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クリステル・晶子
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僕は奥の事務所スペースに飛び込むと、
「クマが来た」
と言った。スタッフの「晶子」さんは、ちょっと驚いたように顔を上げたが、ほとんど動揺は見せなかった。
そもそも、彼女が表情を変えることはまずない。
「どうしよう」
「大きいの? ヒグマ、ってことはないわよね?」
「いや小さい。このくらいの、テディベア。一人で歩いて店に入ってきた」
手で、まだ店にいるスティーブン・ダドリー氏の大きさを示してみせると、晶子さんは、納得したようにゆっくり瞬きをした。
「ああ、そっち」
「そっちの、て……晶子さん、知ってるクマ?」
「独り歩きのクマぬいぐるみに知り合いはいないわよ。」
「そ、そうなの?」
「でも、ふーん……テディベアか……」
実を言えば、晶子さんの顔見知りか何かだったりしないか、というのが頼みの綱だったのだが、淡い期待は脆くも崩れ去った。
しかし、晶子さんは相変わらず動じない。むしろ、楽しげな表情さえ見えた。
晶子さんはパソコンに向き直り、店内カメラの表示ウィンドウを拡大した。骨董店という仕事柄、店内の様子は防犯カメラでモニターしているのだ。
店ではスティーブン氏が、興味深そうにガラスケースの中に目を向けつつ、ちょこちょこと動いていた。
「そういや、店に一人残しちゃまずかったかな。」
「心配ないんじゃないの。ケースも防犯仕様だし……まあ、見た目通りに非力とは思わないほうが良いかもだけど……」
「あ、そうだ、見積もり出してくれって言われて、相場調べに来たんだった。晶子さん、ちょっと調べて」
「それは、自分でやって。」
「え」
晶子さんはぴょんと椅子から飛び降りると、軽やかな足取りで店に向かった。
「クマさんはこちらで見ましょう。」
「クマが来た」
と言った。スタッフの「晶子」さんは、ちょっと驚いたように顔を上げたが、ほとんど動揺は見せなかった。
そもそも、彼女が表情を変えることはまずない。
「どうしよう」
「大きいの? ヒグマ、ってことはないわよね?」
「いや小さい。このくらいの、テディベア。一人で歩いて店に入ってきた」
手で、まだ店にいるスティーブン・ダドリー氏の大きさを示してみせると、晶子さんは、納得したようにゆっくり瞬きをした。
「ああ、そっち」
「そっちの、て……晶子さん、知ってるクマ?」
「独り歩きのクマぬいぐるみに知り合いはいないわよ。」
「そ、そうなの?」
「でも、ふーん……テディベアか……」
実を言えば、晶子さんの顔見知りか何かだったりしないか、というのが頼みの綱だったのだが、淡い期待は脆くも崩れ去った。
しかし、晶子さんは相変わらず動じない。むしろ、楽しげな表情さえ見えた。
晶子さんはパソコンに向き直り、店内カメラの表示ウィンドウを拡大した。骨董店という仕事柄、店内の様子は防犯カメラでモニターしているのだ。
店ではスティーブン氏が、興味深そうにガラスケースの中に目を向けつつ、ちょこちょこと動いていた。
「そういや、店に一人残しちゃまずかったかな。」
「心配ないんじゃないの。ケースも防犯仕様だし……まあ、見た目通りに非力とは思わないほうが良いかもだけど……」
「あ、そうだ、見積もり出してくれって言われて、相場調べに来たんだった。晶子さん、ちょっと調べて」
「それは、自分でやって。」
「え」
晶子さんはぴょんと椅子から飛び降りると、軽やかな足取りで店に向かった。
「クマさんはこちらで見ましょう。」
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