召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第3章 火山と思い出の街

噴火の前、最後の夜

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 四日が経った日の夜。
 火山周辺に向かい、多くの魔物を倒したアキトとリオンは、今日も氷の魔将が営むバーに集まるのだった。


「「ただいまー」」

『おかえり、アキ君、リオりん、夕御飯出来てるよ』

「いつも悪いな、助かる」

『お礼を言いたいのはこっちだよ、無理言って長居させてるのはボクの方なんだから』

 二人は魔将──今はバーの店長から、この店を宿として無料で使わせてもらっていた。


「あ、この匂い…… 今日はカレーだ」

『大正解、アキ君、手伝ってくれる?』

「うん、わかった」

 それだけでなく、朝、昼、晩の三食まで用意してくれるので本当に頭が上がらない。

「こんばんは──ックシュン ……ああ、お二方、いらしてたのですね」

「──ヘックショォォン! ……ケケッ、店長、いつものヤツ頼む」

『フフッ、かしこまりました』

 くしゃみと共に、大きな袋を持った人狼とガーゴイルが店の席に座り。
 注文を受けた店長は、そそくさとお湯と茶葉を準備していた。


「あんたら…… しばらく見て無かったが、どこ行ってたんだ?」

「……必要な素材を採りに…といった所でしょうか」

「要するに好き勝手やっておりましたな、ケケケッ」

 煮え切らない返事をする二体の前に、お湯の入ったティーポットと急須、そして湯呑みが二つ置かれる。

『お待たせしました、ほうじ茶のホットです。後は自分で淹れてね』

「ケケッ、緑のヤツも良いが、やっぱこれだよな」

「ああ、この独特な香りが堪らない」

『二体とも、前の勇者とボクたちに感謝してね』

「「いつもありがとうございます! 」」

『うん、よろしい』

 今日のカレーやお茶など、この店に元いた世界のものがやたらと集まっているのは、全て、前の勇者の我が儘から生まれ、それを店長ともう一体の魔将が再現したものらしい。
 正直言って、感謝しかなかった。

「はいこれ、リオンの分だよ」

 裏に回っていたアキトが、カウンター越しから盛り付けたカレーを配る。

「ああ、ありがとう。……お前の分は? 」

「僕のはこれ」

 そう言って、通常の1.5倍ほど盛られたカレーを自分の席に置いた。


「……お前さ、結構食うよな」

「そうなの? 」

『ほら言ったでしょ、君はまず適量を覚えた方が良いって』

「ホントだね」

 すると隣の席から、チーン、と呼び鈴が鳴る。

「ケケッ、店員さーん。こちらにもそれ二つ、お願いできますかー」

『早速、注文が入ったよ。頑張って』

「うん、やってみる」

 ここ最近、今までずっと消極的だったアキトは、何かと新しいことに挑戦するようになった。

 今もこうして店員のように厨房に立ち、色々なことを学んでいる。

 (良いこと…… だよな、うん)

 けれどもリオンは、自分のことをもっと知りたいと言っていた真っ直ぐな瞳が、別のものを見ているその姿に、少しだけ寂しく思った。



 夕食が終わり、二人は魔将から、いよいよ明日に向けての作戦内容を聞いた。


『これまで待ってもらったのは、他でもなく、親友を確実に倒す為の作戦を立てたかったからだ。最後まで聞いて欲しい』
  

 魔将は棚の奥から、火山の地図を取り出し、二人の目の前に広げる。

『まずはここから中に入って、一番奥にあるここに向かって欲しい』

「へぇ……火山の中にこんな空間があるなんてな」

「それで、着いたらどうするの? 」

『親友を繋いでいる、四つの魔石装置を破壊して欲しい』

「本体を倒しちゃえば、終わりじゃないんだね」

『今のアイツは、火山と繋がっていて、いくら攻撃してもマグマから魔力を吸いとって修復してしまうから意味が無いんだ』

「ケケッ、ちなみにこの世界のマグマは、地下深くにある魔石も一緒に溶けて出来ておりますので、向こうの魔力が尽きることは無いと考えて下さい」

「なるほど…… とりあえず、その親友を火山から引き剥がせばいいんだな」

『その通り、アイツ自身が、火山とマグマを繋ぐ一本の管みたいになっているんだ。だから──リオりん、君にその役目を任せたい』

 そう言って、魔将はリオンに頭を下げる。

「俺で……良いのか? 」

『むしろ君が適任だ、だって君には魔力が無いからね』

 いきなり自分の欠点を言い当てられ、思わず顔をしかめてしまう。

「……やっぱそうゆうのって、わかるもんなんだな」

『魔法が使えないデメリットは確かにあるんだろうけど、君の最大のメリットは、魔力探知に全く引っ掛からないことだと思うんだ』

 魔将が指を鳴らすと、それぞれのテーブルの上に先ほどまで見えなかった小さな氷の塊が現れる。

『アキ君は気付いてたよね? 』

「うん、なにかあるなーって」

『ボクもそうだけど、どんなに優秀な魔法使いや魔道具職人がいても、それを完全に消すことは出来ないくらい、難しいことなんだよ』

 微笑みながら、もう一度指を鳴らすと、目の前の氷の塊が割れながら消え、カップに入ったいつか選んだ味のアイスが顔を出す。

 あると思っていなかったまさかの長所に、リオンは目を丸くした。


「自分じゃ気付かないことって、案外あるもんなんだな……」

『向こうは恐らく、魔力の高いものから攻撃してくるはず、だからボクとアキ君がそれを引き付ける。タイムリミットは10分だ、それ以上は暑さに耐えられない』

「んー、さすがにちょっと短いような……」

「……そう思いまして、あらかじめ用意しておきました」

 困っていた矢先、人狼は大きな袋から、何やら透明な石を取り出した。

「氷の魔力が籠った魔石です。これを装置と組み合わせれば、我々でも氷魔法を使うことが出来ます」

「これだけあれば最低でも20分は延ばせられるでしょう。いやー、雪山に通い詰めて、掘り起こした甲斐がありましたな、ケケケケケッ! 」

『……二体とも、ありがとう』

「ケケッ、その代わり、今日の飯代をタダにしてはくれ……」

『それはそれ、これはこれ』

 さらに人狼のげんこつがガーゴイルの頭上に落ちる。

「思ってもないこと言うな、バカタレが!! 」

「──ケッ、知ってた、知ってた」


 その後も、各自アイスを食べながら、自分たちの役割を確認した。


『……作戦は以上だ、皆、明日に向けて休んで欲しい』

「ケケッ、じゃあベッドで休ませてもらうとするか、……魔物だってフカフカのベッドで寛ぎたいのです」

「……というわけなので、お二方、お先に失礼します」

「あ……ああ、まだ何も言って無いのに、ありがとう」

 それぞれが明日に備えようとしていたその瞬間──

「待ってリオン、なにか来る! 」

 突然、地鳴りが聞こえ、地面が激しく揺れた。
 棚にあった瓶は落ち、食器が割れて床に散乱する。

「地震……!? まさか──! 」


『イフ───!!』


 あまりの揺れの強さに立ち上がることすら出来ない状況の中、魔将だけが行動し、一人で店から飛び出してしまった。


「リオン──! 」

「──わかってる!」

 リオンはすぐさま転送魔法を使い、魔将の向かったであろう行き先へと移動した。


「僕たちも急ごう」

「ケッ!? 一体どうやって──!? 」

 奥の壁から水流が店の中を一直線に通過し、ガーゴイルと人狼を巻き込みながら押し出していく。

「「ギャアアアアァァァァァァ──!?」」

 アキトもその勢いのまま、入り口の扉を蹴り飛ばし、外へと脱出した。


 (どうか無事でいて──!)


 まさに今、炎の魔将、討伐の作戦が始まろうとしていた。



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