魔法適正Fランクの落ちこぼれ魔法使い、Sランクの魔力蓄積量とスキル《魔力操作》で最強です!

沢谷 暖日

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第3章 そこにいるのは不穏な影

第29話 強さ

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 王都内は、阿鼻叫喚としていた。

「おい! やべーぞこれ!」
「俺、ワイバーンなんか倒せねーよ」
「勇者は何やってんだ! こんな時のための勇者だろうが!」

 街の中は逃げ惑う人で溢れていた。
 荷物を宿に置いた時間は、もしかすると無駄だったかもしれない。
 既にもう飛龍──ワイバーンが外壁を越え、街に侵入していたのである。
 ワイバーンが口から吐いた火が、建物を燃やし、その火は次第に広がっていく。
 思った以上にマズそうな状況だった。これは私たちも逃げるべきかもしれない。

「…………どうしよう、こんなの」

 ドロシーがぼやく。
 今まではごく少数の魔物、そして弱い魔物しか攻め込んでこなかった。
 それが急に、こんな凶悪な魔物が攻めてこんできて、外壁の奥には大量の魔物がいると聞く。
 もしかしてこれは、魔王軍の策略なのだろうか。
 リリアンが昨日『逃げて』と言ったのは、この状況を見越していたから?
 それなら納得がいく。
 同時に、どうして言われてすぐに逃げなかったのだとも後悔する。

「逃げようよ、クロエ! 命が大事だよ!」

 ワイバーンは街を飛び、壊し回っている。
 遠目から見ても巨大なソレは、いつこっちに飛んでくるのも分からなかった。

「うん……」

 逃げるべきだと思う。
 今回の敵は本当にヤバそうだ。
 せっかくここまで繋いだ命だし、大事にしていきたい。
 私はここまで、命を無駄にしすぎていた。

「でも」

 逃げ惑う人の中には冒険者も多くいた。
 現に、ワイバーンに立ち向かっている人はいない。
 恐らく腕利きの冒険者は、まだ準備等で到着できていないのだろう。
 このままだと本当に王都が壊されかねないのは、火を見るより明らかだった。

「でもさ」

 いや。私だって、どうしてこんな馬鹿なことを考えているのか分からない。
 一体私は、どのような親に似たというのだろう。

「私は『最強』になるために、王都にきたの」

 最強、なんてやっぱり子供みたいだと思う。

「そのための一歩は、可愛くなること。ドロシーも可愛いって言ってくれたから、今日は『最強』に一歩近付くことができた。そしてもう一つ私に必要なのは、強さ」

 そう。強さ。
 あのリリアンのような、そんな強さ。
 だけど私はまだ強くない。ドロシーの方が依然強いくらいだ。
 これじゃ最強とはまだ程遠いと思う。
 それでも。

「ここで、出来る限りをやる。そういうのが、強さなんだと思う」

 我ながら少し説教くさい。
 でも何か。急に私の中のスイッチが切り替わった。

「まぁ、危険になったら強い人に任せるけどね!」

 私が言い終えると、ドロシーは真剣な目で私を見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「……約束だから。ここで死んだら、全部が台無しなんだからね」
「分かってる! 私もだいぶ、戦闘方法を心得てきたと思ってるから!」
「……すごいね、クロエは。私だったら普通に逃げてたと思う」

 ドロシーは微笑を浮かべる。

「ドロシーも残ってくれるの?」
「もちろん。いざとなったらクロエを癒すこともできるから」
「ありがとう! やっぱりドロシーは優しいよ」
「本当は怖いんだよ? でも、こんな可愛いクロエに言われちゃ……」
「……ありがとう。なら、化粧が落ちないうちに、やれるだけをやってみよう」

 ワイバーンの距離は近かった。
 さぁ。戦闘開始だ。
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