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11 妹キャラに萌えてみよう
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「さあ、かかってきなさい! 下等な人間ども! まあ、あたしのゴレちゃんに勝てるとは思わないけどね」
森の魔女エリスは、強気な笑みを浮かべてそう言った。
ああ、ゴレちゃんって、ゴーレムのことなのね……。
二人は上級者だし、こういう場合はやっぱりエリスを手っ取り早く倒しちゃうのかな?
私は、隣で動揺のあまり手を震わせているルディアスに尋ねることにした。
「あのー、ルディアス。エリスとゴーレムは、どっちを先に倒すんで──」
「ゴーレムだ!!」
「即答!?」
私が言い終わる前に即答されてしまった……。
「……すぐに倒してしまうなんて、可哀想だろ? 彼女だって、生きているんだ」
ルディアスは真剣な面持ちでそう言いながら、私の両肩を掴んだ。
「い、生きてるっていうんですか……? ただのAIじゃ……」
「俺には、彼女たちNPCが意思を持って生きているように見える。『エリスを倒す』ということは、彼女を殺めなければならないということなんだ……」
「え……でも、今回倒してもまたこのダンジョンに入れば、ボスとして出てくるじゃないですか」
「そういう問題じゃない……。まったく、お前は何もわかってないな。今、この瞬間の彼女は、彼女しかいない。次に出てきた彼女は、それはもう別人なんだ」
「はぁ……?」
……何言ってんだこの人。
「俺は、この手で彼女を……エリスを殺さなければならないんだ……! その苦悩を、お前は理解できるのか!?」
「いや、知りませんよ!! なんでもいいから、早く倒してくれませんか!?」
とりあえず、彼の二次元キャラに対しての拘りというか情熱は伝わってくるけど、もう何言ってるのかわかんないです……。
「ルディはこのダンジョンに来ると、昔からこの調子なの。ちょっと変わってるでしょ? ふふっ」
……いやいやいや。ちょっとどころか、かなり変わってますから!
これでドン引きせずに笑って済ませられるリノも、実はかなりの天然なのかも知れない。
まあ……だからこそ、ルディアスに告白できたのかなぁ……。
「わかりました、わかりましたから! ボス倒さないと終わらないので、戦ってください……お願いします」
私は溜息をつきながらも、ルディアスに懇願した。
「そこまで言うなら、仕方ない……心苦しいが、やるか。嫁の頼みだからな」
「あまりにも真剣にエリスについて熱弁を振るうので、貴方の嫁だってこと忘れそうになりましたよ……」
ルディアスは、ゴーレムとエリスの元までゆっくり歩いて行くと彼らと対峙した。
両者、沈黙して暫時睨み合っていたが、やがてエリスの方から口を開いた。
「やっと、やる気になったみたいね! ……やっちゃえ、ゴレちゃん!」
エリスはそう叫ぶと、手を掲げてゴーレムに命令した。
その声に反応したゴーレムは大きな手を振り被り、ルディアスを攻撃する。
しかし、彼は造作もない様子でそれをかわすと、石でできたゴーレムの手を難なく剣で叩き砕いた。
あれだけ頑丈そうだったゴーレムの片腕は、一瞬のうちに失われてしまった。
「やったわね……よくも、あたしのゴレちゃんを!! もう、許さないんだから!!」
無残にも崩れ落ちていくゴーレムの片腕を見つめながら、エリスは逆上する。
一応怒っているのだが、容姿が可愛らしいためそれほど迫力はない。
しかし、このAIすごいなぁ……ちゃんと色々なパターンが用意されてるみたい。
ルディアスが言う通り、エリスが生きているように見えるっていうのも納得できる気がする。
「エリス……もう、無益な争いはやめよう! 話せば、きっとわかり合えるはずだ!」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「くっ……やはり、俺たちは戦わなければならない運命なのか……!」
ルディアスは、ゴーレムの肩の上で怒りまくっているエリスに向かって説得しだした。
というか……何やってんの、この人。エリスと会話してるんですけど……。
「全然、変わってないわね。ルディは、私と二人でここに来るとき、いつも、ああやってエリスと会話していたわ」
「え……!?」
……いつも!? ってことは、毎回あの茶番をやってるってこと?
ああ、なんか頭がクラクラしてきた……。
「まあ、彼女は色んな反応を返してくれるからね。会話してると結構、面白いのよ。それが楽しくて、やってるんじゃないかしら」
「へ、へぇー……優秀なAIですね」
いや、たぶん奴は本気ですよ……。本気でエリスを説得しようとしてますよ。
リノは前向きに捉えているみたいだけど、私はそのことに気付いていた。
「エリス……俺は必ず、お前を救ってみせる!」
ルディアスは、辛そうな表情をしながらもそう言うと、今度はゴーレムの足を攻撃した。
その瞬間、ゴーレムはバランスを崩し、大きな音を立てて転倒する。
上に乗っていたエリスは、慌ててゴーレムの肩から飛び降りると、ふわりと身軽な様子で草の上に着地した。
「何するのよ! ゴレちゃん、動かなくなっちゃったじゃない! バカバカバカぁー!! ……もー怒った!!」
「エリス!」
「うるさい!! あたしに近寄らないでよ!! これでも食らいなさい! アイススピア!」
エリスは杖を振りかざし、近寄ろうとするルディアスに向かって氷魔法を放つ。
すると、氷の槍がルディアスを目掛けて勢い良く飛んでいった。
「ぐっ……!」
わざとだかなんだか知らないけど、ルディアスはその魔法をまともに食らって体勢を崩した。
彼は乱れた金髪をかき上げ、その端正な顔を悲しそうに歪ませると、再びエリスに近寄っていった。
「……リノさん。あれって、回復したり手伝ったりしなくて大丈夫なんですか……?」
私はリノに向かって素朴な疑問を投げかけた。
「ああ、そうすると『手を出すな』って怒るのよ。だから、大体見てるだけ」
「そ、そうなんですか……」
ルディアスは、じりじりとエリスとの距離を詰めていった。
リノはリノで、そんなルディアスを楽しそうに眺めている。
ああ、やっぱりこの人も変わってるよ……。
そして、私はこの茶番劇をいつまで見せられなければならないんだろう。
「さあ、エリス。怖がることはない……俺と一緒に行こう」
そう言って微笑みながら、エリスに手を差し出すルディアス。
しかし、エリスはその手を振り払った。
「バッカじゃないの! あんたなんかと一緒に行くわけないでしょ!」
「……そうか。やはり……人間と魔族はわかり合えないのか……」
ルディアスはそう小さく呟くと、剣を両手で持って構えた。
だが、その途端エリスの態度が急変する。
媚びるような目つきで、彼を見つめ始めたのだ。
「ご、ごめんなさい……エリスが悪かったの。だから……見逃して? お兄ちゃん?」
なんだかエリスの様子がおかしい……ていうか、お兄ちゃん!?
「出たわ! エリスの『泣き落とし作戦』! ……これに惑わされて、うっかり死んでしまう男性プレイヤーも多いのよ」
「そ、そんなことまでするんですか……頭いいですね」
リノから説明を受けた私は、再びルディアスの方に視線を戻す。
……って、なんか俯いて肩を震わせてるし! 「お兄ちゃん」と呼ばれたのが余程、嬉しかったのだろうか。
なるほど、妹属性もいけるのね。心底どうでもいい情報だけど。
ああ、それにしても……彼についての無駄知識が何故かどんどん増えていく。
「ふふっ、かかったわね! 特大魔法をお見舞いしてあげるわ!!」
エリスはそう言うと、さっきより威力の強い魔法を発動させようとした──が、それよりも早くルディアスのスキルが発動する。
「アンリミテッドスラッシュ!!」
ルディアスの高速斬りが、特殊エフェクトとともに彼女の体を一瞬で切り裂く。
……一撃だった。エリスの体は華麗に宙を舞い、そのまま草の上に叩きつけられた。
「な……なんで、このあたしがぁ……」
エリスは悔しそうにそれだけ言うと、目を閉じて動かなくなった。
「エリス……今回もまた、お前を救えなかった」
そう寂しそうに呟くルディアスの顔を見ると──美しいエメラルド色の瞳から、大量の涙が流れていた。
……あのー。なんでこの人、泣いてるの?
森の魔女エリスは、強気な笑みを浮かべてそう言った。
ああ、ゴレちゃんって、ゴーレムのことなのね……。
二人は上級者だし、こういう場合はやっぱりエリスを手っ取り早く倒しちゃうのかな?
私は、隣で動揺のあまり手を震わせているルディアスに尋ねることにした。
「あのー、ルディアス。エリスとゴーレムは、どっちを先に倒すんで──」
「ゴーレムだ!!」
「即答!?」
私が言い終わる前に即答されてしまった……。
「……すぐに倒してしまうなんて、可哀想だろ? 彼女だって、生きているんだ」
ルディアスは真剣な面持ちでそう言いながら、私の両肩を掴んだ。
「い、生きてるっていうんですか……? ただのAIじゃ……」
「俺には、彼女たちNPCが意思を持って生きているように見える。『エリスを倒す』ということは、彼女を殺めなければならないということなんだ……」
「え……でも、今回倒してもまたこのダンジョンに入れば、ボスとして出てくるじゃないですか」
「そういう問題じゃない……。まったく、お前は何もわかってないな。今、この瞬間の彼女は、彼女しかいない。次に出てきた彼女は、それはもう別人なんだ」
「はぁ……?」
……何言ってんだこの人。
「俺は、この手で彼女を……エリスを殺さなければならないんだ……! その苦悩を、お前は理解できるのか!?」
「いや、知りませんよ!! なんでもいいから、早く倒してくれませんか!?」
とりあえず、彼の二次元キャラに対しての拘りというか情熱は伝わってくるけど、もう何言ってるのかわかんないです……。
「ルディはこのダンジョンに来ると、昔からこの調子なの。ちょっと変わってるでしょ? ふふっ」
……いやいやいや。ちょっとどころか、かなり変わってますから!
これでドン引きせずに笑って済ませられるリノも、実はかなりの天然なのかも知れない。
まあ……だからこそ、ルディアスに告白できたのかなぁ……。
「わかりました、わかりましたから! ボス倒さないと終わらないので、戦ってください……お願いします」
私は溜息をつきながらも、ルディアスに懇願した。
「そこまで言うなら、仕方ない……心苦しいが、やるか。嫁の頼みだからな」
「あまりにも真剣にエリスについて熱弁を振るうので、貴方の嫁だってこと忘れそうになりましたよ……」
ルディアスは、ゴーレムとエリスの元までゆっくり歩いて行くと彼らと対峙した。
両者、沈黙して暫時睨み合っていたが、やがてエリスの方から口を開いた。
「やっと、やる気になったみたいね! ……やっちゃえ、ゴレちゃん!」
エリスはそう叫ぶと、手を掲げてゴーレムに命令した。
その声に反応したゴーレムは大きな手を振り被り、ルディアスを攻撃する。
しかし、彼は造作もない様子でそれをかわすと、石でできたゴーレムの手を難なく剣で叩き砕いた。
あれだけ頑丈そうだったゴーレムの片腕は、一瞬のうちに失われてしまった。
「やったわね……よくも、あたしのゴレちゃんを!! もう、許さないんだから!!」
無残にも崩れ落ちていくゴーレムの片腕を見つめながら、エリスは逆上する。
一応怒っているのだが、容姿が可愛らしいためそれほど迫力はない。
しかし、このAIすごいなぁ……ちゃんと色々なパターンが用意されてるみたい。
ルディアスが言う通り、エリスが生きているように見えるっていうのも納得できる気がする。
「エリス……もう、無益な争いはやめよう! 話せば、きっとわかり合えるはずだ!」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「くっ……やはり、俺たちは戦わなければならない運命なのか……!」
ルディアスは、ゴーレムの肩の上で怒りまくっているエリスに向かって説得しだした。
というか……何やってんの、この人。エリスと会話してるんですけど……。
「全然、変わってないわね。ルディは、私と二人でここに来るとき、いつも、ああやってエリスと会話していたわ」
「え……!?」
……いつも!? ってことは、毎回あの茶番をやってるってこと?
ああ、なんか頭がクラクラしてきた……。
「まあ、彼女は色んな反応を返してくれるからね。会話してると結構、面白いのよ。それが楽しくて、やってるんじゃないかしら」
「へ、へぇー……優秀なAIですね」
いや、たぶん奴は本気ですよ……。本気でエリスを説得しようとしてますよ。
リノは前向きに捉えているみたいだけど、私はそのことに気付いていた。
「エリス……俺は必ず、お前を救ってみせる!」
ルディアスは、辛そうな表情をしながらもそう言うと、今度はゴーレムの足を攻撃した。
その瞬間、ゴーレムはバランスを崩し、大きな音を立てて転倒する。
上に乗っていたエリスは、慌ててゴーレムの肩から飛び降りると、ふわりと身軽な様子で草の上に着地した。
「何するのよ! ゴレちゃん、動かなくなっちゃったじゃない! バカバカバカぁー!! ……もー怒った!!」
「エリス!」
「うるさい!! あたしに近寄らないでよ!! これでも食らいなさい! アイススピア!」
エリスは杖を振りかざし、近寄ろうとするルディアスに向かって氷魔法を放つ。
すると、氷の槍がルディアスを目掛けて勢い良く飛んでいった。
「ぐっ……!」
わざとだかなんだか知らないけど、ルディアスはその魔法をまともに食らって体勢を崩した。
彼は乱れた金髪をかき上げ、その端正な顔を悲しそうに歪ませると、再びエリスに近寄っていった。
「……リノさん。あれって、回復したり手伝ったりしなくて大丈夫なんですか……?」
私はリノに向かって素朴な疑問を投げかけた。
「ああ、そうすると『手を出すな』って怒るのよ。だから、大体見てるだけ」
「そ、そうなんですか……」
ルディアスは、じりじりとエリスとの距離を詰めていった。
リノはリノで、そんなルディアスを楽しそうに眺めている。
ああ、やっぱりこの人も変わってるよ……。
そして、私はこの茶番劇をいつまで見せられなければならないんだろう。
「さあ、エリス。怖がることはない……俺と一緒に行こう」
そう言って微笑みながら、エリスに手を差し出すルディアス。
しかし、エリスはその手を振り払った。
「バッカじゃないの! あんたなんかと一緒に行くわけないでしょ!」
「……そうか。やはり……人間と魔族はわかり合えないのか……」
ルディアスはそう小さく呟くと、剣を両手で持って構えた。
だが、その途端エリスの態度が急変する。
媚びるような目つきで、彼を見つめ始めたのだ。
「ご、ごめんなさい……エリスが悪かったの。だから……見逃して? お兄ちゃん?」
なんだかエリスの様子がおかしい……ていうか、お兄ちゃん!?
「出たわ! エリスの『泣き落とし作戦』! ……これに惑わされて、うっかり死んでしまう男性プレイヤーも多いのよ」
「そ、そんなことまでするんですか……頭いいですね」
リノから説明を受けた私は、再びルディアスの方に視線を戻す。
……って、なんか俯いて肩を震わせてるし! 「お兄ちゃん」と呼ばれたのが余程、嬉しかったのだろうか。
なるほど、妹属性もいけるのね。心底どうでもいい情報だけど。
ああ、それにしても……彼についての無駄知識が何故かどんどん増えていく。
「ふふっ、かかったわね! 特大魔法をお見舞いしてあげるわ!!」
エリスはそう言うと、さっきより威力の強い魔法を発動させようとした──が、それよりも早くルディアスのスキルが発動する。
「アンリミテッドスラッシュ!!」
ルディアスの高速斬りが、特殊エフェクトとともに彼女の体を一瞬で切り裂く。
……一撃だった。エリスの体は華麗に宙を舞い、そのまま草の上に叩きつけられた。
「な……なんで、このあたしがぁ……」
エリスは悔しそうにそれだけ言うと、目を閉じて動かなくなった。
「エリス……今回もまた、お前を救えなかった」
そう寂しそうに呟くルディアスの顔を見ると──美しいエメラルド色の瞳から、大量の涙が流れていた。
……あのー。なんでこの人、泣いてるの?
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