召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第3章 火山と思い出の街

聞こえる声、届かない声

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 魔将が最後の魔石装置を破壊した直後、再び地面に揺れが発生し、洞窟内が崩壊し始める。
 星空の見える崩れた穴の側で、ガーゴイルと人狼は脱出の準備をしていた。


「ケケッ、んじゃ、帰るとするか」

「……ああ、そうだな」

「高さヨシ、風向きヨシ、っと。ケケッ、心配すんなって、このお手製の飛行装置で滑空するだけだろ? お前もアキト様も初めてじゃねぇんだから」

「……わかってる」 

「あ、これ、最初の街に行ったときに乗ったやつだ」
  
「ケケッ、覚えていて下さり、ありがとうございます! 」

 リオンが初めて目にするそれは、紙ひこうきの下に人が両手で掴まれるような骨組みがついていて、元の世界で言うところのハンググライダーに似た形をしていた。


「……あんたら、至れり尽くせり過ぎて、逆に怖ぇよ」

 洞窟の至るところからマグマが噴き出し、早く脱出しないといけないが、アキトとリオンは魔将が中々戻って来ないことに気付く。

「あれ? まだこないね」

「ったく、何やってんだろな…… ちょっと見てくる」

 リオンは転送魔法を使い、未だ炎の魔物にしがみついたまま、氷の中に閉じ籠っている魔将の前に移動する。

「おい、 時間がねぇぞ。 あんたも早く──」

『ごめん、ボクは行けない』

 先ほど全て壊したはずの魔石装置を手に、魔将はそう告げる。

『やることがあるんだ。ボクはこの火山と繋がって、噴火を食い止める』

「……は?」

 最悪のイメージが頭をよぎる。

「なぁ、それ…… あんたは、どうなる……?」

 その質問に答えることなく、魔将は必死に破壊した魔石装置と同じ装置を自分の腕につけ、岩に打ち付けた。


「はぁぁぁぁぁ────!? ふざけんな!! 今そいつと一緒くたばって、一体、何になる!!」

『ボクは氷の魔物だから、火山の魔力を使えば、噴き出した溶岩そのものを氷に変えられる。この噴火自体を、消滅させられるんだ』

「ふざけんじゃねぇぞ、てめぇ!!」

 突然、リオンの怒りの籠った叫び声が聞こえ、心配になったアキトもそこへ向かう。
 
 既に地表に出たマグマが冷え固まっていく中、リオンは魔将の傍まで寄り、覆われた氷をひたすら叩く。

「そいつと死ぬことがっ── そんなに大事かよ!」

『半分正解で、半分は違うかな』

「じゃあ、なんで……!」

 魔将はリオンに向かって、優しく微笑みかけた。


『君たちと過ごしたあの街を、思い出を、消したくないんだ』


 それを聞いたリオンは、氷を叩く手を止める。

『ホントは三日ぐらいのつもりでいたんだけど…… 君たちと話すのが楽しくて、ちょっと延ばしちゃったんだ。ごめんね』

「それが……何だって言うんだよ……」

 傷だらけになった拳を氷に乗せて引きずりながら、リオンはその場で崩れ落ちる。

「リオン───!!  ……ええっと」

 後から来たアキトが少し戸惑いながらも、リオンの肩をそっと優しく抱きしめた。


『ありがとう、二人とも、ボクの友達になってくれて』


 無駄だとわかっていても、二人はそれを否定した。


「……なった覚えねぇよ」

「そうだね…… "と"の字も言った覚えもない」

『フフッ、最後まで君たちらしいや──』


 長い間、火口を塞いでいた天井がついに崩れ始める。

 これ以上は危険と判断した二人は、ガーゴイルと人狼が待つ壁穴まで戻った。


「ではアキト様、私に付いてきて下さい」

「うん、わかった」

 人狼とアキトは飛行装置に乗り、星空へと去っていく。
 そのあと、リオンはその場に残っていたガーゴイルに話しかける。

「なぁ…… あんたら二人は知っていたんだよな?」

「ケケッ…… まあ、そうですね」

「……止めたか?」

「ケケケッ、そりゃもちろん」

「……そうか」

 ガーゴイルは翼を広げて、空に飛び立ち。リオンは転送魔法を使い、火山から脱出した。



 二体の魔将が覆われた氷の中、氷の魔将は一人呟く。

「全く…… 君もホントにバカだよね。街の人間の為を思うなら、君が犠牲になる必要なんて無かったのに」

 魔将は自分の右耳に着けていた魔石装置を、親友の左耳に着ける。

「これ返すよ、君がくれた物だ。もう、必要無いからね」

 ──すると装置から魔方陣が現れ、声が聞こえる。

『チガウ……』

「え……?」

「……ハ…… タダ、君に…… 生きて…欲しかった」

 思ってもなかった出来事に、魔将は少しだけ涙を浮かべる。

「……もっと早く言ってよ、バカだなぁ、ホントに……」

『なぁ、グラ……コノ世界ハ……楽しカッタ?』

 魔将グラキエースは今まで生きてきた中で、いちばん無邪気に笑ってみせた。 

「うん、とっても──! あと三日は一緒にいたかったな!!」

 

 地面が揺れて、火山のてっぺんから、勢いよく溶岩が噴き上がる。
 大きな火山弾が空に弾け、街に降りかかろうとした時───

 それらが全て氷へと変化していく。

 噴き上がった溶岩が火口から上へ徐々に凍りつき、やがてヒビ割れて粉々に砕け散る。

 街の空には星と共に、美しい氷の粒が広がっていた。


 転送魔法を使って山から降りたリオンは、麓からその光景を眺めていた。


「リオーン!」

 アキトが片手で手を振りながら、滑空したままの飛行装置から飛び降りて、着地した。


「……こんな時に無茶するなよ」

「だって心配だったから……」

 リオンは不思議そうに苦笑する。

「何でだよ、乗るの、初めてじゃなかったんだろ? 」

「え……」

 しばらくして、ガーゴイルと人狼が走りながらこちらにたどり着き、一礼した。

「ケケッ、アキト様、飛行装置は無事に回収したのでご安心下さい」

「あ、ごめん」

「いえ、私の説明不足でございます。ですが、今後同じ事をする際は、一言いただけるとありがたいです」

「うん、ホントにごめんね」

「……ったく、何やってんだか」

 リオンは呆れながら、ガーゴイルと人狼に話しかける。

「なぁ、ここから一番近い町はどこだ?」

「ケッ? もう出発なさるのですか?」

「勇者様、今はあの街に戻って休むべきかと……」

 そんなことはわかってる……でも

「リオン、ホントに大丈夫?」

 二体と同じく、アキトも心配そうに問いかける。

んだから、今は……」

 突然、リオンの中の何かが切れた、アキトの胸ぐらを掴み、声を荒げる。

「何で……! 何でそんな言い方するんだよ!! あんな街、あんな街さえ無ければあいつは……!!」

「ちがう、それはちがうよ。リオン」

「そんなことは、わかってる!!!」

 わかってる、完全に八つ当たりだ。それでも…… それでも……!

 (お前にだけは…… そんなこと言って欲しくなかった……)

「リオン、ダメだよ。それ以上は……」

 胸ぐらを掴む手の力が強まり、今にも喧嘩が始まりかけた時、アキトの魔法が発動した。


 ──その手をどけて、動かないで──


「────ッ!!」

 力強く掴んでいた手がゆっくりと離れ、リオンはその場に立ち尽くす。
 アキトは動けないリオンに向かって語り始めた。


「この魔法、使う人のレベルの半分以下じゃないとかからないって知ってた?」

 恐ろしい威圧感の放ち、話し続ける。

「僕たちの立場、忘れたわけじゃないよね」

 アキトは距離を詰めながら、おとなしくなったリオンに向かって忠告した。


「君が僕に勝てるって、本気で思ってる?」


 ───────!?


 しかし、リオンが感じたのは恐怖ではなく、ただひたすらに悲しかった。


 じゃあ、そんなこと言うなよ…… だったら何で────


 (そんな悲しい顔するんだよ……)









 ねぇリオン…… よくわからないよ。僕には君が怒ってる理由はわからない、わからないけど……


 (君が悲しんでいるのは、イヤなんだ……)



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