怪獣特殊処理班ミナモト

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第1章 神獣協会

秘密裏に、そして迅速に

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第三次世界大戦の戦火によって焼失した皇居跡には、多くのマスコミ関係者が押しかけていた。その目的はもちろん、皇居跡の堀で発見された男性の変死体について報道するためである。

『ご覧ください、昨日深夜、こちらの堀に裸で水面に浮かぶ、20代前半の男性の死体が発見されました。そして驚くべきことに、この男性は検死の結果怪人化しており、電波灯台内で怪獣に類するものが発見されたのは、世界初です。これを受け政府では、専門家を招いた緊急討論会を行い、今後の方針について話し合う見込みです。』

 そこで出羽長官はホログラムを消した。

「このように、世間では大きな混乱が広がっています。総理、まずは国民の興奮を鎮静化してから、原因を調査すべきです。」

「それでは遅すぎる!電波灯台が破られたんだぞ?これは世界大戦以来の重大事だ。一刻も早い捜査を行うべきだろう。ここで選択を間違えれば最悪、日本は世界から孤立することになる」

 外務大臣は思わず身を乗り出した。地球防衛庁地下にある大会議室には、各大臣が集まり、今まさに激論を繰り広げていた。

「お気持ちも分かりますが、外務大臣。事を急いて進めれば、必ずどこかでボロが出ます。具体的な原因が分からない今、先ずすべきは国民を安心させることでしょう」

「防衛長官がそんな弱気でどうするというのだ。君は怪獣を殲滅するためにここにいるというのに」

「私はもう国民に無理をさせたくないのです」

「関東軍の英雄が今更その過去を悔い改めるというのか?」

「外務大臣!それに出羽長官も一旦落ち着け。」

 神原総理は二人を制すると、冷静に話し始めた。

「たった今警察から連絡が入った。怪人化した男性は連続誘拐事件の被害者の一人と一致するそうだ」

 総理の発言に室内は一時騒然となった。

「総理!では誘拐された人々は人為的に怪人にされたと?」

「そこまでは言っていない。だが、その可能性も考えられる」

「決まりだな」

 外務大臣は秘書に何やら耳打ちをした。そして自衛隊幕僚長が発言した。

「総理、原因の迅速な究明のためにも、捜査への特殊作戦群の投入を許可していただきたい」

「……やむを得ないな。幕僚長、隊員たちに伝えろ。誰一人として殺すな。それだけは禁止する」

「了解しました」

 幕僚長はそれを聞くと秘書官を置いて会議室を出た。それと入れ替わりに今度は、本土守備隊の幕僚長が発言した。

「自衛隊だけでは手の回らないこともあるでしょう。我々も独自に調査部隊を動員して協力します」

「それは…いや、この際構わない。調査隊の編成を許可する」

 そして会議は国民への対応に話がシフトした。

「やはり業務のリモート化が最適ではないでしょうか。今こそデジタル移行を推進してきた成果を見せるときです」

 産業大臣の意見はすぐに採用され、政府は不要不急の外出を控えるとともに、各企業の在宅勤務への一時的な完全移行を命じ、それにより主要都市はロックダウンとなった。

「それで僕たちは何をするんですか?」

 源は職員寮の自分の部屋から画面越しに、東雲にそう言った。

「怪獣の浄化は引き続き行う。だがそれに伴って我々も捜査に参加することになった」

「捜査?」

「今年に入ってから起こり続けている連続誘拐事件被害者の一人が、今回発見された男性だ。その捜査に協力する」

「それはもしかすると、まだ怪人がいるかもしれないということですか?」

「その可能性もある」

「ですが班長、私たちはあくまでコアの浄化が仕事のはずです。捜査に参加するにしても専門的な知識がないのでは?」

 白石が質問した。

「もちろん全員で行うわけでは無い。白石も諏訪部もまだ退院するには早すぎる。そこで私と赤本、そして源でこの仕事に当たる」

「俺たちは元自衛官だ。ある程度の知識はある」

 赤本が続ける。

「源君は確か自衛隊のころの記憶が無かったのでは?」

 諏訪部はどちらかというと白石と似た意見らしい。

「源にはその適合率を生かして協力してもらう。すでに自衛隊からの正式な通知も来ている」

「あの、東雲さん、適合率を生かした仕事というのは…」

「犯人の所在を突き止めてもらう」

 東雲の話によると、誘拐事件の犯人は人間を人為的に怪人にする方法を持っている可能性があり、発見された男性のほかにも、怪人がいる可能性がある。そこで源が、特殊な機械を用いて、コアから発せられる特有の脳波を探知するのだ。

「少なくとも電波灯台の近辺では脳波は検知されなかった。そこで源の強力な脳波をさらに強化して電波灯台の電波出力とそれを同等にする」

「つまり動く電波灯台ですか。すさまじいですね」

 諏訪部が思わずそう言った。高さ一キロにも及ぶ巨大設備を、人間一人で再現しようとしているのだ。無謀にも近いように思える。

「大体の目星がつくまでは我々は通常勤務だ。しばらく対面することは無いが、各自業務を怠らないように。ではいったん解散だ。源と赤本は残れ」

 そうしてグループには源と赤本、そして東雲が残された。

「お前たちに今回協力してもらう自衛隊員を紹介する」

 そこで東雲は一呼吸置いた。どこか緊張しているようだ。

「自衛隊特殊作戦群の伊地知一佐だ」

 そしてホログラムにもう一つ画面が現れた。そこに映っていたのは、マスクをした40代ほどの男性だった。その目つきは出羽長官よりもさらに鋭く、はっとするほど冷たかった。

「伊地知だ。よりによってここに当たるとは思っていなかったが、必要最低限の義務はこなす」

 伊地知はそこで話を止めると、画面を覗き込んだ。

「おい、東雲。重心が右に偏っているぞ。お前、除隊してからトレーニングメニューを変えたな?」

 伊地知はどすの利いた声で東雲にそう言った。東雲は冷や汗をかいていた。

「伊地知さん、東雲さんはもう自衛隊員じゃない。その言い方はやめてください」

「黙っていろ、貴様は東雲以上に許せん。裏切者が…!」

 伊地知は途端に機嫌を悪くしたかと思うと、赤本に向かってそう吐き捨てた。

(もしかしてこの人、赤本さんたちが自衛隊だったころの上官か?)

「お前は源と言ったな」

 不意に伊地知は源に話しかけた。

「は、はい。源王城です」

「……とても適合者には見えんが、確かさきの浄化作業でコアを砕いたらしいな」

「え?それは、はい。気づいたら砕けていたというか…」

「お前は今回の捜査において重要な役割を与えられている。足手まといにならぬよう、努力しろ」

「り、了解しました…」

 伊地知はほんのちょっとだけ源に甘いように見えた。

「いいか、今回の任務の達成条件は犯人の逮捕と誘拐された一般人の救出だ。それらを一切の漏れなく、かつ迅速に行う。東雲、特殊作戦群のスローガンは覚えているな?」

「…秘密裏に、そして速やかに」

「そうだ。源、この言葉をよく覚えておけ。我々はこれに基づいて行動する」

「はい…」

「では俺は仕事に戻る。あとは好きにしろ」

 伊地知はそう言うとグループから退出した。伊地知がいた間、その場の主導権は全て伊地知にあった。源は人生であれほどに高圧的で冷酷な人物は見たことが無かった。

「…チッ。クソ野郎」

 赤本はそう呟いた。東雲は複雑な表情をしている。どこか悔しそうで、悲しそうで、そして憤っていた。その相手は伊地知とも、自分自身とも取れた。

 そして一週間後、源は一人、地球防衛省に呼び出された。
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