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第3章 火山と思い出の街
選ばれた道を行く
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二人が案内されたのは、誰も近寄らないような路地裏にひっそりと佇む、小さなバーだった。
「へぇー……あんた、店二つも経営してるのかよ」
「ウン、たまにネ。オススメはコノ緑の茶葉ダヨ」
「緑…茶……! いや、まずは話を聞いてからだ」
リオンは誘惑に負けそうになりながらも、アキトと並んで腰を下ろした。
カウンター越しに魔将が静かに語り始める。
「ボクは親友を倒シ、火山ヲ噴火させル」
「それ…… 本気で言ってるのか?」
「モチロン、本気ダヨ」
拒否権は無いとでも言うように、まだ氷の手錠で繋がれたままのアキトを軽く引っ張る。
「ダカラ、君たちモ、協力してホシイ」
二人は短く視線を交わし、意見が一致した。
「んー、君を止めた方が早そうだけど……」
「そうだな、……34は残念だが、もう面倒ごとはこりごりだ」
アキトは鎖を掴み、リオンが剣を構える。
その事態に、魔将は途中で何かを諦めた。
「チョット待っテ…… ウン、ヤッパリ無理ダ。ワルフィ、アレ……チョウダイ」
「はい、かしこまりました」
そう言って人狼はピアスのような形をした魔石装置を差し出す。
魔将がそれを右耳につけた瞬間、装置から魔方陣が現れ、声が直接、脳内に響いた。
『あ、あー聞こえてる? うん、やっぱりこっちの方が楽だね』
「読心魔法、正常ですね」
『修理ありがとう、ワルフィ』
「……出来ればその名前で呼ぶのは遠慮していただきたいのですが……」
「ケケッ、相変わらず人前で話すのは苦手なんだな」
『……凍らせるよ、ガー君』
「ケッ、これが冗談じゃねぇから、タチ悪ぃ」
装置越しに響く声に、リオンの剣先がわずかに下がる。
「……そういえばこいつらグルだったな」
「ねぇ、手、冷たいから解いていい? 」
「いいんじゃね? 」
『ああ、ゴメン…… とりあえず最後まで聞いて欲しいな』
二人は攻撃の態勢を止め、魔将は話を続けた。
『……親友が止めていた火山が間もなく噴火する。だからボクは、最後にアイツを──この街から解放してやりたいんだ』
「街……? この街が関係あるのか?」
『そもそもこんな事になっているのは、火山の噴火から街の人々を守る為だったからね』
「いいの? せっかく守ってたのに、壊しちゃって」
『知ったことか! 300年も経った今、アイツが守りたいと言った人間達はもういない! 』
怒号と共に、魔将の指先の氷が軋み、意図せず掴んでいた鎖を粉々に砕く。
「あ、解けた」
「よし、おいとまするか」
「でもこの人、悪い人じゃなさそうだよ」
「だよなー……その心意気、 嫌いじゃねぇんだよな」
『……君たち、ホントに人間? 』
「「もちろん」」
『そっか、気が合うね』
二人は魔将とすっかり打ち解け、楽しげに街への被害想定を話し始める。
和やかな雰囲気の隣では、人狼が急須で淹れた緑茶を静かに注いでいた。
「……魔王と勇者と魔将の会話がこれでいいのだろうか」
「ケケッ、そもそも魔王と勇者と魔将の会話って何だよ──」
ズズ……
「──アッチィ!」
しばらく言葉を交わすうちに、二人と一体の答えは自然と同じものへと収束していく。
リオンは改めて魔将に問いかけた。
「……本当に、やるんだな」
『うん、ボクは火山を噴火させ、親友を解放する』
「それで、俺たちは何をすればいい?」
『一緒にアイツを倒して欲しい、ただし気をつけて、アイツの自我はとっくの昔に失ってしまって、今は向かって来るもの全てを攻撃するだけの装置になってるから』
「ふーん…… 自我が無いのに、解放したいんだ」
『……そうだよ、これはあくまでボクの自己満足、嫌なら断ってくれて構わない。それでも君たちを攻撃しないと約束するよ』
「ねぇリオン、君はどうしたい?」
アキトが静かに問いかける。
けれど、心は既に決まっていた。
「わかった、手伝ってやるよ。元々、当てなんて無い旅だしな」
『二人とも、ありがとう』
「二人トモ、アリガトウ」
同じ声が重なり、氷の魔将は微かに笑い、リオンとアキトはその笑みに小さく頷いた。
彼らは、五日後に火山へ向かうと約束し、店を後にする。
「五日後かー、なーんか流れで決まっちまったなー」
「そうだね、火山に必要なものってなんだろう?」
「さあな、ちょっと聞いてくる、そしたらレベリングだ」
「りょーかーい」
伸びをしていたリオンが再び店に戻り、アキトはその場で一人佇む。
(これからどうなって行くんだろう…… 楽しみだな)
炎の魔将、討伐に向けて、彼らはそれぞれの道を歩き出すのだった。
「へぇー……あんた、店二つも経営してるのかよ」
「ウン、たまにネ。オススメはコノ緑の茶葉ダヨ」
「緑…茶……! いや、まずは話を聞いてからだ」
リオンは誘惑に負けそうになりながらも、アキトと並んで腰を下ろした。
カウンター越しに魔将が静かに語り始める。
「ボクは親友を倒シ、火山ヲ噴火させル」
「それ…… 本気で言ってるのか?」
「モチロン、本気ダヨ」
拒否権は無いとでも言うように、まだ氷の手錠で繋がれたままのアキトを軽く引っ張る。
「ダカラ、君たちモ、協力してホシイ」
二人は短く視線を交わし、意見が一致した。
「んー、君を止めた方が早そうだけど……」
「そうだな、……34は残念だが、もう面倒ごとはこりごりだ」
アキトは鎖を掴み、リオンが剣を構える。
その事態に、魔将は途中で何かを諦めた。
「チョット待っテ…… ウン、ヤッパリ無理ダ。ワルフィ、アレ……チョウダイ」
「はい、かしこまりました」
そう言って人狼はピアスのような形をした魔石装置を差し出す。
魔将がそれを右耳につけた瞬間、装置から魔方陣が現れ、声が直接、脳内に響いた。
『あ、あー聞こえてる? うん、やっぱりこっちの方が楽だね』
「読心魔法、正常ですね」
『修理ありがとう、ワルフィ』
「……出来ればその名前で呼ぶのは遠慮していただきたいのですが……」
「ケケッ、相変わらず人前で話すのは苦手なんだな」
『……凍らせるよ、ガー君』
「ケッ、これが冗談じゃねぇから、タチ悪ぃ」
装置越しに響く声に、リオンの剣先がわずかに下がる。
「……そういえばこいつらグルだったな」
「ねぇ、手、冷たいから解いていい? 」
「いいんじゃね? 」
『ああ、ゴメン…… とりあえず最後まで聞いて欲しいな』
二人は攻撃の態勢を止め、魔将は話を続けた。
『……親友が止めていた火山が間もなく噴火する。だからボクは、最後にアイツを──この街から解放してやりたいんだ』
「街……? この街が関係あるのか?」
『そもそもこんな事になっているのは、火山の噴火から街の人々を守る為だったからね』
「いいの? せっかく守ってたのに、壊しちゃって」
『知ったことか! 300年も経った今、アイツが守りたいと言った人間達はもういない! 』
怒号と共に、魔将の指先の氷が軋み、意図せず掴んでいた鎖を粉々に砕く。
「あ、解けた」
「よし、おいとまするか」
「でもこの人、悪い人じゃなさそうだよ」
「だよなー……その心意気、 嫌いじゃねぇんだよな」
『……君たち、ホントに人間? 』
「「もちろん」」
『そっか、気が合うね』
二人は魔将とすっかり打ち解け、楽しげに街への被害想定を話し始める。
和やかな雰囲気の隣では、人狼が急須で淹れた緑茶を静かに注いでいた。
「……魔王と勇者と魔将の会話がこれでいいのだろうか」
「ケケッ、そもそも魔王と勇者と魔将の会話って何だよ──」
ズズ……
「──アッチィ!」
しばらく言葉を交わすうちに、二人と一体の答えは自然と同じものへと収束していく。
リオンは改めて魔将に問いかけた。
「……本当に、やるんだな」
『うん、ボクは火山を噴火させ、親友を解放する』
「それで、俺たちは何をすればいい?」
『一緒にアイツを倒して欲しい、ただし気をつけて、アイツの自我はとっくの昔に失ってしまって、今は向かって来るもの全てを攻撃するだけの装置になってるから』
「ふーん…… 自我が無いのに、解放したいんだ」
『……そうだよ、これはあくまでボクの自己満足、嫌なら断ってくれて構わない。それでも君たちを攻撃しないと約束するよ』
「ねぇリオン、君はどうしたい?」
アキトが静かに問いかける。
けれど、心は既に決まっていた。
「わかった、手伝ってやるよ。元々、当てなんて無い旅だしな」
『二人とも、ありがとう』
「二人トモ、アリガトウ」
同じ声が重なり、氷の魔将は微かに笑い、リオンとアキトはその笑みに小さく頷いた。
彼らは、五日後に火山へ向かうと約束し、店を後にする。
「五日後かー、なーんか流れで決まっちまったなー」
「そうだね、火山に必要なものってなんだろう?」
「さあな、ちょっと聞いてくる、そしたらレベリングだ」
「りょーかーい」
伸びをしていたリオンが再び店に戻り、アキトはその場で一人佇む。
(これからどうなって行くんだろう…… 楽しみだな)
炎の魔将、討伐に向けて、彼らはそれぞれの道を歩き出すのだった。
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