怪獣特殊処理班ミナモト

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第1章 神獣協会

ヘッドハンター作戦 転換

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赤本と源は、目の前に突如降り立った二人の米兵を見て、呆然としていた。
「あの、今怪獣特務大隊と……」
「君たちの同業者ということだ。そして私はその実働班のリーダー、アーノルド・ロステンシュタインだ。こいつはアーサー・アレキサンドラ。」
 アーサーと呼ばれたもう一人の白人の男は、さわやかな笑顔で源と握手した。アーサーはとても美形で、思わず源が、その顔を二度見したほどだった。
「お前が源だな?俺はアーサーだ。よろしくな!」
「衛生環境庁処理科、怪獣特殊処理班の源王城と、赤本明石です」
「ああ、そっちが赤本か。中々イケメンじゃねえか。それに、あんなクソでかい怪人相手に素面で善戦するんだ、確かに強そうだな!」
「おいアレク」
「大丈夫だよ、旦那。どうせこいつらも遅かれ早かれ知るんだろ?」
「知るって何を?」
 源は思わず聞いた。それに何か言いだそうとするアーサーをアーノルドが制すると、
「その話はまた今度だ。まずは浄化作業を優先する」
「その前に、うちの班長を助けてくれないか?」
 赤本は若干苛立ちながらそう言った。
「慌てるな、アカモト。すでにこちらの隊員が回収している」
 赤本たちが東雲の倒れていたビルを見ると、米軍の一般隊員たちが、割れた窓から室内に侵入していた。
「この層の負傷者はすべて把握済みだ。安心しろ」
「全てって、他に生存者が?」
「特殊部隊員が一人倒れていたぞ。確かドッグタグにはイズモと」
 それはベータ隊隊長の出雲のことだった。
「……そうですか。それで、貴方がたはどこに?」
「そりゃあ、下層に決まってるだろ?アシュキルの野郎をぶっ殺すんだよ」
 アーサーは既にやる気満々らしい。
「源、迅速な浄化作業にはお前の力がいる。赤本は軍に任せて、我々に同行してもらえないか?」
「それは構いませんが……」
「では決まりだ」
「旦那、ミナモトにアレを教えましょうよ。きっと最強の兵士になります!」
「その分危険が伴う。そもそも軽率に教えられるものではない」
「じゃあ何で俺には……」
「それだけバカだからだよ」
「またそれかよ」
「あの、アレというのは?」
また意味のわからない会話をしている。
「すまねえな、ミナモト。今は教えらんねえんだよ」
 アーサーはぎこちなく両手を合わせると、お辞儀をした。
「どうだ?俺のオジギ」
「くだらないことしてないで、もう行くぞ」
 アーノルドは何事か兵士と話していた。にわかに活動する兵士たちの動きが活発になった気がする。その最中に赤本も運ばれていった。
「旦那、何があったんだ?」
「たった今コマンドから連絡が入ってな。どうやら怪人が復活した。やつら、特権階級だ」
「おいおい、まじかよ!こりゃとんでもない宝箱だ!国連にまた嫌われるな、俺たち」
「……行くぞ、アレク、ミナモト」
 アーノルドとアレクはその両側面にファンのついた特殊な形のマスクをすると、ヘルメットを脱いだ。
「いいか、最大はセカンドまでだ」
「オーケー、キメてくぜ!」
『制限進化、ファーストスケール』
 二人がそう言うと同時に、二人の目が赤く充血し始め、血の涙を流し始めた。その手は強く握りしめられていて、これが痛みを伴う何かだということは分かった。
『コレコレ!これだよクソっタレ!』
 そう叫ぶアーサーの体は、心なしか大きくなったように見えた。その状態は10秒ほど続き、目は元通りになった。だが二人とも辛そうに肩で息をしている。源は無線で尋ねてみた。
『あの、今のは一体……目から血の涙を流していましたけど…』
『…人間版の過程変異だ。組織を破壊して、より強い形に変異させる。目に関しては、毛細血管が強い血圧に耐えられずに破けて出血するんだ』
『これがどうしてもクソ痛えんだよな』
『もしかしてそのマスクには痛み止めが?』
『そうだ、鎮静剤と、それと薬物が入っている』
『や…今何と?』
『そうでもしねえと耐えられないのさ。それに覚醒状態を持続させることもできる』
『覚醒状態…』
『あまり講義に時間をかけたくない。道すがら説明してやる』
 アーノルドはそう言うと、隊員が台車で運んできた20ミリ機関銃を片手で軽々持ち上げると、肩に担いだ。アーサーはその手に真っ黒のグローブをはめた。
『ミナモト、もう首の回路は取っていいぞ。俺たちがいればまず安全だからな』
『わ、分かりました』
 源は言われた通り、脳波拡張装置との接続を絶った。今までこれによって源自身の脳波も強化してきたのだ。レストアや金城にも無自覚ながらその効果は表れており、特にレストアの力の半分を制限することに成功していた。
 三人は復旧された基幹エレベーターに乗ると、下層に降りた。エレベーターの中で源は二人に尋ねた。
『他のメンバーはどこに?』
『本国に4人残してきている』
 どうやら大怪獣の大規模討伐があるらしい。
『ここにいて大丈夫なんですか?』
『なに、すぐ終わるさ』
 源はまだ、この二人の自信の源が分からずにいた。下層に着くと、源は一つ重大なことを思い出した。
『あの!上層に一体、浄化した怪人がいるんですけど、それも復活しているのでは?』
『……怪人?そんなもの見ていないぞ?』
『え?』
 源は自分の耳を疑った。
(僕は確かに赤本さんと東雲さんを殺そうとした怪人を浄化したはず……)
『まあ、一応捜索はしておくが、あまり期待はするな。我々のレーダー技術を逃れられる物質は、分子一つとして存在しないからな』
『……分かりました』
 アーノルドたちは特に警戒する様子もなく、協会施設の正面入り口に到着した。
『随分派手にやりやがったな。こいつら』
 そこにはバラバラになった隊員たちの肢体が転がっていた。床は血と肉片でぬるぬるとしており、源は微かな不快感を覚えた。
『こういうのを見た後ってのは、好物のレバーも見たくなくなるんだよなあ』
『……』
 源はその光景に思わず目を逸らして、上を見上げた。天井には、一対の目があった。
『……え?』
『どいてろ、ミナモト』
 アーサーは源を軽く突き飛ばすと、源がいた場所に怪人が天井から突っ込んできた。それにアーサーは距離をとって拳を握りしめると、ボクシングのポーズを取った。
「……初撃が外れるのは久しぶりだぞ」
『ああ?英語で喋ってくれ、でなきゃ殺すぞ』
「生憎、英語はまだ履修していない。会話が出来ないのであれば、すぐにそこの屍と同じにしてやる」
 怪人はその場にしゃがむと、両腕を地面につけ、四足歩行のようになった。
『なんでいきなり犬の真似なんかしやがる。ナメてんのか?』
「死ね、人間!」
 怪人はすさまじい速さでアーサーに突っ込むと、それにアーサーは、頭に軽くジャブを繰り出し、その一撃で怪人の上半身は吹き飛んだ。
『ンだよ、特権階級じゃなかったのか?クソみてえに手ごたえが無えぞ』
 アーサーは血にまみれた左手を振って血を落とした。
『どうした?ミナモト』
 アーサーはそれを見てあっけにとられる源に、そう呼びかけた。一瞬のこと過ぎて、源にはまだなにが起きたのか理解しかねた。
『怪人を、一撃で……』
『ああ、そのことか。だからさっき言っただろ?すぐに終わるって。ミナモトの想像するよりも、世界はずっと先を行ってんだよ。そういう意味じゃ、日本はまだまだ後進国だぜ?』
『アレク、次はなるべく原形をとどめた状態にしろ。あれじゃあコアが壊れる』
 アーノルドはそう言って怪人の死体を指さした。そこには砕かれた上半身のかけらと、下半身が転がっていた。特有の黒い血があたりにぶちまけられており、確かにコアが一緒に砕けていてもおかしくなかった。
『旦那、そりゃないぜ。俺は確かに手加減したし、殴る場所も頭頂部からずらした。多分、あいつが脆すぎたんだ』
『ではもっと手加減をしろ。デコピンでいい』
『え~?あれは当てるのが難しい…』
『黙ってやれ、時間がない』
 アーサーは首をすくめると、両手を広げて、やれやれと言った感じで首を横に振った。
『……はあ、分かったよ』
『ミナモト、行くぞ』
 アーノルドは立ち尽くしていた源に声を掛けると、先を急いだ。道中、先程のような怪人が数体現れたが、その全てをアーサーは一撃で葬った。もっとも、当の本人はその手応えの無さに不満を漏らしていた。
『ここも相当だな』
 次に源たちは、弾痕と爆発のあとでボロボロになった、一本の暗い廊下を見つけた。ここにも隊員たちの死体が散乱している。
『ここにいた隊員は自爆をしたのでしょうか……』
『だろうな。なすすべなくやられるより、自身の死を顧みずに相打ちを狙いに行くというのは、実に合理的な判断だ。その成果もある』
 アーノルドは、懐中電灯で廊下の奥を照らした。そこには、体中にやけど跡があり、片腕のない恐らく怪人の死体があった。
『弾痕もあるぜ。心臓を撃った奴はきっと射撃の腕が良かったんだろうな。綺麗なワンショットだ』
『だが、浄化する前にコアを破壊するのは基本ノーだ。この感じはまた現れるな』
 コアは、怪獣の精神体の入ったいわば器である。それを浄化、つまり精神体を破壊することで怪獣、怪人を完全に駆除することが出来る。だが、コアを無理に壊してしまうと、その中の精神体が外に漏れだし、身近な生物に寄生することになる。つまり、もう一度新たな怪獣、怪人になってしまうのだ。
『それは俺たちの管轄外だろ?さっさと行こうぜ。この先にビンビン来てやがる』
 アーサーはそう言って骨を鳴らした。それは彼の本格的な戦闘準備の合図なのだろう。
『ミナモト、ここから先は少し危険だ。俺とアーサーでお前を挟むぞ』
『ああ、はい』
 アーノルドはアーサーを源の前に置くと、自身は後ろに立ち、怪人に警戒した。
『……旦那、この部屋だ』
 アーサーはある扉の前で立ち止まった。その部屋の横には日本語と、楔形文字のような言語で、技的実験坑と書かれていた。
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