魔法適正Fランクの落ちこぼれ魔法使い、Sランクの魔力蓄積量とスキル《魔力操作》で最強です!

沢谷 暖日

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第1章 強くてカワイイ魔法使い

幕間 強くてカワイイが最強なんだと気付いた日

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【ドロシー視点】

 例えば、世界に神様はいるのだろうか。
 と、そんなことを傷心的に考える、夜11時30分。

 私は今日、一体どれくらい泣いていたのだろう。
 時計を見て、時の経つ速さに思わず目を見開いた。
 咽び泣くだけで、こんなにも時間が経つだなんて。

「…………はぁ」

 ベッドから身を起こすと溜息が出た。
 もうすぐ、クロエは馬車に乗るのだろう。
 本当は、その隣に私がいるはずだったのに。
 なんて考えてしまうと、また涙が出てきそうで。
 しばらくはずっとこの調子だろうな、と、思ったその時。
 ──耳にうっすらと、何者かの声が届いた。

「……?」

 意識してみると一瞬で、外が何やら騒がしい。
 しかしわざわざ窓を覗く気にもなれない。
 どうでもいいか、としばらく呆けていると部屋のドアがコンコンとノックされた。
 私の返事を待たずにドアが開かれ、どこか焦った様子の母さんが入ってきた。
 怪訝に思いながらも、母さんは私の元へ近付き──。

「ドロシー。これからは、何があってもこの部屋を出ないように」

 淡々と、それでも力強くそう言った。
 何を今更と思うと同時に、誰かの走る音が部屋に近付いてきた。
 途端、母さんはハッとしたように、されど何も言わずにさっさと部屋を出る。
 結局何が起こっているかも分からずに、私はベッドに潜り直した。

「………」

 しかし、何が起こっているのだろう。
 窓の外が騒がしかったことを考えると、まさか泥棒?
 私の家は町で一番大きい。その可能性も──いや、それは無いか。
 大きいと言ったって、町の規模は小さめだ。その線は考えにくい。
 それに、忍び込むにしても微妙な時間帯だ。
 とは思うが、やけに騒がしい。
 じゃあ、もしかしたら本当に──。

 ──バン!

 と、私の不安に呼応するように部屋のドアが勢いよく開かれた。
 私はビクリと身体を跳ねさせ、ベッドを起き上がる。
 そして私は息つく暇も無く──息を詰まらせた。

「どうして……」

 形にならない小さな声が、口から漏れ出る。
 そこにはクロエがいた。そう、クロエがいたのだ。

 ──?

 一度理解してから、困惑を覚える。
 有り得ない。クロエがどうして、ここに。
 考えれば考えるほど疑問は増えていく一方で。
 何をしに、こんな、私の部屋までやってきたのだろう。
 警備員も相当数いるはずだ。何より母さんと鉢合わせになったはずだ。
 あの母さんが、人の説得を受け入れるような耳を持っているとは到底思えない。
 けれどクロエは、そんな私の疑問をよそに、横を通り抜けると窓を全開にした。
 吹き抜ける風と共にクロエはくるりと振り返り、私に手を差し出す。
 それらが意図することは、たった一つで。気付いた瞬間、目が熱を帯びた。

「ドロシー!」

 名前を呼ばれた。
 心臓がドクンと強い波を打った。
 だって──。

「さぁ、行こう! 王都に!」

 満月を背にして笑う彼女は、ただひたすらに可愛かったから。

「……うん!」

 考えるよりも先に、口が動いていた。
 けれどどんなに考えたって、私はここで頷いたと思う。
 母さんがいずれ追ってくる? 何も準備ができていない?
 そんな不安がどうでもよくなるくらい、私は目の前の幸せをつかみたくて。
 身を委ねるように、私はクロエに攫われた。

 胸の鼓動は鳴り止まない。
 耳に届く私の声は、ひどく夢見心地で。
 まるで吸い込まれるように、彼女に目を奪われたまま、私は思った。

 ──クロエってこんなに可愛いんだ、って。

 やはり世界に神様はいるのかもしれなかった。
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