召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第4章 にぎやかなイカれた町

どうしようもなく

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「ケケッ、この道の北の方角にある雪山の麓に向かっていただければ、賑やかな小さな町がございます。そこが一番近いかと」

「我々はあの街に戻ります。お二方、……どうかお気をつけて」



 ガーゴイルと人狼に別れを告げた後。
 アキトとリオンはお互いの間隔を少し空けながら、そこに向かっていた。


「………………」
「………………」


 (気まずい……) 

 リオンは先ほどの出来事を思い出す。
 どうしようもない怒りをぶつけてしまった申し訳なさと、己の無力さを感じていた。


「なぁ、……お前は、あの街に残ってもよかったんだぞ」

「ヤダ、君が行くなら僕も行く」

「……あっそ」

 目を合わせることが出来ず、顔を背けてしまう。
 昔から、人の本心を探るのは得意だったが、こいつが今何を考えているのかは分からず終いだった。


 (流石に寒くなってきたな……)

 雪山の麓に向かうにつれて気温が下がり、舞い降りてくる雪が、道行く木々に積もり始める。

「リオン」

 急に向こうから話しかけられ、体が強張ってしまう。

「これ、多分あったかくなるやつ。なんか入ってた」

 するとアキトが、手のひら程のサイズのカイロのようなものを差し出した。


「……そう言えばあいつら、雪山に行ったって言ってたな」

「うん、だからリオンが使ってよ」

「一つしか無いのか?」

「あ、たしかに、ちょっと探してみる」

 アキトは虚空の中に手を入れて、同じものを探し始める。

 あんな出来事があったにも関わらず、全く気にする素振りを見せない彼の振るまいに、少し腹が立った。


「ーん、やっぱりないや。それ一個だけだね」

「……お前が使えよ、俺はいい」

「でも、寒いんじゃないの?」

「……」

 何でもお見通しだと言わんばかりの態度に、さらに腹が立つ。

「お前、いい加減に……!」

「あ、そうだ、じゃあ…… こうしよう」

 アキトはリオンの片手を握り、指を一つずつ絡ませていく。

「この間に入れたら、どっちもあったかくなれるよ」

 そう言って繋いだ手の間にカイロを挟んだ。


 (何なんだよ!? こんな── 俺ばっか…こんなに……)

 怒りよりも先に、気を使わせているという申し訳なさと恥ずかしさで、顔に熱が篭り、目を反らしてしまう。

「リオン、あったかい?」

「あ、ああ……」

 自分より少し大きな手のぬくもりとカイロの熱が、優しさと共に伝わってくる。
 それが痛いと感じるほどに───

「そっか、よかった」

 彼が隣で、優しく微笑みかける。

「───────!?」

 その笑顔が眩しくて、けれど、彼の腹の底がどんどん見えなくなっていくのが、どうしようもなく怖かった。



 二人きりの道を進み続けてたどり着いたのは。
 雪山の静けさとは真逆に、大きなカジノらしき建物が昼夜の区別を忘れたように光る。
 カラフルなネオンで装飾された何とも言えない派手な町だった。


 (思ってた賑やかさと違うなぁ……)

 そんなことを思うリオンの隣で、アキトが口を開く。

「なんか思ってたのと違うねー、とりあえず、宿を探さないと」

 そう言ってさりげなくカイロをこちらに渡してから、するりと手が離れ、町の中へと走っていく。

 (あ……)

 だが、リオンが何かを思う前に、アキトは突然足を止めた。 


「あれ? ここにあるじゃん。リオーン、こっちだよー」

 降る雪の粒が手に染みるのを感じる。カイロを持っていても感じない温かさに戸惑いながらも、呼ばれた声の元に向かって歩き出そうとした。

「ああ、今行く……」「あっ、ちょっと待って」

 何故か、アキトは急いでこちらに戻ってくる。
 そして───
 

「一緒に行こ」


 ───もう一度、手を繋いでくれた。

 サッと掴まれた手に引かれながら、彼と一緒に走っていく。
 繋がれた手からぬくもりを感じて、安心してしまう自分がいる。

 (俺、なんにも出来てない。お前だって……)

 悲しんでいるかもしれない、もっと苦しんでいるかもしれない。
 それでも嫌な顔一つしない、彼の優しさにつけこんでしまっている自分が情けなくて、いたたまれなかった。



 ***


 翌朝

 無事に宿に泊まることができた二人は、客で賑わう一階のロビーの中、朝食のサンドウィッチを食べながら、今後の予定を決めることにした。


「リオン、ホントに大丈夫? まだ休んでてもいいのに」

 自分の分をあっさり平らげてしまったアキトは、まだ半分以上残しているリオンの様子を心配そうに伺っていた。
 
「だ、大丈夫だ。それに、お前の方こそ……」

「僕? なんで?」

「"なんで"って…… そりゃお前、昨日色々あっただろ」

「うん」

「それにあんなことまで……」

「あんなこと……ってなに?」

 (言わせんな! 恥ずかしいだろ──!!)

 昨日の自分の醜態を思い出し、やけになってサンドウィッチを口の中に押し込んでいく。


「朝から元気だな兄ちゃんたち、この町は初めてか?」

 隣で心配するアキトをよそに、顔の右側に大きな傷跡があり、体格の良さが隠しきれていない厳ついディーラー姿の男が、何やら奇妙な面持ちで話しかけて来た。


「……」(まだ食ってる途中なんだが……)

「そうだけど、どうして?」
 
「何、ちょっとしたゲームだ。何しろここはカジノの町だからな」

 そう言って、リオンの前に座った男は、慣れた手つきで二人と自分にカードを配っていく。

「…………」

「"ブラックジャック"って遊びだ、やり方は知ってるか?」

 急な押しかけに断ることも出来ず、リオンは配られた二枚のカードと、男の前にある数字の書かれたカードを目にする。

「これって…… 21が一番強いやつだっけ?」

「おお! その通り。 兄ちゃんわかってんねぇ!!」

「リオン、どうする?」

 ようやく口の中のものを飲み込み、リオンは肘をつきながら。
 一見、親切そうなその人物に向かって、呆れながら問いかける。

「ちなみに…… あんたの元にあるカードの合計は、21で間違いないよな?」

「ククク…… ガッハハハハハ! しかもイカサマまで見抜くとは大したもんだ!!」

 少し驚いた後に、男は僅かな違和感を見過ごさなかったリオンを称賛し、豪快に笑いながら手を叩いて喜んだ。


「あんた…… 何がしたかったんだ?」

 リオンの問いかけに、男はカードを片付けながら丁寧に答える。

「警告だ。本物のギャンブルがやりたいなら、他を当たった方がいい。今じゃこの町は、こんなイカサマ野郎ばっかりだからな」

「へぇ、じゃあなんで、おじさんはこの町にいるの?」

 その質問を待っていたと言わんばかりに、男は突然立ち上がったかと思えば、肩で笑い始めた。


「フッフッフッ…… それはなぁ、 町をこんなんにしたヤツをぶっ飛ばす為だ!」

 突然、宿の中が騒がしくなる。
 その場にいた客たちが扉を塞ぎ、さらに二人を取り囲む。

「運が良かったな、お前さんたち!」

 そして二階から、"悪徳カジノ反対!"と書かれた、無駄に大きな垂れ幕が下ろされた。


「ここは本物を求めるイカれたヤツらが集まる、反逆同盟レジスタンス本拠地だ!!」


「…………」
「…………」


「……やっぱり、この垂れ幕は要らねぇかな?」


「そうだね」
「そうだな」


「だよなー……」


 どうしていつも自分たちは厄介ごとに巻き込まれるのだろうと、リオンは己の境遇に頭を抱えるのだった。



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