1 / 40
序章
魔王召喚の正否
しおりを挟む
ギャア──ギャアアアッ──
おぞましい魔物たちが巣くう荒れた城の中、その奥の奥にある薄暗い地下室に二つの淡い影が現れる。
巨大な魔方陣は赤く光り続け、そして眩い輝きが一瞬だけ広がった。
「成功、だな……ケケッ」
「ああ……やっと召喚できた」
悪魔の様な大きな翼と、人の様な狼の背中、魔方陣の外側に立つ二体の魔物が、感慨深げに頷き合う。
その中心に一人の少年が立っていた。
「あれ…ここどこ? さっきまで教室にいたはずなんだけど」
幼い口調にしては背が高く、肩まである白髪の癖毛、赤みを帯びた瞳は、目の前に現れた異形を捉えてもなお不思議なほど落ち着いていた。
「なんか画面出てきた…… これあれかー、異世界がどうのみたいな…」
その様子はやや不気味ではあるが、彼らの目には恐れはなく。むしろ、尊敬の色があった。
「ケケケッ、ようこそ魔王様、来て下さるのを心待ちにしておりました」
「魔王? 僕が……?」
「はい、貴方様にはこの世界の魔王として、同じくこの世界に召喚された勇者を討伐していただきたいのです」
目の前で跪き頭を垂れる魔物たち、少年はそんな彼らを見下ろし、静かに微笑んだ。
「いいよ」
「「へっ?」」
魔物たちは一瞬、言葉を失ったが、すぐに歓喜する。
「ああ…魔王様、なんと聡明なご判断… 恐れいります」
「ありがと、僕はアキト、名前で呼んでね」
「かしこまりました、アキト様。この人狼、隣のガーゴイル共々、命を掛けてお仕えします…!」
「ケケッ、やはり貴方様こそ"真の魔王"でございますな。 ケケケケケッ!!」
すると突然、扉が爆音と共に吹き飛び、
「待て! その召喚は許されていない! 」
激昂に燃える声が部屋に響いた。
「ゲゲッ!? ゴライアス魔将、何故此処に!?」
「ごらい…なに?」
「マズイぞ……! 前魔王直属の幹部、七魔将の一体だ……! 」
全身を鎧で覆い、赤いマントを靡かせた巨体。背から覗く悪魔の尾が、怒りに打ち震えていた。
「やっと見つけたぞ、反逆者め!!」
突如現れた魔将の襲撃に、魔物たちは思わず後ずさる。
「あと百年だ! あと百年で魔王様は完全に復活なさる、それが何故わからない!! 」
その圧に、場は一瞬張り詰めたが、すぐさま一匹の魔物が前に出た。
「ケッ、百年も待ってられるか! 復活したところで、また勇者に倒されるのがオチなんだよ!!」
その言葉に魔将の怒りが爆発する。ガーゴイルは一瞬だけ振り向き、人狼が頷く。
「貴様ァ! 魔王様を侮辱するかァアアア!!!」
魔将は咆哮し、虚空から槍を取り出しこちらに襲いかかって来た。
「当たると思ったか? ケケッ、オレの翼は飾りじゃねぇんだよ、っと」
挑発しながら飛翔し、相手の攻撃を避け続けるガーゴイル、その隙に人狼はアキトを抱えて走り出す。
「アキト様、アイツが気を引いてる今のうちに!」
──順調に見えたのも束の間
「覚悟しろ、小蝿がァ!」
魔将の槍が放たれ、ガーゴイルの翼を貫いた。
「ぐッ……!?」
壁に叩きつけられ、完全に身動きが取れなくなる。
「……見えていないとでも思ったか?」
人狼による背後からの奇襲、だがそれを見抜き、振り向きざまに一撃を喰らわせた。
「ク、ソッ… ここまで、なのか…… 」
あまりにも重い衝撃により立ち上がれず、血を吐きながら呻く。
魔将は虚空からもう一つの槍を構え、人狼に切っ先を向ける。
「まずは貴様からだ… 反逆者」
ガーゴイルは残った力で必死に抗おうとするが、助けたくとも、もはや打つ手は残されていなかった。
「ケ……やめろ、やめてくれ…… 」
トドメを刺そうとした、まさにその瞬間。
「ねえ、『やめろ』って言われてるじゃん」
突然目の前に現れ、槍の切っ先を軽く蹴り飛ばしたのは、魔王である少年、アキトだった。
「ねぇ、君は僕をどうしたいの?」
「ええい小癪な──! 反逆者諸共、貴様も消し去ってくれる!! 」
「そっか、ざんねん」
ゆっくり右手を上げると、紫立つ禍々しい色の巨大な炎が生まれ、魔将に向かって放たれる。
「その程度、当たると思ったか!」
魔将はその大ぶりな魔法を軽々とかわす、しかし──
「うん、思ってないよ」
かわした直後、まるで吸い込まれるように、天井からもう一つの炎の塊が現れ、魔将に直撃した。
「バカな……!? ぐ、ああああああああああ――!」
断末魔すらかき消され、そこにあったのは、ひとかたまりの灰だけだった。
((い、一撃だと……!? ))
あれだけ猛威を振るった魔将の最後の姿に、二体は驚愕した。
少年は膝をつき、その灰をすくい上げる。
「……さっきまで元気だったのに。……ごめんね」
その声色に感情はなく、むしろ淡々としていた。
魔物たちは理解する。
今、目の前にいるアレは、誰よりも強く、そして誰よりも残酷な存在であると。
「オレたち、とんでもないものを呼んだんじゃ……」
「まるで魔物より、魔物じゃないか……」
やがて少年は立ち上がる、たったそれだけの事なのに、魔物たちは震え上がる己の体を抑えきれなかった。
「じゃあ行こっか」
「「どっどちらにですか?」」
「もちろん、宿敵のところだよ」
魔王は振り返り、冷酷な深紅の瞳を向けながら告げた。
「勇者、倒したいんでしょ?」
おぞましい魔物たちが巣くう荒れた城の中、その奥の奥にある薄暗い地下室に二つの淡い影が現れる。
巨大な魔方陣は赤く光り続け、そして眩い輝きが一瞬だけ広がった。
「成功、だな……ケケッ」
「ああ……やっと召喚できた」
悪魔の様な大きな翼と、人の様な狼の背中、魔方陣の外側に立つ二体の魔物が、感慨深げに頷き合う。
その中心に一人の少年が立っていた。
「あれ…ここどこ? さっきまで教室にいたはずなんだけど」
幼い口調にしては背が高く、肩まである白髪の癖毛、赤みを帯びた瞳は、目の前に現れた異形を捉えてもなお不思議なほど落ち着いていた。
「なんか画面出てきた…… これあれかー、異世界がどうのみたいな…」
その様子はやや不気味ではあるが、彼らの目には恐れはなく。むしろ、尊敬の色があった。
「ケケケッ、ようこそ魔王様、来て下さるのを心待ちにしておりました」
「魔王? 僕が……?」
「はい、貴方様にはこの世界の魔王として、同じくこの世界に召喚された勇者を討伐していただきたいのです」
目の前で跪き頭を垂れる魔物たち、少年はそんな彼らを見下ろし、静かに微笑んだ。
「いいよ」
「「へっ?」」
魔物たちは一瞬、言葉を失ったが、すぐに歓喜する。
「ああ…魔王様、なんと聡明なご判断… 恐れいります」
「ありがと、僕はアキト、名前で呼んでね」
「かしこまりました、アキト様。この人狼、隣のガーゴイル共々、命を掛けてお仕えします…!」
「ケケッ、やはり貴方様こそ"真の魔王"でございますな。 ケケケケケッ!!」
すると突然、扉が爆音と共に吹き飛び、
「待て! その召喚は許されていない! 」
激昂に燃える声が部屋に響いた。
「ゲゲッ!? ゴライアス魔将、何故此処に!?」
「ごらい…なに?」
「マズイぞ……! 前魔王直属の幹部、七魔将の一体だ……! 」
全身を鎧で覆い、赤いマントを靡かせた巨体。背から覗く悪魔の尾が、怒りに打ち震えていた。
「やっと見つけたぞ、反逆者め!!」
突如現れた魔将の襲撃に、魔物たちは思わず後ずさる。
「あと百年だ! あと百年で魔王様は完全に復活なさる、それが何故わからない!! 」
その圧に、場は一瞬張り詰めたが、すぐさま一匹の魔物が前に出た。
「ケッ、百年も待ってられるか! 復活したところで、また勇者に倒されるのがオチなんだよ!!」
その言葉に魔将の怒りが爆発する。ガーゴイルは一瞬だけ振り向き、人狼が頷く。
「貴様ァ! 魔王様を侮辱するかァアアア!!!」
魔将は咆哮し、虚空から槍を取り出しこちらに襲いかかって来た。
「当たると思ったか? ケケッ、オレの翼は飾りじゃねぇんだよ、っと」
挑発しながら飛翔し、相手の攻撃を避け続けるガーゴイル、その隙に人狼はアキトを抱えて走り出す。
「アキト様、アイツが気を引いてる今のうちに!」
──順調に見えたのも束の間
「覚悟しろ、小蝿がァ!」
魔将の槍が放たれ、ガーゴイルの翼を貫いた。
「ぐッ……!?」
壁に叩きつけられ、完全に身動きが取れなくなる。
「……見えていないとでも思ったか?」
人狼による背後からの奇襲、だがそれを見抜き、振り向きざまに一撃を喰らわせた。
「ク、ソッ… ここまで、なのか…… 」
あまりにも重い衝撃により立ち上がれず、血を吐きながら呻く。
魔将は虚空からもう一つの槍を構え、人狼に切っ先を向ける。
「まずは貴様からだ… 反逆者」
ガーゴイルは残った力で必死に抗おうとするが、助けたくとも、もはや打つ手は残されていなかった。
「ケ……やめろ、やめてくれ…… 」
トドメを刺そうとした、まさにその瞬間。
「ねえ、『やめろ』って言われてるじゃん」
突然目の前に現れ、槍の切っ先を軽く蹴り飛ばしたのは、魔王である少年、アキトだった。
「ねぇ、君は僕をどうしたいの?」
「ええい小癪な──! 反逆者諸共、貴様も消し去ってくれる!! 」
「そっか、ざんねん」
ゆっくり右手を上げると、紫立つ禍々しい色の巨大な炎が生まれ、魔将に向かって放たれる。
「その程度、当たると思ったか!」
魔将はその大ぶりな魔法を軽々とかわす、しかし──
「うん、思ってないよ」
かわした直後、まるで吸い込まれるように、天井からもう一つの炎の塊が現れ、魔将に直撃した。
「バカな……!? ぐ、ああああああああああ――!」
断末魔すらかき消され、そこにあったのは、ひとかたまりの灰だけだった。
((い、一撃だと……!? ))
あれだけ猛威を振るった魔将の最後の姿に、二体は驚愕した。
少年は膝をつき、その灰をすくい上げる。
「……さっきまで元気だったのに。……ごめんね」
その声色に感情はなく、むしろ淡々としていた。
魔物たちは理解する。
今、目の前にいるアレは、誰よりも強く、そして誰よりも残酷な存在であると。
「オレたち、とんでもないものを呼んだんじゃ……」
「まるで魔物より、魔物じゃないか……」
やがて少年は立ち上がる、たったそれだけの事なのに、魔物たちは震え上がる己の体を抑えきれなかった。
「じゃあ行こっか」
「「どっどちらにですか?」」
「もちろん、宿敵のところだよ」
魔王は振り返り、冷酷な深紅の瞳を向けながら告げた。
「勇者、倒したいんでしょ?」
5
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
第2王子は断罪役を放棄します!
木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。
前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。
それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。
記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる!
ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる!
スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します!
この話は小説家になろうにも投稿しています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる