ハッピーエンドをつかまえて!

沢谷 暖日

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あと、三日

過去最大の危機?

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 その後。
 私の恥ずかしさが限界が訪れ「なんか恥ずかしいねー」って、その場は逃れた。
 狭い路地裏を抜けて、普通に家へと帰り着き。
 「お風呂、先に入ってていーよー」と言って、私は自身の部屋へと戻った。
 そこまでは、別に良かった。
 ……しかし、そこからが問題だった。

「……どうする。どうするんだよ、私」

 私は、過去最大の危機に直面していた。
 それは『これからのリリィとの接し方について』。
 間違いなく、これは過去最大の危機。

 家に帰ったらやっぱり冷静になったので、先のことを思い返していたけど──。
 …………もう。なんで、あんな事を……。
 ずっとそんなテンションだった。

「あ~~~~!」

 枕に顔を埋めてうめく。

 何が『思い出の上書き(チュッ)』だよ……。
 痛すぎるし、めっちゃキスしたい人みたいじゃないか、私……。
 実際したかったのだろうけど……。
 いや、なんでしたいんだよ!
 そりゃ、リリィを悲しませないようにだよ!
 その方法がキスって自意識過剰すぎんだよ!
 自分のキスに、それ程の価値があるって思い込んでるわけだからさ!
 それくらい分かってるよ! あの時もそう思ってたよ!

「……いっそ、殺してくれ」

 リリィは、あの時嬉しそうにしてくれた。けどね。
 今の私と同じで、こんな風に後になってから『思い返してみると、ミリアのあの台詞は凄く恥ずかしかったなぁ』ってなってるかもしれない。
 やばいよ。やばいよ、私。
 キスしたら絶対、こんな複雑な心境になるって……わかっていたはずなのに。
 実際、こういう状況になってみると、もう生きたまま死んでいるみたいだ。
 生き霊だ。生き霊。(適当)

 あ。まって。
 私、『これからもずっと一緒にいて』みたいなこと言ってなかった?
 本心ではあったのだけど、これも色々とやばい。
 今日の私は本当にやばいしか言ってない。やばい。
 あの時は勢いに任せすぎて、今更ながら後悔している。
 まぁ、だけど? うまくいったから、別にいいよね?
 いや、言う程うまくいったのだろうか。
 分からない。分からなすぎる。
 もうちょっと、良い方法があったのかもしれない……。しかし。
 多分、あの時の自分にはそれ以外の方法は思いつかなかったし、できなかった。と思う。
 そう考えると、別にもうあんな恥ずかしい言葉を並べたのは正解だったのかもしれない、と結局ここに行き着く。

「……しょうがない……のか」

 しょうがないのか?
 けど。過ぎたことなんて、気にしたところで、だよね。
 それは、分かっている。
 分かっているけれども。
 ……気にするよ。気にしちゃうよ。
 これを気にするなって方が無理だよ……。
 どんな顔を合わせればいいのか。もう今日は寝ようか。
 だけど、このまま寝たら布団汚れるし……。
 汚れた服で布団に飛び込んでいる時点で、とっくに汚れてはいるんだけど。

 なんて思考を回していると。
 床を踏む音が聞こえてくる。
 その音は、どんどん私に近付いてきていた。

 ──コンコンコン。

 扉が叩かれる。
 その音に続く声。

「……ミ、ミリア。ただいま」

 足音の主はリリィだったようだ。
 若干上擦ったその声に、リリィも緊張をしていると察す。
 しかし。どう接すればいいのか分からない。
 と、とりあえず。すれ違う感じで、風呂に行こう。
 『お疲れー。じゃ、次、私がお風呂入るね』って言う風に。
 うん。それはとても自然だと思う。

 暖かい湯船に揺られて心を落ち着かせ。
 これからのことを考えるのも良いかもしれない。
 じゃあ。お湯を沸かし直すべきかな。それはそれで面倒臭いけど。
 そういえばリリィはお湯の沸かし方、分かったんだ。
 湯船に火の魔法石を入れるだけだけど。それがある場所も教えてなかったし。
 なんて事を思いながら、私はリリィにとりあえず返事をした。

「お、おかえりー」

 私の声も多分、上擦っている。
 言いながら理解し、私はベッドから身を起こした。
 ガチャリとドアが開かれる。

「ど、どうも」

 そこから姿を現したのは、当たり前だが風呂上がりのリリィ。
 湯気が彼女の身体を漂っており、濡れた髪がどこかいつもとは違う雰囲気。
 何というか。うん。こう言うものを色気と言うのだろうか。
 そして着衣しているのは、さっき貸した私のパジャマときた。
 ……なぜか、背徳感的な何かを感じてしまう。

「ミリア。……お風呂、いいよ」

 リリィは、明後日の方を見ながらそう言う。

 風呂の熱か、羞恥の熱か。
 どちらかは見当は付かないが、リリィの顔は真っ赤だ。
 けど、恥じらいを見せるその様子から、後者の方かなと思う。

「ど、どうもです」

 同じように、リリィを見らずに──見れずに、そう返事をした。

 やはり、私たちの間には気まずさが流れていた。
 ずっとこれから、こんな気まずい感じに関係が進むのかって。
 いやいや、それはダメに決まってる。

 だって、さっきキスしたのは私だし。
 リリィがこういう態度を取るのは当然のことで。
 だから私がリリィを引っ張らないといけないかもしれない。
 引っ張るという言い方は、いささか語弊があるような感じもするけど。

 うん。ここは私が頑張らないといけない場面なのかも。
 だからって何を言えばいいのかって、それは思い付かない。
 やはり。風呂に入りながら、それについては考えるとしよう。

 私はなけなしの勇気を振り絞り、リリィに向かって言い放つ。

「じゃ、じゃあ! 今度は私が風呂に入るね!」

 歩み出し、私はリリィの横を通り抜けようと。

「──ミリア」

 したのに!
 リリィから声がかけられた。
 どうでもいいけど、リリィから凄くいい匂いがしてきた。

「えっと……どうしたの?」

 聞き返す。
 私の目の前にいるリリィは、今度は目を逸らさずに私を見ていた。
 赤くなりつつも、どこか真剣さがその中にはあった。

「……あのさ。後で話したいことがある」
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