召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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序章

魔王召喚の正否

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 ギャア──ギャアアアッ──

 おぞましい魔物たちが巣くう荒れた城の中、その奥の奥にある薄暗い地下室に二つの淡い影が現れる。
 巨大な魔方陣は赤く光り続け、そして眩い輝きが一瞬だけ広がった。 


「成功、だな……ケケッ」  

「ああ……やっと召喚できた」 


 悪魔の様な大きな翼と、人の様な狼の背中、魔方陣の外側に立つ二体の魔物が、感慨深げに頷き合う。 


 その中心に一人の少年が立っていた。 


「あれ…ここどこ? さっきまで教室にいたはずなんだけど」

 幼い口調にしては背が高く、肩まである白髪の癖毛、赤みを帯びた瞳は、目の前に現れた異形を捉えてもなお不思議なほど落ち着いていた。

「なんか画面出てきた…… これあれかー、異世界がどうのみたいな…」

 その様子はやや不気味ではあるが、彼らの目には恐れはなく。むしろ、尊敬の色があった。

「ケケケッ、ようこそ魔王様、来て下さるのを心待ちにしておりました」 

「魔王? 僕が……?」 

「はい、貴方様にはこの世界の魔王として、同じくこの世界に召喚された勇者を討伐していただきたいのです」

 目の前で跪き頭を垂れる魔物たち、少年はそんな彼らを見下ろし、静かに微笑んだ。 


「いいよ」 


「「へっ?」」

 魔物たちは一瞬、言葉を失ったが、すぐに歓喜する。

「ああ…魔王様、なんと聡明なご判断… 恐れいります」

「ありがと、僕はアキト、名前で呼んでね」

「かしこまりました、アキト様。この人狼ワーウルフ、隣のガーゴイル共々、命を掛けてお仕えします…!」

「ケケッ、やはり貴方様こそ"真の魔王"でございますな。 ケケケケケッ!!」


 すると突然、扉が爆音と共に吹き飛び、 
  
「待て! その召喚は許されていない! 」
 
 激昂に燃える声が部屋に響いた。 


「ゲゲッ!? ゴライアス魔将、何故此処に!?」

「ごらい…なに?」

「マズイぞ……!  前魔王直属の幹部、七魔将の一体だ……! 」 

 全身を鎧で覆い、赤いマントを靡かせた巨体。背から覗く悪魔の尾が、怒りに打ち震えていた。


「やっと見つけたぞ、反逆者め!!」

 突如現れた魔将の襲撃に、魔物たちは思わず後ずさる。

「あと百年だ! あと百年で魔王様は完全に復活なさる、それが何故わからない!!  」

 その圧に、場は一瞬張り詰めたが、すぐさま一匹の魔物が前に出た。

「ケッ、百年も待ってられるか! 復活したところで、また勇者に倒されるのがオチなんだよ!!」

 その言葉に魔将の怒りが爆発する。ガーゴイルは一瞬だけ振り向き、人狼が頷く。

「貴様ァ! 魔王様を侮辱するかァアアア!!!」

 魔将は咆哮し、虚空から槍を取り出しこちらに襲いかかって来た。


「当たると思ったか? ケケッ、オレの翼は飾りじゃねぇんだよ、っと」
 
 挑発しながら飛翔し、相手の攻撃を避け続けるガーゴイル、その隙に人狼はアキトを抱えて走り出す。

「アキト様、アイツが気を引いてる今のうちに!」


 ──順調に見えたのも束の間


「覚悟しろ、小蝿がァ!」

 魔将の槍が放たれ、ガーゴイルの翼を貫いた。


「ぐッ……!?」

 壁に叩きつけられ、完全に身動きが取れなくなる。 

「……見えていないとでも思ったか?」

 人狼による背後からの奇襲、だがそれを見抜き、振り向きざまに一撃を喰らわせた。 


「ク、ソッ… ここまで、なのか…… 」

 あまりにも重い衝撃により立ち上がれず、血を吐きながら呻く。
  魔将は虚空からもう一つの槍を構え、人狼に切っ先を向ける。 

「まずは貴様からだ… 反逆者」 

 ガーゴイルは残った力で必死に抗おうとするが、助けたくとも、もはや打つ手は残されていなかった。


「ケ……やめろ、やめてくれ…… 」 

 トドメを刺そうとした、まさにその瞬間。






「ねえ、『やめろ』って言われてるじゃん」




 突然目の前に現れ、槍の切っ先を軽く蹴り飛ばしたのは、魔王である少年、アキトだった。


「ねぇ、君は僕をどうしたいの?」

「ええい小癪な──! 反逆者諸共、貴様も消し去ってくれる!! 」

「そっか、ざんねん」

 ゆっくり右手を上げると、紫立つ禍々しい色の巨大な炎が生まれ、魔将に向かって放たれる。 

「その程度、当たると思ったか!」

 魔将はその大ぶりな魔法を軽々とかわす、しかし──

「うん、思ってないよ」 

 かわした直後、まるで吸い込まれるように、天井からもう一つの炎の塊が現れ、魔将に直撃した。 


「バカな……!? ぐ、ああああああああああ――!」 

 断末魔すらかき消され、そこにあったのは、ひとかたまりの灰だけだった。 


 ((い、一撃だと……!? ))

 あれだけ猛威を振るった魔将の最後の姿に、二体は驚愕した。


 少年は膝をつき、その灰をすくい上げる。

「……さっきまで元気だったのに。……ごめんね」 

 その声色に感情はなく、むしろ淡々としていた。 



 魔物たちは理解する。

 今、目の前にいるアレは、誰よりも強く、そして誰よりも残酷な存在であると。 

「オレたち、とんでもないものを呼んだんじゃ……」

「まるで魔物より、魔物じゃないか……」 


 やがて少年は立ち上がる、たったそれだけの事なのに、魔物たちは震え上がる己の体を抑えきれなかった。 


「じゃあ行こっか」

「「どっどちらにですか?」」

「もちろん、宿敵のところだよ」 

 魔王は振り返り、冷酷な深紅の瞳を向けながら告げた。


「勇者、倒したいんでしょ?」



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