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第2章 アレクシス王国、王都
第19話 魔王軍襲来?
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冒険者ギルド内は、昼前とは思えない活気に包まれていた。
賑やか。というより、騒がしいという感じで、さすが王都だと謎の感心をする。
建物内は広いが、年季のある木造の建築で、作りは至ってシンプルだった。
右にはカウンター、左には掲示板、奥にはさらに広そうな食堂。
喧騒は恐らくそこからだろう。酒の匂いも漂ってきてちょっと匂う。
それに混じって鼻を突く独特な匂い──これは、魔物の腐臭?
ともかく様々な匂いが入り乱れ、決して清潔感ある場所とは言えなかった。
まぁ、清潔感を求める方がおかしなことなんだろうけど。
ライセンスの発行は、カウンターの方で程なくして終了した。
発行代分を払い終えた私たちは近くのベンチに腰をかける。
【クロエ・サマラス】
冒険者ランク F
今はそれだけが書かれたライセンスのカード。
この冒険者ランクというのは、依頼の解決数などによって上がっていくらしい。
今はFだが、魔法適正などと同じで最高がSランク。このランクは、上がるにつれ、受注できるクエストが増えたり、王国の騎士団にスカウトされたり、冒険者ギルドでの待遇が良くなったりと色々とメリットがある、と受付のお姉さんが説明してくれた。
最強の魔法使いを目指す私にとっては必要なシステム……なんだと思う。
思うんだけど、なんだかそういうのはもう少し後でもいいかな。
「今度こそ、これからどうする?」
私はカードを手持ちのバッグにしまい、ドロシーに問うた。
「とりあえず泊まれるところを探す? 荷物も結構あるし」
「夜に宿を探すのも大変だもんね。そうしよ!」
「うん! ……あ、あと着替えが欲しい。私今、クロエの服借りてるから」
「そうだった。確かに私の服だと、ドロシーじゃちょっと大きいもんね」
私が何気なく言うと、ドロシーは不服そうにほっぺたを膨らませた。
「……あの。私のこと、ちっこいって言いたいの?」
ずっと華奢な体つきだとは思ってたけど、本人は実は気にしているのだろうか。
「あっ。えーっと……」
私がまごまごしていると「まぁ別に気にしてないよ」と少し気にしていそうな様子で言った後「それはそれとして」と申し訳なさげに続けた。
「ごめんね。服とかお金とか、用意が全くなくて」
「待ってそれは完全に私のせい! だから気にしないで」
「……ありがとう。クロエはやっぱり優しいね」
はにかむドロシーに「ありがと」と返す。
けどやっぱり私のせいなので、内心複雑である。
まぁドロシーがそう思ってくれてるならいいっか、と適当に納得し。
「じゃあこれから──」
そう口にした、その時。
──ゴーン! ゴーン!
耳をつん裂くような鐘の音が、私の二の句を遮った。
音はどうやら建物の上の方から聞こえている。ギルド内も戸惑いを見せていた。
今のは警鐘……だろうか? そう思った矢先、一人の女性職員が声高々に告げる。
「魔王軍と思われる魔物の群れが、王都へと接近中と通達がありました! 冒険者ランクC以上の冒険者は率先して向かってください! 数は早朝と変わらず少数だということで、場所も同じく南門の方です!」
職員の言葉に、ギルド内が再び騒めきだす。
そして食堂や、近くのテーブルから続々と人が外へ流れ出した。
「はぁまたかよ。もしかして魔王軍は暇なのか?」
「さっきの奇襲は4時間前だぞ?」
「つーかたまには大群で攻めてこいよ。ま、苦戦するよかマシだけどよ」
「ったく。勇者は早く魔王を滅ぼせよな」
愚痴と肩を並べながら外へゆく(恐らく)腕利きの冒険者たち。
早朝も奇襲された、って。王都は魔王軍に脅かされているのだろうか。
王女様の『いつ王国が滅ぼされるか分からない』という言葉が思い起こされる。
けれど冒険者の様子を見ると意外と余裕そうだ。
そこまで脅威ではないのだろうか。
「私たちも行った方がいいのかな?」
そんな中、ドロシーは不安げに問うた。
「大丈夫じゃないかな。反応を見るに、そんな大層な敵でも無さそうだし」
「だよね! よかったぁ~。戦闘は疲れるもん」
ほっ、と息を吐くドロシー。
4時間前の戦闘で死にかけたのに、また戦闘っていうのは私も嫌だ。
魔王軍となると、あの魔獣ほどではないとはいえそれなりに強敵なはずだろう。
だけど──。
「でもちょっと気になるよね。魔王軍って。……ドロシーは知ってる?」
「いや私もうっすらとしか。最近はお互いに干渉しあってないって思ってたのに」
「あ、じゃあ人間と魔王軍のどちらかが干渉したから、今、こういう状況ってこと?」
「多分、そうなんじゃないかな」
「そうだったんだ……。やっぱり魔王軍って、強い魔物が多いんだよね?」
「うーんどうなんだろ。確かに気になるね」
言うとドロシーは、何かを探すようにきょろきょろと首を回すと、てててとその場を駆け、掲示板に貼られた街の地図をじっくりと見つめてから、
「南門近くに展望台があるみたい! そこから見えないかな?」
※
ドロシーの提案には断る理由もなかったので、私たちは展望台に足を運んだ。
少し長めの階段を上りながら見る王都は、本当に大きな街で、圧巻である。
そして街をぐるりと囲う塀の奥からは、魔物の断末魔や魔法の飛ぶ音が聞こえていた。
どのような凶悪な敵がいるのだろうかと、塀の奥に目をやった──のだが。
「なに、これ……」
思わずそんな呟きが漏れるほど、魔王軍はボコボコにされていた。
魔王軍率いるのは、ゴブリンやオークの近距離攻撃の魔物ばかり。冒険者の魔法によってなすすべもなくやられ、数百体はいたように見えた魔物はみるみるうちに数を減らす。
本当に魔王軍だろうか、と思ったのだが魔王軍のものと思わしき旗を掲げている。
どうやら本当に魔王軍だったらしい。
にしてもボコボコである。
「これが魔王軍……」
ドロシーが哀れみのこもった声を呟く。
数を減らした魔王軍は、とうとう残り一体。
残された狼のような魔物は、流石に強そうだ。
私が一人で戦えば、まず歯が立たないような、そんな──。
「ガァァァァァ!!!!」
しかし、数の暴力により一瞬で消滅した。
「「…………」」
私たちの間には沈黙。
塀の外からも、歓喜の声は聞こえない。
ただ私の目には、淡々と街へ戻る冒険者が映る。
「……宿、探そっか」
「……うん」
私たちは、何も見なかったことにするように踵を返した。
どうやら魔王軍は弱いらしい。
賑やか。というより、騒がしいという感じで、さすが王都だと謎の感心をする。
建物内は広いが、年季のある木造の建築で、作りは至ってシンプルだった。
右にはカウンター、左には掲示板、奥にはさらに広そうな食堂。
喧騒は恐らくそこからだろう。酒の匂いも漂ってきてちょっと匂う。
それに混じって鼻を突く独特な匂い──これは、魔物の腐臭?
ともかく様々な匂いが入り乱れ、決して清潔感ある場所とは言えなかった。
まぁ、清潔感を求める方がおかしなことなんだろうけど。
ライセンスの発行は、カウンターの方で程なくして終了した。
発行代分を払い終えた私たちは近くのベンチに腰をかける。
【クロエ・サマラス】
冒険者ランク F
今はそれだけが書かれたライセンスのカード。
この冒険者ランクというのは、依頼の解決数などによって上がっていくらしい。
今はFだが、魔法適正などと同じで最高がSランク。このランクは、上がるにつれ、受注できるクエストが増えたり、王国の騎士団にスカウトされたり、冒険者ギルドでの待遇が良くなったりと色々とメリットがある、と受付のお姉さんが説明してくれた。
最強の魔法使いを目指す私にとっては必要なシステム……なんだと思う。
思うんだけど、なんだかそういうのはもう少し後でもいいかな。
「今度こそ、これからどうする?」
私はカードを手持ちのバッグにしまい、ドロシーに問うた。
「とりあえず泊まれるところを探す? 荷物も結構あるし」
「夜に宿を探すのも大変だもんね。そうしよ!」
「うん! ……あ、あと着替えが欲しい。私今、クロエの服借りてるから」
「そうだった。確かに私の服だと、ドロシーじゃちょっと大きいもんね」
私が何気なく言うと、ドロシーは不服そうにほっぺたを膨らませた。
「……あの。私のこと、ちっこいって言いたいの?」
ずっと華奢な体つきだとは思ってたけど、本人は実は気にしているのだろうか。
「あっ。えーっと……」
私がまごまごしていると「まぁ別に気にしてないよ」と少し気にしていそうな様子で言った後「それはそれとして」と申し訳なさげに続けた。
「ごめんね。服とかお金とか、用意が全くなくて」
「待ってそれは完全に私のせい! だから気にしないで」
「……ありがとう。クロエはやっぱり優しいね」
はにかむドロシーに「ありがと」と返す。
けどやっぱり私のせいなので、内心複雑である。
まぁドロシーがそう思ってくれてるならいいっか、と適当に納得し。
「じゃあこれから──」
そう口にした、その時。
──ゴーン! ゴーン!
耳をつん裂くような鐘の音が、私の二の句を遮った。
音はどうやら建物の上の方から聞こえている。ギルド内も戸惑いを見せていた。
今のは警鐘……だろうか? そう思った矢先、一人の女性職員が声高々に告げる。
「魔王軍と思われる魔物の群れが、王都へと接近中と通達がありました! 冒険者ランクC以上の冒険者は率先して向かってください! 数は早朝と変わらず少数だということで、場所も同じく南門の方です!」
職員の言葉に、ギルド内が再び騒めきだす。
そして食堂や、近くのテーブルから続々と人が外へ流れ出した。
「はぁまたかよ。もしかして魔王軍は暇なのか?」
「さっきの奇襲は4時間前だぞ?」
「つーかたまには大群で攻めてこいよ。ま、苦戦するよかマシだけどよ」
「ったく。勇者は早く魔王を滅ぼせよな」
愚痴と肩を並べながら外へゆく(恐らく)腕利きの冒険者たち。
早朝も奇襲された、って。王都は魔王軍に脅かされているのだろうか。
王女様の『いつ王国が滅ぼされるか分からない』という言葉が思い起こされる。
けれど冒険者の様子を見ると意外と余裕そうだ。
そこまで脅威ではないのだろうか。
「私たちも行った方がいいのかな?」
そんな中、ドロシーは不安げに問うた。
「大丈夫じゃないかな。反応を見るに、そんな大層な敵でも無さそうだし」
「だよね! よかったぁ~。戦闘は疲れるもん」
ほっ、と息を吐くドロシー。
4時間前の戦闘で死にかけたのに、また戦闘っていうのは私も嫌だ。
魔王軍となると、あの魔獣ほどではないとはいえそれなりに強敵なはずだろう。
だけど──。
「でもちょっと気になるよね。魔王軍って。……ドロシーは知ってる?」
「いや私もうっすらとしか。最近はお互いに干渉しあってないって思ってたのに」
「あ、じゃあ人間と魔王軍のどちらかが干渉したから、今、こういう状況ってこと?」
「多分、そうなんじゃないかな」
「そうだったんだ……。やっぱり魔王軍って、強い魔物が多いんだよね?」
「うーんどうなんだろ。確かに気になるね」
言うとドロシーは、何かを探すようにきょろきょろと首を回すと、てててとその場を駆け、掲示板に貼られた街の地図をじっくりと見つめてから、
「南門近くに展望台があるみたい! そこから見えないかな?」
※
ドロシーの提案には断る理由もなかったので、私たちは展望台に足を運んだ。
少し長めの階段を上りながら見る王都は、本当に大きな街で、圧巻である。
そして街をぐるりと囲う塀の奥からは、魔物の断末魔や魔法の飛ぶ音が聞こえていた。
どのような凶悪な敵がいるのだろうかと、塀の奥に目をやった──のだが。
「なに、これ……」
思わずそんな呟きが漏れるほど、魔王軍はボコボコにされていた。
魔王軍率いるのは、ゴブリンやオークの近距離攻撃の魔物ばかり。冒険者の魔法によってなすすべもなくやられ、数百体はいたように見えた魔物はみるみるうちに数を減らす。
本当に魔王軍だろうか、と思ったのだが魔王軍のものと思わしき旗を掲げている。
どうやら本当に魔王軍だったらしい。
にしてもボコボコである。
「これが魔王軍……」
ドロシーが哀れみのこもった声を呟く。
数を減らした魔王軍は、とうとう残り一体。
残された狼のような魔物は、流石に強そうだ。
私が一人で戦えば、まず歯が立たないような、そんな──。
「ガァァァァァ!!!!」
しかし、数の暴力により一瞬で消滅した。
「「…………」」
私たちの間には沈黙。
塀の外からも、歓喜の声は聞こえない。
ただ私の目には、淡々と街へ戻る冒険者が映る。
「……宿、探そっか」
「……うん」
私たちは、何も見なかったことにするように踵を返した。
どうやら魔王軍は弱いらしい。
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