恋する乙女は大和とゆく

黒花 歩

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訓練始まる

轟沈

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「全砲門、装填完了!」
砲術長の日野が報告する。その声にもう迷いはなかった。
機関故障を乗り越えたことで、艦内の士気は最高潮に達している。

「射角修正、距離一万一千八百! 目標、同じく!」
副長の鋭い声が響き、皆の背筋が一斉に伸びた。

「――撃て!」
私の号令と同時に、再び轟音が海を震わせる。
火炎と煙が立ちのぼり、主砲が唸りをあげる。

数秒後、標的艦のすぐ横で水柱が立った。今度は近い。
「いけっ……!」
誰かが思わず声をもらす。

次の瞬間、二発、三発と命中弾が標的をとらえ、古びた艦体は大きく揺れて水飛沫に包まれた。ついに轟沈だ。

「命中!」
日野の叫びに、艦橋は大きなどよめきに包まれる。

「やったぞ!」
「直撃だ!」
普段の整然とした空気が一気に崩れ、乗組員たちは子どものように歓声をあげる。日野はその場に崩れ落ち、碧衣に抱きしめられて泣いていた。

「……成功です」
副長が静かに報告する。その声には、普段の冷静さとは違う、抑えきれない喜びがにじんでいた。

そして彼女は、ふっと笑った。
「やればできるものですね」
いつも厳しい表情しか見せないその顔に浮かんだ笑みは、驚くほどやわらかく、温かかった。

私は思わず息をのむ。胸の奥が急に熱くなる。
「副長が、こんな顔をするなんて……」

ほんの一瞬のことだった。だが、その笑顔は私の心に強く焼きついた。
歓声の中で、誰にも聞かれないように私はそっとつぶやいた。
「……なんだかずるいですよ、副長」

その時、副長がこちらを振り向いた。
「艦長代理?」
えっ、聞こえてた!? 心臓が跳ねる。

「……勝鬨を挙げるべきかと」
「あ、あぁ、そうですね!」
慌てて返事をすると、副長が小さく口元で笑った。
ふぅ……驚かせないでください。

私は急いで艦内放送用のマイクを取った。
「大和乗組員諸君、我々はついに標的艦への砲撃に成功した!」

艦内全域から「おおおっ!」と大歓声が響き渡る。
胸に熱いものがこみあげ、艦長代理としての自信がぐっと湧き上がってきた。

「我々は機関の故障を乗り越え、射撃訓練を成功させた。これは我々にとって大きな一歩となる。――総員、勝鬨を挙げよ! 万歳三唱!」

「ばんざーい! ばんざーい!」
大きな声が艦を揺らし、艦内の団結は一層強くなった。

だが――誰も予想できなかった。
この訓練が、大和にとって、そして私たちにとってどれほど大きな意味を持つのかを。
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