怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0

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第1章 神獣協会

ヘッドハンター作戦 変容

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「死を前にして、何故抗わない」
「…まだ死ぬつもりはないからだ」
 すると、がれきの山の向こうから声がした。
「赤本さん!」
「……やっと来たか」
 レストアはその声を聴くと、急に体の力が抜け、赤本はその手から逃れることが出来た。
「な、なぜあのお方がここに…!」
 慄くレストアは、思わず後ずさりした。そして、がれきの山から、一人の人間が登ってくるのが見えた。彼は、首の後ろから長いケーブルのようなものが伸びていた。それは源だった。
「あの姿!だが気配も、精神座標も、あの方と一致している…!」
『源、こいつだ、浄化してくれ』
赤本は無線で呼びかけた。
「はあはあ、ちょっと待ってください。首のやつ、結構重いんですよ…」
 源はがれきの山を登ると、レストアを見下ろした。
「……なんだか、覚えのある光景ですね」
 源は左手をレストアに向けると、目をつぶった。
(あれは、我を浄化するつもりか!)
 レストアは源を殺そうとしたが、足が動かなかった。すでにその時には、脳のコアの半分が破壊されていたからである。源は白い空間で黒い球にひびを入れると、黒い霧が一気に噴出した。
「うわ、この怪人。どれだけ中身が濃いんだよ…」
 源はそのまま球を握りつぶすと、さらに大量の黒いきりが握りつぶした左手の指の隙間からあふれ出し、白い空間を一時的に染めた。そして、霧は全て晴れ、残ったのは透明な球のかけらのみとなった。
「浄化完了、かな」
 源が目を開けると、レストアに目をやった。すでにレストアはその場に倒れていた。その横で赤本が何とか立とうとしている。源はなるべく急いでがれきを降りると、赤本の体を支えてあげた。
「大丈夫ですか?赤本さん」
「……ああ。大丈夫だ」
 そういう赤本の表情はどこか暗かった。
(あの怪人、死ぬ間際にあんなこと言いやがって)
 それはレストアが脳のコアを浄化される直前に、赤本に向けて言った言葉だった。
「アカモト、この因縁、必ずや決着させようぞ」
(もうお前みたいな化け物と戦うのはこりごりだ)
 赤本は機械化装甲の補助機能を起動すると、東雲の倒れるビルに向かった。すると不意に、二人の前に人間が一人、落下してきた。その男は、綺麗に着地すると、それを苦にすることなく近づいてきた。あっけにとられる二人に、右手を差し出すと、こう言った。
「遅れてすまない。アメリカ海兵隊所属、怪獣特務大隊だ」
負傷している赤本に代わって源が握手をすると、さらにもう一人、米海兵隊の戦闘服に身を包んだ男が降下してきた。そして衝撃と共に地面に両足で着地すると、源たちを見て気さくに笑いかけた。
「ヒーローは遅れてくる、ってな」
 伊地知率いるアルファ部隊は、幹部のカタとティレを処理した後、さらに研究室らしき部屋の研究員3人を殺害した。それらは怪人だった。
『隊長、これを』
 研究室を調べていた隊員の一人が伊地知を呼んだ。その隊員は壁の横に立っていた。
『恐らく隠し扉です。僅かですが段差があります』
 伊地知は隊員の指さす所を手袋を外すと素手で触ってみた。
『……なるほど。ではここをこじ開ける。解錠装置を持ってこい』
 伊地知はその場にいたウルフ1に指示すると、すぐに薄いカードのようなものを持った隊員がそれを壁に貼った。すると、ブーンという低い音と共に、壁の一部が窪み、そこに扉が出現した。
『でかした。この中にウルフ4と5を突入させるぞ。ライフルを通常弾薬に切り替えろ』
 部屋の外で警戒にあたっていたウルフ4、5はその任務をウルフ2、3に任せ、重い扉を押し開けると隠し部屋の中に侵入した。
『何だ?この空間は』
 中に入った隊員たちはその異様な光景に驚いた。何と中は何の装飾もない、ただの真っ白な空間だったからである。さらに、光源の不明な明かりが部屋をあらゆる方向から照らしていて、影は存在しなかった。
『ウルフ4、状況を報告せよ』
『一辺50メートル四方の真っ白な正方形の中にいる。何もない』
『……具体的に報告せよ』
『今のがこの部屋の全てだ。何もない、そう、何もないんだ』
 そこでウルフ4と5との通信が途絶した。
『隊長……』
『部屋へは侵入するな。その入り口からのみ中の様子を観測しろ。恐らくこれは罠だ』
「その通り」
 不意に後ろから声がした。伊地知はすぐさま銃を抜き後ろを振り向いた。だがそこには誰もいなかった。
「……怪人か。いや、その声は金城だな?」
(動揺は…ないか。そこは流石といった所かな)
「私の声まで知っているのか。現代技術はすごいね。全く」
「我々に何をした」
「それにしても、ちょっと君たちは強すぎるよね。レストアにしても、他の幹部たちにしても、まさか今の段階でこうもあっさり殺されるとは思わなかった。ほんとは最初の5分くらいで君たちを全滅させられる予定だったんだけど……どんな裏技を使ったのかな?」
「もう一度聞くぞ、金城。我々に何をした。話はそのあとだ」
「なに、少々君たちの精神世界というものを覗いているだけさ。その過程でちょっと記憶をいじらせてもらった」
「記憶の改ざんだと?そんなことは……」
「私にも不可能だ。だが、方法はあってね。さっき君が見ていたのは数分前の記憶だ。研究員たちを難なく殺した後に、ある部屋を見つけただろう?君とその部隊はその中に入った」
「あの部屋は脳に干渉することが出来るのか?」
「察しがよくて助かるよ。その通りだ。そういう使い方ができる」
「ではなぜ我々を殺さなかった。いくらでもやりようはあっただろう」
「それはしごく単純な理由だよ。君たちには利用価値がある」
「…ここから脱出することは出来ないんだな?」
「そうだね、せっかくの人材を私が逃すわけがない」
「では自決を……対策されているか」
「したね」
「なら、お前に聞きたいことがある」
「私の質問には答えてくれていないのに?」
「くどいぞ、記憶がいじれるのならその答えは、俺の頭の中から既に得ているはずだ」
「そう怒るなよ。ほんのささやかな掛け合いだろう?第一、君は私の同胞を雑に扱いすぎなんだ」
「…金城、誘拐した人々はどうした」
「部下の安否より一般人の心配か。優しいというよりは、任務に忠実という感じかな。まあそれはいい。彼らにはね、実験台になってもらったよ」
「実験台?」
「なに、脳の容量を少し増やしてやるのさ。いうなれば、記憶域の解放というやつだ」
「何の目的で?」
「そうだな、君にもわかりやすいように言うと、適合率100パーセントの人間の素体を造るんだ」
「それはお前のためか」
「まさか。我らラケドニアの民の為だ」
「ラケドニア……」
「ほら、聞いたことがあっただろう?米国辺りからさ」
「お前は、何処に行くつもりだ」
「質問の意味が分からないな」
「最終的に何を成そうとしている」
「そういうことね。……黄金期を私の手で復活させる」
「文明をお前一人で興すつもりか?」
「全て残さずね」
「はっ、こんな人間もどきが神様気取りとは、世も末だな」
「…まだそんなことをのたまう余裕があったとは、驚きだよ」
「残る怪人はお前だけだ。俺たちをここにとらえただけでもう勝ったつもりか?」
「すでに援軍を?」
「呼ばずともすぐに来るさ。なあ金城、お前は知っているだろう?東京にはな、東京中央基地についで、二番目に大きい基地がある」
「国連極東基地のことかな?でも国連は、この規模の武力衝突に迅速に対応する仕組みを持っていないよ」
「国連軍はな、だが、国家単独なら話は別だ」
「…アメリカか」
「もう到着しているだろうよ。お前を浄化しにな」
「どうやら本当みたいだ。見たこともない強い生体反応が2つ現れたよ。まあ、問題ないけどね」
「何を言って…」
「知っているかい?私たちにはね、コアが二つあるんだよ」
 次の瞬間、伊地知達アルファ隊の全員の意識が完全に消え去った。二度と人間に戻ることは出来ない。
「さて、私は逃げるとしよう。米軍を相手にするには時期が早い」
 金城は、真っ白な空間に横たわる伊地知達から目を離すと、そばに控えていた野鹿に声を掛けた。
「彼らを転送しておいてくれ。座標は分かるね」
 野鹿はそれに頷くと、一瞬でその場から隊員たちごと消えた。金城はそれを気にも留めず、扉を押し開けた。目の前には重装備をした軍人が数人、金城に銃を向けて立っていた。その服装は旧日本軍のようでもあった。
「……金城だな?」
「今はもう力が出ないんだけど……私もつくづく運の悪いことだ、全く」
 本土守備隊の隊員たちは、銃を発砲した。
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