召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第2章 港と船と海の町

心はひとつに

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 ドシュン、と海面が弾け飛ぶ音が聞こえ、ぬらりと姿を現したのは、異形のヒトデの魔物。
 粘着質な触腕を伸ばし、逃げ惑う船員に飛びかかろうとする。
  

「下がれ! 」


 リオンの叫びと共に、剣が閃く。鋭い斬撃が魔物を断ち、血が飛び散る。
 怯えきった船員に、事態を確認するよう問いかけた。
  

「何があったんだ──!?」

「ま、魔物が……突然、船の周りに集まりだして……! どんどん上に……!」

 船員の声は上ずり、目の焦点も合っていない。


「魔物……? いや、こっちの方には何も──」

「いるよ」

 船首に立つアキトが、まっすぐ海を指差している。
 そして──


 バシャァン!


 大波と共に現れたのは、海から跳ね上がる巨大な魚のような竜だった。
 濡れた鱗が陽光を受けて鈍く光り、その身体はこの船を遥かに凌ぐ大きさを誇る。

 竜が海へと再び身を沈めると同時に、船が揺れる。
 水しぶきが津波のように押し寄せ、アキトとリオンの全身を濡らした。


「おい、他の奴らは!?」

「乗客のほとんどは船内に避難しております。最後はあなた方だけで──」

 すると魚竜は尾びれを使って大波を起こし、船がこれでもかと大きく揺れる。

「こんな状況、初めてで……このままだと、船が……沈む、沈むううう」
  
 必死にデッキの手すりにしがみつきながら、錯乱した船員がその場にへたり込む。

「落ち着け、このままじゃ……!」

 リオンが声をかける前に、アキトは船員に手を向け魔法をかける。
 瞳がとろりと濁り、崩れるように眠りに落ちる船員を、リオンはとっさに支えに走る。

「お前…… 一体何やって──」

「だって、つらそうだったから」

 アキトは、前方の海へと視線を向け、静かに続けた。


「後ろの方は、任せていい? 」」

 そう言って、海風に長い髪をなびかせながら、アキトは再び船の先頭に立つ。


「──あれは、僕が片付ける」


「おい、何勝手に決めて……! 」

「適材適所ってことで」

「──ああもう! 時間もねぇし、それでいく!」

 リオンは憤りながらも、すぐに判断を切り替える。

「船の人たちは任せたよ」

「そういう事かよ……! 後で覚えてろ」

 何かを察したリオンは、眠らせた船員を担ぎ上げながらその場を離れる。
 甲板を駆け抜ける背中に、アキトは小さく手を振った。 


「さてと……待たせたね」

 海から巨大な影が跳ね上がる。
 魚のような姿をした巨大な竜──その顎が開かれ、水流のブレスが一直線に放たれた。


 ──ゴォォオオッ!!


 魚竜の迫力に臆することなく、アキトは冷静に手をかざし、禍々しい炎が水流のブレスが相殺し、空中で激しい音を立てて爆発した。


「……それじゃあ、始めよっか」



 * * *



 一方その頃、リオンは戦場の最中にいた。


 船内へと運び込んだ船員を乗客に託し、すぐに再び甲板へと駆け戻る。

 戻った今まさに別の船員に襲いかかろうとしていたヒトデの魔物が目に入った。


「──舐めんな! 」


 勇者の剣が閃き、魔物を切り裂く。

「加勢する! 」

 短く叫び、戦える冒険者たちと共に戦線へと加わる。
 剣を振るうたび、魔物が倒れ、船上の混乱が徐々に収束していく。 


 だが、リオンの心は既に別の場所にあった。


 (あいつ……! 魔法が特殊過ぎて、人前で戦えねぇのかよ!!)

 この場にいない人物に思いを馳せながら、次々と魔物を斬り伏せ、心の中で叫ぶ。

 (勝手なことばかりしやがって、後で絶対ぶん殴ってやる!! )
  

 * * *


 その頃、アキトは船首で戦い続けていた。


 魚竜の起こす大波やブレスを相殺しながら、冷静に動きを読み、正確に魔弾を撃ち込んでいく。
  
「ーん、思ったよりしぶといな……けど」
  
 魚竜の動きが一瞬止まる。
 その刹那を逃さず、魔王の炎が魚竜を捕らえた。


 まだほんの一部だけが燃えるその巨体が、再び海面を破り、牙を剥いて跳びかかる。

 そして同じ瞬間──
  

「これで終わりだ」
「これで終わりだよ」
 

 リオンの最後一撃が魔物を斬り伏せ。

 アキトの渾身の魔法が魚竜に直撃する。


 剣に付いた血を拭って鞘に戻し。

 覆い尽くす炎が、巨体を全て灰に変えていく。

 やがて灰は潮風に舞い、海の彼方へと消え去っていった。



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