怪獣特殊処理班ミナモト

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第1章 神獣協会

ヘッドハンター作戦 交戦

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正面入り口に向かったシータ隊とデルタ隊と別に、伊地知自らが率いるアルファ部隊とベータ部隊、エータ部隊は施設裏口から侵入した。3部隊はすぐに三方向に別れ、各部屋のクリアリングを開始した。最初に怪人を見つけたのはエータ部隊だった。

『こちらエータ、ルーム223に怪人と思わしき死体を発見。頭部の切除の許可を求める』

『こちらアルファ、首狩りを開始せよ』

『エータ了解』

 エータ部隊は、居住スペースと思わしき簡素な部屋に倒れる怪人の頭部を切断して回った。これにより生命活動は不可能となり、後はコアを浄化するだけとなる。

『こちらウルフ5、一体に生命反応を確認。その…目から血の涙を流している』

『何だと?すぐに殺害しろ。それは過程変異の兆候だ!』

 隊長の警告からすぐに、数発の発砲音と爆発音が鳴り響いた。そしてすぐにスプリンクラーと警報機が作動した。

『こちらベータ、何があった?』

『過程変異した怪人が紛れていた。戦闘を開始する』

『了解』

 エータ部隊のウルフ1、2は居住スペースの曲がり角を陣取り、素早く部隊を散開させた。

『こちらウルフ5!怪人はそちらに気づいていない!構わず撃て!』

 隊長は一瞬躊躇ったが、すぐに隊内選りすぐりの射撃手を集め、コーナーから慎重に照準を合わせた。

『いいか、点ではなく面を狙え。射撃準備』

 隊員たちはスプリンクラーによって晴れ始めた煙の中に、人影を捉えた。

『射撃開始!』

 隊長の指示により、合計6つの銃口から、雨のように大口径の散弾が降り注いだ。すると煙の中の人影は一瞬でバラバラに吹き飛び、照明は消えて通路は無数の穴だらけとなった。流れ弾でスプリンクラーが止まったため、水の滴る中、フェイスガードの赤外線装置を起動した。そこには、冷たくなった仲間の死体と、その奥に転がる、怪人の肉片が散らばっていた。

『対象、完全に沈黙しました』

『すぐに各部屋のクリアリングに移れ。同じ轍を踏むつもりは……』

 そこで突然、別の通路を担当していたウルフ4から無線が入った。

『あーあー、これでいいのか?人間、聞こえていたら返事をしろ。出来れば隊長格が望ましいのだが』

 それは怪人からのものだった。動揺する隊員たちを鎮静すると、隊長はその無線に応じた。

『……エータ隊隊長だ』

『隊長?これは好都合だ。だがこうやって会話している時点で、奴隷はすぐにやられてしまったようだな。何処まで情けない連中なんだ、全く』

『何の用だ、怪人』

『なに、お前たちの使うこの機械が気になってな。それにしてもまだこの程度の技術力とは、不便で仕方がないだろう』

『無線を切るぞ』

『まあ待て。お前たち、中々強いじゃないか。そこでだ、我らにその身体を献上するつもりはないか?』

『……何を言っている?そんな話、乗るわけがないだろう。俺たちはみな、怪獣に家族を殺されたんだぞ?』

『そうか、では最後に名を名乗っておこう。我が名はティレ・ラオリ・カミセル。王家の戦士にして誇り高きカミセルの長。其方も名を名乗られよ。これは私からのささやかな敬意ぞ』

『……その必要はない。貴様は我々が必ず殺す』

 隊長は無線を切ると、ウルフ1、2、3を集めて、暗い通路の部屋に隊員たちを配置した。隊長は全体通信で呼びかけた。

『こちらハンターエータ、ウルフ4と5がやられた。至急応援を願う』

『こちらハンターアルファ、それは不可能だ』

『了解、健闘を祈る』

 エータ隊隊長は無線を投げ捨てたくなる衝動を抑えて、自身は最奥の部屋に移った。そしてすぐに、曲がり角から何かを引きずるような音がし始めた。

『発砲準備』

 隊長の合図により、各部屋から一斉に銃の先端が現れ、その角に狙いを定めた。そして、スポットライトのように照らされた曲がり角から最初に現れたのは、投げ捨てられた隊員の片足だった。そして声がした。

「お前たちは一つ、大きな勘違いをしている。それは我々の力だ。何故このような子供だましの装備でもって私たちと互角に、いや、優位に戦えると思った?恐らく斥候として放った奴隷と、獣畜生共から我々の力の程を図ったのだろうが。そもそもの前提が間違っているのだ。ここにいるのは戦士とその直属の部下!みな戦闘訓練を受けた一流の兵隊だ。それが奴隷などという下等と同じ尺度で図られる。エータ隊とか言ったか、俺はこれでも穏やかな方だ。怒りに任せてお前たちを肉塊にすることはない。ではこれが最後のチャンスだ。我々にその身体を献上せよ」

『どちらにせよ我々は死ぬんだな?』

 隊長は外部スピーカーでそう呼びかけた。その声には、隊長の決意が感じられた。諦めや憤りは微塵も感じない。ティレはそれを敏感に感じ取った。

「……死ぬな。だが、投降するならば楽に殺してやる」

『では答えはノーだ。クソくらえ、怪人』

「それでいい!」

 ティレはそう言うと、壁をぶち破り、一番近い部屋に侵入した。そしてすさまじい速さで、室内にいた隊員たちの頭を潰した。発砲する間もないほどの一瞬だった。

「お前たちの真似だ。怯むなよ?」

 ティレはそのまま向かいの部屋に突っ込み、銃を奪い取るとそれで一気に3人の頭を吹き飛ばした。

『隊長!このままでは全滅します!』

『……すまない。せめて時間稼ぎできればと…』

『そうではありません!自爆の許可を!』

 隊長はそれを聞いて震えた。まだ隊員たちはあの怪物を殺そうとしているのだ。自分の命を簡単に散らしてまで。

『……自爆を許可する。みな、良く戦ってくれたな』

『それは我々には似合いませんよ。最後まで残酷でいなくては』

 また一部屋、中の隊員たちが惨殺された。

『そうだったな。総員、死んでくれ』

 次の瞬間、ティレが入っていった部屋が爆発した。そしてその中に向かい側の隊員たちが突入し、数発の発砲音が聞こえたあと、その隊員たちのバラバラになった四肢が煙の中から飛び出してきた。そして、もはや原形をとどめていない右腕を邪魔そうにぶら下げたティレが現れた。今の爆発で多少のダメージをおっているようだ。それを隊員たちは逃さなかった。各部屋から一斉にティレに向かってショットガンを発砲した。ティレはその一部を被弾しながらも、使い物にならなくなった右腕を自ら引きちぎり、また一部屋、隊員たちの頭を足でけり飛ばした。今度は自爆の暇を与えなかった。部屋の中からはティレの声が響いた。

「人間共!俺の片腕は高くつくぞ!」

 そしてまた爆発が起こった。隣の部屋の隊員たちが壁もろともティレを吹き飛ばそうとした。ティレはそれを間一髪で避けると、向かいの部屋に飛び込み、隊員の死体から奪ったショットガンを至近距離で乱射し、その体をバラバラに吹き飛ばした。この時点で、真っ暗な通路は血煙と硝煙に覆われ、すでにエータ隊総勢30人の内、24人が死亡していた。そして残る部屋は二つとなった。

『隊長、ここは恐らく最後の部屋になります。その時はこれを』

 隊長のそばにいた副隊長はそう言うと、三人分の手りゅう弾を隊長に手渡した。

『分かった。これを確実に当てるにはお前たちに肉壁をさせねばならない。異論ないな?』

『もちろんです、隊長』

 そう言う隊員たちは、普段よりも生き生きとして見えた。そして、ティレはまた隣の部屋に突っ込み、隊員たちをタックルで押し潰した。そこで初めて、隊長とティレは目が合った。ティレの目は血走っており、まるで獣の様だった。

(なんだ、私たちと同じじゃないか)

『総員、スクラムを組め!相手はたった一人だ、押し負けるなよ?』

『了解!』

 残った隊員たちは、手りゅう弾を抱える隊長を背に、機械化装甲の出力を限界まで引き上げると、今にも部屋に飛び込んできそうなティレを睨み据えて、スクラムを組んだ。たった3人のスクラムは、他のどれよりの強固に見えた。

「終わりだ、人間!」

 ティレは叫ぶと、そのスクラムめがけて突っ込んだ。そして強い衝撃とともに何とかその壁を引き裂くと、目の前には手りゅう弾を抱えたあの隊長がいた。すでに安全ピンは抜かれている。

「終わるのはお前だ、クソ野郎」

 その言葉と共に、ティレは爆炎と衝撃波にのまれて、意識を失った。

「う、が…」

 気付くとティレはがれきの下敷きになっていた。すでに両足の感覚は無い。

「……侮っていたのは俺か」

 ティレはその場で力を抜くと体の回復に専念した。

(これは殿下に申し訳が立たないな。レストア殿はいいとして、他の幹部は…特にカタが気になる)

 その時ティレは、自身の体を貫く一発の銃弾に気づかなかった。もうその時には、ティレの心臓は貫かれ、すでに出血多量だったティレの肉体が即死したからだ。

『こちらウルフ4、怪人を一体殺害。恐らくティレと名乗っていた固体かと』

『了解、念のため頭部は切除しろ。そいつが恐らく、カタと名乗った個体が話していたティレだ』

『頭部は持っていきますか?』

『そうだな、カタと同じボックスに入れてやれ。そいつら多分同僚だ』

 そういう伊地知の声は若干の悪意に満ちていた。伊地知たちアルファ部隊は他部隊と別れたあと、単独で怪人のせん滅を行っていた。その過程で、カタ・ラオリ・キセイカと名乗る怪人を死者数ゼロで撃破したのだった。このアルファ部隊は、特殊作戦群の最高戦力であった。

『こちらベータ、怪人を2体撃破。その過程で戦力の半分を損失したため、後退の許可を乞う』

『こちらハンターアルファ、ベータ部隊は上層に撤退し通用口を封鎖しろ。我々はこのまま目標を追う』

それにベータ隊隊長の出雲は一瞬耳を疑った。

『了解、健闘を…健闘を祈る』

そうしてベータ隊は、上層の特殊処理班の護衛をするため基幹エレベーターで上階に上がった後、エレベーターシステムをロックし、各通路、換気口を封鎖した。
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