仮面 ただ、それだけのため

SaisenTobutaira

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第38話 結局は

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「だって好きだもん……」

まさか

まなみのその言葉に僕は動揺した。好きの対象が何なのか薄々気づいていたが、確認のため何が好きなのか、もう1度聞いた。

「だから、『それ』が好きなの」

「そっかあ」

僕はさっきまで感じていた意地悪してやろうという気持ちは今や、無気力感に変わった。僕がまなみの身体を利用していたように、まなみも僕の身体を利用していたのだ。そして、僕が主導権を握っているようで、実は握られていたのかもしれない。

日々のまなみの態度全てが『それ』のためだったのか?

水族館で手をつなげただけで夢が叶ったと言っていたあの瞳、好きと言ったあの瞳、全てが『それ』のためだったのか?それなら演技上手すぎじゃないか

僕はまなみにすっかり騙されていた。

恋愛経験がなかったから、嘘を見破れなかったのだろうか?

いや、そうではないと思う。女の嘘を見抜く、女の本音を知ることは、どれだけ恋愛を経験しても無理だろう。まなみは相当な熟練者で、こんな男を騙すなんて朝飯前だったに違いない。

「私『それ』への欲が強いのだと思う」

「そっかあ」

「でも、恋人として本当に好きだよ」

「違うやろ?結局は『それ』のためやろ?」

「今回は違うもん。今までの人はそうだったけど……」

まなみは今回は今までとは違うと言うが、僕は素直にその言葉を信用できない。なぜなら、他の男にもそのように言っている気がしてならないからだ。まなみは涙目になっていた。

これも作戦だろう……

涙を見せられると男は弱い。特に恋愛経験のない男など女の涙に対する免疫は皆無に等しい。僕は自分の心にこれはまなみの作戦だと言い聞かせ、心が揺れるのを抑えようとした。

この気持ち、いつしか感じたあの気持ちと似ている

それは以前、好きでもない人になぜこれほど胸が熱くなるのか?と感じたことがあった。その気持ちをまたもや感じている。これは思春期特有のものなのかもしれない。一応まなみは、初めての彼女だからこのように感じているのかもしれない。

「僕らはどうなるん?」

僕は相変わらずまなみに対しては悲劇のヒロインを演じている。

「別れたくない」

まなみは涙に混じった声でそう言い、僕を抱きしめた。

「僕も別れたくないけど……他の男おるのは嫌やわ」

「みんなと関係切る」

まなみの返事は早かった。しかし、その言葉を僕は信用しない。きっとその場しのぎの言葉に違いないからだ。僕はまなみを試した。

「皆んなのメアド消してや?」

「……」

まなみは声を発さなかった。

「ほら、結局無理やん」

「ごめん」

試さなくても答えはわかっていた。『それ』の奴隷が宝物のようなメールアドレスを消せるはずもないくらい。

ピコーン、、

まなみのスマホにメールが来た。その時、僕とまなみは一瞬目が合った。僕は机の上にあるスマホをとり、まなみのスマホを見た。

「今晩やろや」

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