石畳の坂を下りながら目の前に広がる景色を見下ろしていた。

「わぁ、海だー」

 相変わらず感情の起伏のないアキトを横目に、リオンは視線を前に向けたまま、次の行き先を告げる。

「……じゃあ、手っ取り早く、船に乗るぞ」

「どこにいくの?」

「さあな、出来るだけ遠くにだ」


 不意に、すれ違った町人たちの話し声が耳に入った。

「なあ、聞いたか? 勇者が死んだって」

「らしいな、"勇者が訪れた港町"みたいな感じでもっと盛り上がるかと思ったのに、期待外れだ」

 背後から笑い声が弾け、リオンは顔を曇らせる。

 (─チッ、人の気も知らねぇで……)

 そんな心を見透かしたように、隣からぽん、と頭を撫でられる。

「大丈夫、君は関係ないでしょ?」

 前を向いたまま、目線も合わせず。ほんの一瞬の出来事だったが、つい足が止まってしまった。


「……? どうしたの?」

「…………別に」
 
 リオンは俯き、自分の全てを見抜かれた気がして、いたたまれなくなった。




 出港の手続きを終え、時間を潰すために二人は港近くの道具屋へ立ち寄った。

 沢山の道具が揃う中、ふと、リオンは店の隅にあった商品に目を向ける。

「あ、魔石……」

 赤や青、形も大きさも様々な鉱石が籠に山積みになっている。
 値札には「魔石 100ゴールド」と雑に書かれていた。

「案外、普通に売ってるんだなぁ……」

 赤色の魔石を一つ手に取り、試しにひとつ買ってみようとしたが──。

「……無駄づかいは、できねぇよな」

 結局、籠に戻し、必要な道具だけを買って、店を後にした。



 しばらくして汽笛が鳴り響く。
 

「待ってよー、早いってー」

「遅っせえんだよ! 時間ギリギリだ、走れ!!」


 
「「乗りまーす!」」



 駆け込みで飛び乗った二人を乗せ、船は大きく揺れて港を離れていく。
 二人はデッキの手すりにもたれかかり、リオンは肩で息をしながら座った。

「ハァ、ハァ…… 間に合った」

「危なかったねー」

「誰かさんのせいでな……」

「ごめんね、ちょっと手間取っちゃって」

 表情は変わらないが、どことなく、シュン…… としたのが伝わった。

「あー…… もういいや、見てない俺も悪かった」

「次は気をつける」

「違ぇよ、まずは俺を呼べ、……お前だけの問題じゃねぇんだから」

 アキトは少しだけ驚いたように目を丸くし、それからほんのわずかに笑みを浮かべた。

「そうだね…… そうする」


 やがて船は完全に海へと出た。


 潮風を受けながら、アキトは船の先頭に立ち海を見渡している。

「これが潮風かー」

 その背中を遠目に見つめ、リオンはこれからについて考え込む。

 (……今までは流されるまま来たけど、これからどうする?)

 勇者という重荷を背負う必要は無くなったが、具体的なことはまだ何も決まっていなかった。


 ふと、アキトに視線を移す。

(あいつとは…… この先どうなるんだろう)

 気づけば声をかけていた。


「あれ、どうしたの? 」

「いや…… お前がそんなに海が好きだったとは、思わなかったから」

「別にそうでもないよ」

 アキトはきょとんとした顔で首を傾げ、また海に目を向ける。

「海に来たの、久しぶりなんだ。船に乗ったのは初めて。ただそれだけだよ」

 その声は風に溶けるように静かで、どこか穏やかだった。

 リオンは何も言わず、その後ろ姿を見つめる。


 (俺、こいつのこと、何も知らないんだな……)


 やがて、アキトがこちらを向く。

「あ、そうだ。せっかくだし、あれやる? 映画のやつ」

「馬鹿お前、それ沈むやつだろ」

 そう言い返した瞬間──

「大変だーーーっ!! 船が魔物に囲まれている! 誰か助けてくれぇぇぇぇ!!」

 甲板の後方から、慌てた船員の叫び声が響き渡った。


「やらなくても、沈みそうだね」

「ホントに勘弁してくれ……」

 リオンは頭を抱えながら、剣の柄に手をかけた。



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