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第1章 強くてカワイイ魔法使い
第3話 天啓《スキル》『魔力操作』
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何が起こったのか飲み込めなかった。
普通、魔力は体内を一方通行的にしか進めない。
つまり、右手から魔法を放とうとすれば、魔力は右手に進んでゆく。
それがまさか、左手に、しかも別属性の魔力が放たれることは有り得ない。
けれど今、それが有り得てしまった。目の前の光景が、それを示している。
「クロエさん、めっちゃ助かった!」
背後から飛ばされるドロシーさんの声。
今度は彼女が、私の前に立つ。
「こっちは準備万端だよ」
ドロシーさんは前に立ってみるとやはり小柄で。
肩を抱いたら崩れてしまいなくらい華奢だったけれど。
彼女の背中は不思議と大きく見えて、思わず息を呑む。
「『アイスランス』」
右手を、身をよじらせるツノ兎に向け、氷の槍を放つ。
頭を貫かれたツノ兎は、断末魔を残すことなく絶命した。
ドロシーさんは「ふぅ」と溜息を吐くと、くるりと振り返り微笑んだ。
「いやー、どうなるかと思った。今度は私が助けられたね、クロエさん!」
「い、いや、そもそも私が森に来なかったら、こんなことにもなっていないし……。それにトドメを刺したのはドロシーさんだから、むしろ、ありがとう」
「いーよいーよ! にしても、今の凄かったね! 二属性の魔法を出してたでしょ?」
「うん。私にも何がなんだか……」
「うーん、クロエさんって確か、天啓《スキル》が分からないんだったよね」
頷くと、ドロシーさんは指をピンと立てた。
「なら、あれじゃない? 天啓《スキル》【魔力操作】」
「魔力操作……」
魔力操作。
なるほど、聞いたことがある。
体内の魔力の動きを操ることができる天啓《スキル》のはずだ。
確かにそれならば、両手から違う属性の魔法が放たれたことに合点がいく。
しかしそれは、かなり珍しい部類の天啓《スキル》だったはずじゃ?
でももし本当に、それが私の天啓《スキル》だとしたら──。
「なるほど……?」
「うん。やっぱりそう思う。違う属性の魔法が出るだなんて、それ以外に考えられないし」
「えっ、じゃあそれって、もしかして凄いことなのかな!?」
突然発覚した私の天啓《スキル》に、私は嬉々とした声をあげる。
「そりゃ凄いよ! 魔力操作系の天啓は珍しいし!」
「え、そうなんだ。じゃあ……うん、嬉しい」
ドロシーさんの言葉に、私は目を輝かせる。
ずっと疑問だった私の天啓《スキル》。それがまさか【魔力操作】だなんて。
…………いや、待てよ?
だからと言って、どうなのだろう。
私の魔法適正はFだ。それは変わらない。
なら、結局意味ないんじゃ?
ツノ兎に負傷させたのも、あれは運が強かっただけだし……。
と、そんな私の邪推を遮るように、ドロシーさんはポンと手を鳴らした。
「というか、早く森を抜けないとね。また魔物に襲われかねないし。それに、さっきクロエさんを追いかけるのに必死で、森を囲う柵を壊してきちゃったから。戻って修繕しないと」
……ん?
「……えっと。ドロシーさん、今、なんて?」
「え? また魔物に襲われかねないし、って」
「そのちょっとあと!」
「あぁ、だから、柵を壊してきちゃったからって。でも、町の大人に見つからなければ大丈夫じゃない? 第一、柵周りは魔除けの魔法が──」
「ごめん。その、魔除けの魔法は柵自体にかかってた、気がする」
私が言うと、彼女はニコニコ笑顔のまま、顔をみるみるうちに青くした。
私たちの間を沈黙が支配し、そして──。
──ゴーン! ゴーン!
警鐘の音が、沈黙を切り裂く。
距離と音色からして──学園の方からだ。
もしかして、魔物が学園に侵入した?
「や、やばいよ、これ! 早く戻ろう!」
「う、うん!」
普通、魔力は体内を一方通行的にしか進めない。
つまり、右手から魔法を放とうとすれば、魔力は右手に進んでゆく。
それがまさか、左手に、しかも別属性の魔力が放たれることは有り得ない。
けれど今、それが有り得てしまった。目の前の光景が、それを示している。
「クロエさん、めっちゃ助かった!」
背後から飛ばされるドロシーさんの声。
今度は彼女が、私の前に立つ。
「こっちは準備万端だよ」
ドロシーさんは前に立ってみるとやはり小柄で。
肩を抱いたら崩れてしまいなくらい華奢だったけれど。
彼女の背中は不思議と大きく見えて、思わず息を呑む。
「『アイスランス』」
右手を、身をよじらせるツノ兎に向け、氷の槍を放つ。
頭を貫かれたツノ兎は、断末魔を残すことなく絶命した。
ドロシーさんは「ふぅ」と溜息を吐くと、くるりと振り返り微笑んだ。
「いやー、どうなるかと思った。今度は私が助けられたね、クロエさん!」
「い、いや、そもそも私が森に来なかったら、こんなことにもなっていないし……。それにトドメを刺したのはドロシーさんだから、むしろ、ありがとう」
「いーよいーよ! にしても、今の凄かったね! 二属性の魔法を出してたでしょ?」
「うん。私にも何がなんだか……」
「うーん、クロエさんって確か、天啓《スキル》が分からないんだったよね」
頷くと、ドロシーさんは指をピンと立てた。
「なら、あれじゃない? 天啓《スキル》【魔力操作】」
「魔力操作……」
魔力操作。
なるほど、聞いたことがある。
体内の魔力の動きを操ることができる天啓《スキル》のはずだ。
確かにそれならば、両手から違う属性の魔法が放たれたことに合点がいく。
しかしそれは、かなり珍しい部類の天啓《スキル》だったはずじゃ?
でももし本当に、それが私の天啓《スキル》だとしたら──。
「なるほど……?」
「うん。やっぱりそう思う。違う属性の魔法が出るだなんて、それ以外に考えられないし」
「えっ、じゃあそれって、もしかして凄いことなのかな!?」
突然発覚した私の天啓《スキル》に、私は嬉々とした声をあげる。
「そりゃ凄いよ! 魔力操作系の天啓は珍しいし!」
「え、そうなんだ。じゃあ……うん、嬉しい」
ドロシーさんの言葉に、私は目を輝かせる。
ずっと疑問だった私の天啓《スキル》。それがまさか【魔力操作】だなんて。
…………いや、待てよ?
だからと言って、どうなのだろう。
私の魔法適正はFだ。それは変わらない。
なら、結局意味ないんじゃ?
ツノ兎に負傷させたのも、あれは運が強かっただけだし……。
と、そんな私の邪推を遮るように、ドロシーさんはポンと手を鳴らした。
「というか、早く森を抜けないとね。また魔物に襲われかねないし。それに、さっきクロエさんを追いかけるのに必死で、森を囲う柵を壊してきちゃったから。戻って修繕しないと」
……ん?
「……えっと。ドロシーさん、今、なんて?」
「え? また魔物に襲われかねないし、って」
「そのちょっとあと!」
「あぁ、だから、柵を壊してきちゃったからって。でも、町の大人に見つからなければ大丈夫じゃない? 第一、柵周りは魔除けの魔法が──」
「ごめん。その、魔除けの魔法は柵自体にかかってた、気がする」
私が言うと、彼女はニコニコ笑顔のまま、顔をみるみるうちに青くした。
私たちの間を沈黙が支配し、そして──。
──ゴーン! ゴーン!
警鐘の音が、沈黙を切り裂く。
距離と音色からして──学園の方からだ。
もしかして、魔物が学園に侵入した?
「や、やばいよ、これ! 早く戻ろう!」
「う、うん!」
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