召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第4章 にぎやかなイカれた町

思いを積み重ねて

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 薄暗い部屋の中、白髪の少年が目を覚ます。

「う、ん……?」

 少年は身体を起こして辺りを見渡すと、檻の中にはもう一人、腰に剣を携えた黒髪の少年の背中があった。

「ねぇ、どうしたの?」

 少年が不思議そうに声をかけると、もう一人の少年は肩を上げて驚く。檻の内側から鍵を使って開けようとしているが、なかなか上手くいかないようだった。

「……何でもねぇ」

 彼は、目を合わせようとせず、背を向けたまま話す。

「そうなの? でも大変そうだね」

 起き上がった少年は、檻の扉の前にもう一人の少年の隣に寄って右手を伸ばし。彼の手を握るようにしながら鍵を受け取った。

「ちょっと貸してみて」

「え、あ……」

 しかし、やってみても刺さりはするが回すことは出来ず、鍵の形状そのものが違うと判断した。

「んー、鍵があってないみたい。……あれ?」

 その時、隣にいる彼がうつむいたまま拳を握りしめ、悲しげな様子であることに気づく。
 そのことがどうしても見過ごせなかった少年は、うつむく彼にたちまち声をかけた。

「……泣いてるの?」

「泣いて、ねぇ──」

 白髪の少年が、鍵から手を離して彼を見る。

「ウソつかないで」

 そして、うつむいた少年の濡れた頬に両手を添えると、優しく顔を振り向かせ、目を合わせながら言った。


「泣かないでよ─── 


 白髪の少年は…… アキトはリオンの目を見て確かにそう言った。

「─────!? お前……記憶は──」

「もちろん、?」

 アキトは彼の頬を伝う涙を拭うとしたが、リオンは握りしめた拳を開いてその手をどかし、自力で涙を拭った。

「当たり前だ、──ったく……紛らわしいんだよ……!」

「ごめん、疲れて寝ちゃってたみたい」

「あははっ、何だよそれ──ガキみてぇ」

 涙をこぼしながらも笑うリオンを見て、アキトは安心して微笑み返す。


 すると何処からか、ザザーッというような音が聞こえ、段々と嫌な聞き覚えのある声が響いてきた。

『あー、やっと繋がった…… おいテメェら! ウチに勝ったからってここから出られると思うなよ!!』

 爆発したはずの機械仕掛けの女が、魔石装置を通して罵声を飛ばしてくる。早速、戦利品に不満のあるリオンは、何処にいるかもわからない人物に聞こえるよう、声を張り上げて言った。

「おい! 嘘つき!! この鍵使いもんになんねぇんだが!!」

『はぁ!? 嘘ついてねーよ、ちゃんと返しただろ!! だいだい、その檻の鍵とは言ってねーよ。バーカ!!』

 やたら子供じみたやり取りの中、アキトは静かに鉄格子を撫でながら、リオンに問いかけた。

「ねぇ、さっき触って思ったんだけど…… ちょっとやってみてもいいかな?」

 下がってて── と言って、アキトはリオンを鉄格子から遠ざけた後に……

 ───バアァァン!!!

 と、思いっきり鉄格子を蹴りつけて、鉄の柱を人が通れるよう曲げて見せた。

「先入観ってこわいね」

「俺はお前の脚力が怖い」

 その様子を見て驚いた女の唸り声が、部屋中に響く。

『ぐっ……ぎぎ……! ふざけた真似しやがって……!!』

 二人は檻から脱出し、リオンはある証拠の資料を天井に突きつけた。

「これは、魔将と偽われていた魔石装置の資料だ。あんたがあの装置を作ったってことでいいんだな?」

『は? だから何だってんだ?』

「だったらもう用はねぇ」

 そう、始めから二人の目的は、偽りの魔将を作った犯人をぶっ飛ばすこと。

「"ぶっ飛ばす"ってよりかは"吹っ飛んだ"だが、まあ似たようなもんだろ」

『なーに言ってやがる! テメェらここからどうやって抜け出す……おい、何持ってやがる!?』

 女が言葉を言い終える前に、アキトは自分の首に着けられていた魔石装置を、リオンは腰に携えていた剣を手に持つ。

「リオン、ホントにいいの?」

「……ああ、他に方法もねぇし」

『バカだろ! そんなこと出来るわけ──!!』

 二人は部屋の扉に目を向け、手に持った道具を投げるために構える。

「だったら出来るまで──」

「やるしかねぇだろ──!」


「「せーのっ!」」


 お互いが投げた道具が扉に向かっていく。重なり合った瞬間、リオンの剣は魔石装置を突き刺して破壊し、扉の前で爆発した。


『許さねー……! 絶対に、絶対に許さねーーー!!!!』

 二人は煙の中に向かって走り、粉々になった扉から部屋を後にする。

「寄り道すんなよ」

「うん、わかった」

 リオンはすぐさま転送魔法を使って外に出る。
 向かった先は反逆同盟レジスタンスの連中のいる宿の側。

「こっちの用は済んだ、いつでも行ってくれ!」

「オーライ! かっ飛ばすぜー!!」

 待っていたと言わんばかりに、機械いじりが趣味の青年がエンジンを吹かす。

 巨大な除雪車である魔石装置の上に乗ったディーラー男をはじめとした連中が、"悪徳カジノ反対"と書かれた垂れ幕をなびかせながら町を猛スピードで駆け抜けていく。


「「「カチコミだぁぁーーーー!!!!!!」」」


 その勢いのまま、除雪車は猛スピードをものともせずカジノに激突する。

 除雪車と車から降りた反逆同盟レジスタンスはもの凄い音を立てながら、張り巡らされた魔石装置ごと建物全てを破壊していった。




 建物が壊されていくに連れ、機械仕掛けの女の意識も遠退いていく。

 (許さねー……! 絶対に許してやるもんか……!! アイツらも、このザコどもも、勇者のヤローも───!!!)

 遠い昔の記憶がよぎる。女にだらしないことで有名だった、勇者と出会った日のこと。

 (それでも……それでも 勇者テメェだけだったんだ。 恐ろしいと言われ続けたこの目を、"美しい"と褒めてくれたのは……!)

 それは幼い少女が憧れに出会った、尊敬の記憶。


 忘れたくても、ずっと忘れられねーんだよ! 絶対に───

『絶対に許さねぇーー!! あのぁぁぁーーーー!!!!!』


 除雪車が建物を完全に突き破り、カジノだったそれは跡形もなく崩れていった。




 リオンは遠くから一人、崩れゆくカジノを見届けながら、あの時別れたアキトの帰りを待っていた。

 (何やってんだろ……あいつ)

 まさかとは思うが、最悪のイメージがよぎり、不安にかられそうになる。しかしそれ以上に、彼を信じたい気持ちの方が強かった。

「リオーーン!」

 信じていた人物は、名前を呼びながら手前に見える屋根を伝ってから飛び降り、目の前で着地した。

「寄り道すんなって、言っただろうが……」

「ごめん、たまたま見つけちゃって」

 そう言って見せたのは、自分が使っていた剣の柄部分。

「他にもあるかな、って思って探してたら、遅くなっちゃったんだ」

 ごめんね、と彼は申し訳無さそうに謝る。
 壊れた剣を受け取ったリオンは、どこか勘違いしている彼に、ずっと言えなかった言葉を伝えようとする。

「お前が……」

「リオン?」

 どうにも恥ずかしくて言葉に詰まる。でも、二度と彼に伝えられないと覚悟したあの時、やはり言っておきたいと思った。


「お前がくれた剣だったから、大事にしたかったんだよ……!」


 持ってきてくれた剣の柄を握りながら、絞り出したように告げる。

 彼はキョトンとしたまま沈黙し、やがて微笑みながらただ──

「ありがと」

 とだけ口にした。



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