85 / 86
エピローグ。されど始まり
私の彼女
しおりを挟む
人というのは。
結ばれた日のその後は、どうしているものなのだろうか。
キスをした後。
私はめちゃ恥ずかしくなって、お姉ちゃんと会話ができなかった。
それはおそらくお姉ちゃんもだろう。
いつもの帰り道を歩く。
外食に行った時も、水族館に行った時も、帰り道はいつもここだった。
街灯が道を照らし、辺りは虫が鳴いている。
そんな、同じようで違う道を歩きながら、私は思う。
お姉ちゃんは今、私の彼女だ。
彼女というのは、かなり親密な状態だよね?
つまり、一緒に風呂に入るのも別におかしくないし、一緒に毎日寝るのもおかしくない。
それに。彼女なんだから、お姉ちゃんじゃなくて『瑞樹』って呼んだ方がいいのかな。
それを意識するだけで、顔が熱くなる。
話しかけたいけれど、やっぱり無理だった。
結局すぐに家に着いた。
以心伝心するように、お互いに手を離して、私がドアを開ける。
鍵は空いていた。
お母さん達が帰ってきているからだろう。
「ただいま」
沈黙を破って、私は言う。
どんなに恥ずかしくても、ただいまは必要なことだから。
※※※※※※
結局。
お姉ちゃんとはあまり会話できなかった。
メッセージで、『今日は一緒に寝よう』と送られてきて。
『いいよー』と答えただけだった。
十時半。
ベッドに身体を横にする。
電気を消して私は待っている。
風呂から上がったばっかりで、髪がちょっぴし濡れていて、いい匂いも少々。
そういえばお姉ちゃん、リビングでお父さんとなにか話していた。
きっと、今日の朝のことだろう。
お父さんもなにか決心がついたのかな。
私のお陰だ。すごいすごい。
その話し合いが終わったら、多分こっちにくるのだろう。
うーん。
なんだろう。
今まで何回か一緒に寝るというのはあったはずなのに、なぜか凄く恥ずかしい。
そう思っていたら。
コンコンとノック音が聞こえた。
この感じも何回かあったなと思いながら、私はその音に返事をする。
「いいよー」
もしここで、お父さんとかお母さんが出てきたらどうだろうか。
けれど出てきたのは、やはりお姉ちゃんだった。
自分の枕を抱えて持っている。
俯きがちに、近寄ってくる。
暗くてよく分からないけれど、恥じらいの様子だった。
何を言わずに、私の横にやってくる。
「ど、どうも、お姉ちゃん」
見上げながら言った。
私も緊張しているらしい。
震えている。
「そ、そういえば、お父さんと何を話していたの?」
「い、いろいろ」
そう答えるお姉ちゃんの声も震えている。
数秒の間をあけ、続けた。
「……ただ。なんか日記みたいのを見せてくれた」
朝のことだと分かる。
「それで?」
「ごめんだって」
「それだけ?」
「うん」
これだけじゃ、お姉ちゃんとお父さんの関係がどうなったのか分からない。
だけどまぁ、大丈夫なんじゃないかなと思う。
お姉ちゃんがお父さんのことについて触れる時、その声には多少の嫌悪感のようなものがあったから。
今回はそれがなかった。
そうやって、頭の中で自分を納得させた。
だが、そこからは沈黙が続いた。
私が話しかけなければ、お姉ちゃんは話してくれないのだろうか。
ついに私は、このことのついて触れてみる。
「その。私たち、付き合ってるんだよね」
「……うん」
「彼女。なんだよね」
「うん」
「嬉しいね」
「うん」
どんどんと、お姉ちゃんの声のトーンが上がっていった。
「け、けど。前、私、振られた。こんなことになるとは思わなかった」
やはりな、と。
申し訳なさが押し寄せる。
「……あの時はごめんね。あれ以来、私の中でいろんな考えが交錯して。それで、その結果がこれなんだ」
「ふーん」
私は酷いけど。
それでも、お姉ちゃんは私の彼女になってくれた。
それはとても嬉しいことで──
「お姉ちゃん──んーん。瑞樹」
「は、はひっ」
「彼女になってくれて、ありがとう。大好きだよ」
──同時に、とてつもないありがたさを感じた。
「うん。私も」
私は身体を起こして、瑞樹に覆いかぶさった。
ほぼ。衝動的にだった。
「ねぇ。いい?」
顎に手を添えて、私は問う。
瑞樹は、目を瞑って軽く頷いた。
──口を近づける。
両頬に手を添えて。
外さないように、ゆっくりと。
柔らかい唇に、私の唇が重なる。
吐息が私の口内に張り付く。
舌を絡めてきた。
ザラザラしてる。
あの時は、こんなことされてない。
ただ、口をずっと合わせていただけ。
変態だなと思いながら、私も舌を出す。
ドラマでやっていたみたいに、やってみる。
けど。ちょっと歯があたる。
痛いけど、奥へ奥へと、私は舌を伸ばした。
瑞樹が声を漏らす。
「かわひぃ」
幸せな夜だった。
恋人同士って素晴らしい。
結ばれた日のその後は、どうしているものなのだろうか。
キスをした後。
私はめちゃ恥ずかしくなって、お姉ちゃんと会話ができなかった。
それはおそらくお姉ちゃんもだろう。
いつもの帰り道を歩く。
外食に行った時も、水族館に行った時も、帰り道はいつもここだった。
街灯が道を照らし、辺りは虫が鳴いている。
そんな、同じようで違う道を歩きながら、私は思う。
お姉ちゃんは今、私の彼女だ。
彼女というのは、かなり親密な状態だよね?
つまり、一緒に風呂に入るのも別におかしくないし、一緒に毎日寝るのもおかしくない。
それに。彼女なんだから、お姉ちゃんじゃなくて『瑞樹』って呼んだ方がいいのかな。
それを意識するだけで、顔が熱くなる。
話しかけたいけれど、やっぱり無理だった。
結局すぐに家に着いた。
以心伝心するように、お互いに手を離して、私がドアを開ける。
鍵は空いていた。
お母さん達が帰ってきているからだろう。
「ただいま」
沈黙を破って、私は言う。
どんなに恥ずかしくても、ただいまは必要なことだから。
※※※※※※
結局。
お姉ちゃんとはあまり会話できなかった。
メッセージで、『今日は一緒に寝よう』と送られてきて。
『いいよー』と答えただけだった。
十時半。
ベッドに身体を横にする。
電気を消して私は待っている。
風呂から上がったばっかりで、髪がちょっぴし濡れていて、いい匂いも少々。
そういえばお姉ちゃん、リビングでお父さんとなにか話していた。
きっと、今日の朝のことだろう。
お父さんもなにか決心がついたのかな。
私のお陰だ。すごいすごい。
その話し合いが終わったら、多分こっちにくるのだろう。
うーん。
なんだろう。
今まで何回か一緒に寝るというのはあったはずなのに、なぜか凄く恥ずかしい。
そう思っていたら。
コンコンとノック音が聞こえた。
この感じも何回かあったなと思いながら、私はその音に返事をする。
「いいよー」
もしここで、お父さんとかお母さんが出てきたらどうだろうか。
けれど出てきたのは、やはりお姉ちゃんだった。
自分の枕を抱えて持っている。
俯きがちに、近寄ってくる。
暗くてよく分からないけれど、恥じらいの様子だった。
何を言わずに、私の横にやってくる。
「ど、どうも、お姉ちゃん」
見上げながら言った。
私も緊張しているらしい。
震えている。
「そ、そういえば、お父さんと何を話していたの?」
「い、いろいろ」
そう答えるお姉ちゃんの声も震えている。
数秒の間をあけ、続けた。
「……ただ。なんか日記みたいのを見せてくれた」
朝のことだと分かる。
「それで?」
「ごめんだって」
「それだけ?」
「うん」
これだけじゃ、お姉ちゃんとお父さんの関係がどうなったのか分からない。
だけどまぁ、大丈夫なんじゃないかなと思う。
お姉ちゃんがお父さんのことについて触れる時、その声には多少の嫌悪感のようなものがあったから。
今回はそれがなかった。
そうやって、頭の中で自分を納得させた。
だが、そこからは沈黙が続いた。
私が話しかけなければ、お姉ちゃんは話してくれないのだろうか。
ついに私は、このことのついて触れてみる。
「その。私たち、付き合ってるんだよね」
「……うん」
「彼女。なんだよね」
「うん」
「嬉しいね」
「うん」
どんどんと、お姉ちゃんの声のトーンが上がっていった。
「け、けど。前、私、振られた。こんなことになるとは思わなかった」
やはりな、と。
申し訳なさが押し寄せる。
「……あの時はごめんね。あれ以来、私の中でいろんな考えが交錯して。それで、その結果がこれなんだ」
「ふーん」
私は酷いけど。
それでも、お姉ちゃんは私の彼女になってくれた。
それはとても嬉しいことで──
「お姉ちゃん──んーん。瑞樹」
「は、はひっ」
「彼女になってくれて、ありがとう。大好きだよ」
──同時に、とてつもないありがたさを感じた。
「うん。私も」
私は身体を起こして、瑞樹に覆いかぶさった。
ほぼ。衝動的にだった。
「ねぇ。いい?」
顎に手を添えて、私は問う。
瑞樹は、目を瞑って軽く頷いた。
──口を近づける。
両頬に手を添えて。
外さないように、ゆっくりと。
柔らかい唇に、私の唇が重なる。
吐息が私の口内に張り付く。
舌を絡めてきた。
ザラザラしてる。
あの時は、こんなことされてない。
ただ、口をずっと合わせていただけ。
変態だなと思いながら、私も舌を出す。
ドラマでやっていたみたいに、やってみる。
けど。ちょっと歯があたる。
痛いけど、奥へ奥へと、私は舌を伸ばした。
瑞樹が声を漏らす。
「かわひぃ」
幸せな夜だった。
恋人同士って素晴らしい。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる