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今日も便所に使ってやるからそれでアイツの精液を洗い流すんだな。
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美里が外の用事から帰ると、事務所の入口に島崎が紙袋をもって立っていた。
昨日ガレージに放り出した食料品を、島崎が集めてわざわざ美里が戻ってくるのを待っていたようであった。島崎何か言いたげな顔をして黙ってそれを美里に差し出す。美里はそれをひったくるようにして受け取り、何も言わず階段を駆け上がった。
「昨日は悪かった。藤堂さんがどうしてもと聞かないから。」
美里は面倒くさそうに振り返る。
階段の上から島崎を見下ろし中指を立ててから事務所の奥へ向かった。
◆
夜、仕事を早めに終えた美里は紙袋を抱えて地下への階段を降りた。
扉の前が一段と明るい。懐中電灯が立てかけられている。誰かいるようだ。
階段を下り切ると、扉の前に黒いパーカーにフードをかぶった男が座り込み、スマホを両手で横向きに持ちゲームをしていた。画面をなぞる指1本1本に入れ墨が入っていた。
男は明らかに美里の気配に気がついているのに顔もあげようとしなかった。
「てめぇ誰だよ、どけ。」
男の指がとまり、だるそうに顔を上げた。どこか見覚えのある顔で、彼の下唇に牙のようにピアスが2本嵌め込まれ、首筋にも指と同じような幾何学模様の入れ墨が入っていた。顔つきはどこか爬虫類を連想させ、趣味が悪いなと美里は顔を顰めた。
「残念だけど今は入れないね。二条さんが使ってるんで川名組長以外は来ても入れるなって言われてるんだ。たとえ美里君でも。」
よくみるとパーカーの下の身体は厚く、それなりに筋肉質であることがわかった。ドアに背をつけているため見えないがそこに武器を隠し持っている可能性もある。二条に逆らえる立場ではない美里であったが、そうでなくてもとても入れそうもない。
しまったと思った。できれば二条を霧野と2人きりの状態にしておきたくなかった。二条は霧野のことを自分の直属にさせたいほど気に入っており、霧野自身はおそらく気がついていなかっただろうが、こうなる前から彼をかなり性的な目で見ていた節があった。
男はにやにやと嫌な笑い方をして爪を噛んでいる。
「澤野……いや霧野さん、警察官だったとはなぁ。俺は軽犯罪系で何度も捕まってるし、途中からやってもないのに疑われてすぐ勾留、何言っても信じてくれないから、本当に嫌いなんだよな、警察。殺してやりてぇ。」
美里は男の顔を再度よく見て、彼が誰なのか思い出した。それは二条の直属の舎弟の間宮だった。
二条の配下は大雑把分けるとにふたつあった。一般部隊か諜報部隊かだ。
間宮はどちらかといえば諜報部隊で、暴力的な仕事もするが、主に情報収集や調査、ネット犯罪周りの仕事をまかされていた。二条の配下で特に諜報系の仕事を任せられている人間はこの組の誰よりも早く今回の件を知ったと言えるし、ある意味一番霧野についての情報を持っていた。
「ああそうかよ。何回も捕まるなんてお前がどんくせぇんだよ。」
間宮は美里の言葉には答えず言った。
「あいつ、いつ死んでくれるの?」
美里は間宮を冷めた目で見返した。彼がどういう処遇になっているかまでは聞いていないのかもしれない。
美里が黙っていると、間宮は大きく口を開けてあくびをした。
「俺としては早く死んで欲しいんだけどな。」
「……へぇ、そんなに警察が憎いわけ。」
「まぁそれもそうだけど、個人的に前から気にくわなかったんだよ。何となくわかるだろお前なら。」
間宮はそういうと再び顔を俯かせゲームに集中し始めた。これ以上話す気がないようだ。
美里はしばらくぼーっと間宮のタトゥーを眺めていた。確かに二条は自分の配下の人間よりも霧野に気をかけすぎていた。この男は嫉妬深い蛇のような男だ。たとえ能力が高かろうが、二条に心の底から気に入られることはないだろう。美里は諦めて階段に足をかけた。
「ソレ、食い物だろ?置いていけば?」
間宮を無視して紙袋を抱えたまま階段を昇った。
これでまるまる2日間まともに霧野に食事を与えていないことになった。明日にはなにか口に入れさせなければ。
◆
翌朝、美里は眠い目をこすりながら車を降りた。朝日のまぶしさに思わず舌打ちしてしまう。
時刻はまだ朝の7時である。町は若干霧がかり肌寒かった。
しかし、なるべく早くいかなければ、昨日のように鍵を持っている人間が「使っている」可能性があるのだ。
もしまだ間宮がいたらと思うと気が気ではなかったが、階段の下には分厚い扉があるだけであった。
胸をなでおろしながら階段を降り、地下室の扉を開く。
一見すると中には誰もおらず、むっとしたこもったにおいが微かに漂っている。
部屋の奥に毛布の塊のようなものが捨て置かれており、よく見るとそれは小さく上下していた。
近くまでよると、右足が毛布から出ており、足枷の下には擦れた痕が二重三重についていた。その足枷は昨日美里がはめ込んでいたものとは別の、より頑丈な造りのものであった。
荷物をテーブルの上に置くと、そこに半ば留め具の歪んだ手枷と足枷が置いてあるのが目に留まった。
それこそが昨日美里が使っていたものだとわかった。思わずそれを手に取ってしげしげと眺めた。どんな馬鹿力を出せばこんな風になるのだろうか。
再び霧野のもとに歩み寄り、ゆっくりと頭があると思われる方の毛布をめくった。
彼は眠っているようだったが、眉がしかめられ閉じられた瞼が時折動いており瞼の下で眼球が動いている。
ノンレム睡眠だ。悪夢でも見ているのだろうか。この状況そのものが悪夢だというのに、これ以上悪夢を見る必要があるのだろうか。口元にはこれもまた美里が嵌めこんだのとは違うシンプルな黒い棒状の口枷をはめられており、時々くぐもった声が漏れ出ていた。
美里は毛布をゆっくりとめくっていた手を思わず止めた。最初首に何か巻き付けられているのかと思ったが、それはどす黒く変色した皮膚の色であった。首筋に赤や青や黄色のひも状の痣や乾いた血が何重にも重なってついており、一番太いものは首輪のように深く刻まれ彼の首をほとんど一周していた。
美里は自分の呼吸が荒くなっていくのを感じた。頭の奥の方に何かを押し込まれたかのように頭痛がした。目を閉じ、呼吸を整えから毛布をめくりあげた。
幸い首ほどひどい痣はなく、胸をなでおろす。脇腹あたりにいくらか蹴られた痕がある程度であった。それも痛々しいものだが、首の物をみてからではもはや大したものに見えなかった。手首は後ろではなく前で拘束され、手の下ではペニスが膨張していた。朝勃ちしている。
尻からはしっぽのように一つだけローターの紐が飛び出ており、スイッチがつけたままになっている。二条がやったにしては可愛いものである。ここだけは。
美里は霧野の頭を抱えるようにし、口枷を外そうと手を触れた。同時に霧野の目が開いた。彼は最初何かを探すように目をあちこちに向けていたが、美里の顔を確認すると目に見えて落ち着き、目を伏せた。目の下には薄っすらとクマができていた。
口枷を外してやると霧野は吐くようにして口の中から黒い塊を床に吐き出し、激しく呼吸をした。
それはなにか丸められた布のようであった。
「なんだよこれ」
「……」
「何だって聞いてるんだよ」
霧野はバツの悪そうな顔で言った。
「……二条の下着」
美里は嫌悪感をあらわに、しかし手つきはそれをおそるおそるつまみ、部屋の隅に押しやった。
霧野は黙っていたが、下着は口に詰められる前に何度も二条と霧野自身の精液を上からかけられており、一晩中呼吸をするたびにすさまじい性の臭いが呼吸器官全体を満たしていた。
そのせいで何度か身体が勝手に反応し半勃起と嫌悪感による萎えの波を繰り返し、身体が気持ち悪くうずいてたまらなかった。
さらには刺激や圧迫というほどには物足りない微弱なローターの振動が体の中にあり続けるせいで、自分の内壁が収縮と弛緩を繰り返しているのを嫌でも感じられた。二条がその場にいないのがせめてもの救いだった。
「本当に最低だなお前ら。きもい遊び方しやがってまったく信じられねぇ。」
美里は霧野を膝立ちにさせ口を開かせた。呼吸に合わせて顫動する口内からすさまじい性の臭いがした。
「随分汚い穴になったな、今日も便所に使ってやるからそれでアイツの精液を洗い流すんだな。」
美里が半勃起したペニスを霧野の前につきつけると、霧野は嫌そうな顔をしながらの先を咥え込んだ。
「そんな浅く咥えたらこぼれると思うけどなぁ。こぼれた分も全部舐めとらせるからちゃんと喉で飲んだほうがいいぞ。」
霧野の口内に美里の尿が勢いよく噴射され、身体が驚いてむせかえり、口と鼻から尿が零れ出て顎をつたった。
「あーあー、言わんこっちゃないな」
美里はまだ半ば柔らかいペニスが無理やり霧野の喉奥まで押しむと、喉を掴んだ。
「ほら、この状態で喉を自分で動かせばちゃんと飲めるから。次からはこうするんだ。」
霧野が言われた通りに喉を一定の速さで動かすと口の中にたまらずに喉の奥を液体が流れて行き、むせかえることは無かったが、口の中から器官にかけて昨日以上に美里の尿の感覚で満たされた。
しかし、性の臭いの上に尿と美里の臭いが上書きされただけで、洗い流されるどころか気持ち悪さと性的な臭いが一層増しただけだった。舌を動かすと口の中で軽く美里の物が膨張し、先端が軽く口内をこすりあげた。
口の中をこすられると奇妙な感覚が下半身を襲い、身体の中に染み込んで抜けない匂いが一層強くなったように感じられた。匂いを吐き出そうとすると必然的に呼吸が荒くなり、荒くなった呼吸は身体を昂らせた。
霧野は自分の身体の反応がおかしいことに気が付き、軽く眩暈がし始めていた。
美里の手の中で喉が上下に蠢く。その度にざらついた皮膚の傷が手の平をこすった。美里は尿を全て出し切るとペニスをそのまましまい込んだ。そのまま視線を下げると驚いたように口を開けたままにしている霧野と目が合い、それから朝勃ちしたまま萎えることなく勃起し続けているペニスが目に入った。寧ろ更に反りあがっているのが見えた。美里は意地悪く笑った。
「お前何俺に小便飲まされて興奮してんだよ。マジで気持ち悪いな。」
「……ちがう、朝だから無意識に」
「じゃあ、早く抑え込めよ。」
そういわれて抑え込めるものでなく、膨張し熱くなったペニスはすでに痛みを持ち始めてさえいた。どうでもいいことを考えて抑え込もうとすればするほど身体や周囲に漂う淫猥な臭いを意識させられる。
「できねぇじゃねぇか、この変態野郎。そのままそこで自分でシコっていいぞ。見ててやるから。」
霧野は最初ためらっていたが、勃起が治まらずたまらないのと、いつまでも美里が威圧的に彼を見下し続けるのに負け、右手で自身の物をしごきはじめた。
手を動かすたびに右手と左手を繋ぐ鎖が擦れてカチカチと音を立てた。
すぐに肉棒の先端から透明な汁がこぼれおち、部屋に淫猥な湿った音が響きはじめた。
「なんだ?さらに大きくなったな。見られながらしてますます興奮してるのか?この変態が。」
「……うるせぇな」
霧野はしばらくの間悔しそうな顔で美里を見上げていたが、息が上がってくると視線を逸らして下を向いた。
「イキそうなのか?俺だったら知っている男の目の前でシコって抜くなんて恥ずかしくてとてもできないけどなぁ。」
何を言われても最早手が止められそうになかった。
美里はそう言って霧野の前から消え、戻ってきたときには昨日水を入れていた深めの皿を手にしていた。彼はそれを霧野の目の前に置いた。
「汚いゴミ精子ぶちまけてもいいが、ここに出せよ。床が汚れる。」
昨日床に出した精液を舐めとらされた記憶がフラッシュバックし、丁寧に皿の上に精液を吐き出した。普段の2倍程度の量が出ており、ゆっくりと嫌悪感に全身が満たされていく。
そのまま顔を上げると、顔面に生暖かいものがぶちまけられ、それが美里の精液だとわかるまで1秒もかからなかった。顔から垂れた精液が顔と喉を伝い、喉を伝うときには痛みを伴い、皿の中に落ちていった。
美里は呆然としている霧野の目の前から皿を回収し、テーブルの上に置いた。自分の出したものと霧野が出したものが皿の中で混ざり合い、どろどろと溶け合っていた。紙袋の中身をテーブルの上にひっくり返し、グラノーラの箱を開けると皿の上に中身をざっとそのままいれ、上から牛乳を流し込んだ。
皿をもって戻り霧野の目の前に置くと、彼は正座した状態で信じられないものを見るような目つきで美里を見据えていた。
「うれしいだろ、昨日から何も食べてなかったもんな。残さずきれいに食えよ。食わないなら明日から精液だけで栄養とってもらうぞ。」
霧野の返事を待たずに、彼の頭を押さえつけ皿に直接顔をつけさせた。しばらくそうしていると、霧野はあきらめたのか中身を口に入れ始めた。最初はいやいや食べていたが、空腹状態が続いた居たのも手伝い徐々に犬のような姿勢で必死に中身を舐めとるようになるのを見て、美里は頭の悪い犬に感じるような歪な愛おしさを覚えた。
昨日ガレージに放り出した食料品を、島崎が集めてわざわざ美里が戻ってくるのを待っていたようであった。島崎何か言いたげな顔をして黙ってそれを美里に差し出す。美里はそれをひったくるようにして受け取り、何も言わず階段を駆け上がった。
「昨日は悪かった。藤堂さんがどうしてもと聞かないから。」
美里は面倒くさそうに振り返る。
階段の上から島崎を見下ろし中指を立ててから事務所の奥へ向かった。
◆
夜、仕事を早めに終えた美里は紙袋を抱えて地下への階段を降りた。
扉の前が一段と明るい。懐中電灯が立てかけられている。誰かいるようだ。
階段を下り切ると、扉の前に黒いパーカーにフードをかぶった男が座り込み、スマホを両手で横向きに持ちゲームをしていた。画面をなぞる指1本1本に入れ墨が入っていた。
男は明らかに美里の気配に気がついているのに顔もあげようとしなかった。
「てめぇ誰だよ、どけ。」
男の指がとまり、だるそうに顔を上げた。どこか見覚えのある顔で、彼の下唇に牙のようにピアスが2本嵌め込まれ、首筋にも指と同じような幾何学模様の入れ墨が入っていた。顔つきはどこか爬虫類を連想させ、趣味が悪いなと美里は顔を顰めた。
「残念だけど今は入れないね。二条さんが使ってるんで川名組長以外は来ても入れるなって言われてるんだ。たとえ美里君でも。」
よくみるとパーカーの下の身体は厚く、それなりに筋肉質であることがわかった。ドアに背をつけているため見えないがそこに武器を隠し持っている可能性もある。二条に逆らえる立場ではない美里であったが、そうでなくてもとても入れそうもない。
しまったと思った。できれば二条を霧野と2人きりの状態にしておきたくなかった。二条は霧野のことを自分の直属にさせたいほど気に入っており、霧野自身はおそらく気がついていなかっただろうが、こうなる前から彼をかなり性的な目で見ていた節があった。
男はにやにやと嫌な笑い方をして爪を噛んでいる。
「澤野……いや霧野さん、警察官だったとはなぁ。俺は軽犯罪系で何度も捕まってるし、途中からやってもないのに疑われてすぐ勾留、何言っても信じてくれないから、本当に嫌いなんだよな、警察。殺してやりてぇ。」
美里は男の顔を再度よく見て、彼が誰なのか思い出した。それは二条の直属の舎弟の間宮だった。
二条の配下は大雑把分けるとにふたつあった。一般部隊か諜報部隊かだ。
間宮はどちらかといえば諜報部隊で、暴力的な仕事もするが、主に情報収集や調査、ネット犯罪周りの仕事をまかされていた。二条の配下で特に諜報系の仕事を任せられている人間はこの組の誰よりも早く今回の件を知ったと言えるし、ある意味一番霧野についての情報を持っていた。
「ああそうかよ。何回も捕まるなんてお前がどんくせぇんだよ。」
間宮は美里の言葉には答えず言った。
「あいつ、いつ死んでくれるの?」
美里は間宮を冷めた目で見返した。彼がどういう処遇になっているかまでは聞いていないのかもしれない。
美里が黙っていると、間宮は大きく口を開けてあくびをした。
「俺としては早く死んで欲しいんだけどな。」
「……へぇ、そんなに警察が憎いわけ。」
「まぁそれもそうだけど、個人的に前から気にくわなかったんだよ。何となくわかるだろお前なら。」
間宮はそういうと再び顔を俯かせゲームに集中し始めた。これ以上話す気がないようだ。
美里はしばらくぼーっと間宮のタトゥーを眺めていた。確かに二条は自分の配下の人間よりも霧野に気をかけすぎていた。この男は嫉妬深い蛇のような男だ。たとえ能力が高かろうが、二条に心の底から気に入られることはないだろう。美里は諦めて階段に足をかけた。
「ソレ、食い物だろ?置いていけば?」
間宮を無視して紙袋を抱えたまま階段を昇った。
これでまるまる2日間まともに霧野に食事を与えていないことになった。明日にはなにか口に入れさせなければ。
◆
翌朝、美里は眠い目をこすりながら車を降りた。朝日のまぶしさに思わず舌打ちしてしまう。
時刻はまだ朝の7時である。町は若干霧がかり肌寒かった。
しかし、なるべく早くいかなければ、昨日のように鍵を持っている人間が「使っている」可能性があるのだ。
もしまだ間宮がいたらと思うと気が気ではなかったが、階段の下には分厚い扉があるだけであった。
胸をなでおろしながら階段を降り、地下室の扉を開く。
一見すると中には誰もおらず、むっとしたこもったにおいが微かに漂っている。
部屋の奥に毛布の塊のようなものが捨て置かれており、よく見るとそれは小さく上下していた。
近くまでよると、右足が毛布から出ており、足枷の下には擦れた痕が二重三重についていた。その足枷は昨日美里がはめ込んでいたものとは別の、より頑丈な造りのものであった。
荷物をテーブルの上に置くと、そこに半ば留め具の歪んだ手枷と足枷が置いてあるのが目に留まった。
それこそが昨日美里が使っていたものだとわかった。思わずそれを手に取ってしげしげと眺めた。どんな馬鹿力を出せばこんな風になるのだろうか。
再び霧野のもとに歩み寄り、ゆっくりと頭があると思われる方の毛布をめくった。
彼は眠っているようだったが、眉がしかめられ閉じられた瞼が時折動いており瞼の下で眼球が動いている。
ノンレム睡眠だ。悪夢でも見ているのだろうか。この状況そのものが悪夢だというのに、これ以上悪夢を見る必要があるのだろうか。口元にはこれもまた美里が嵌めこんだのとは違うシンプルな黒い棒状の口枷をはめられており、時々くぐもった声が漏れ出ていた。
美里は毛布をゆっくりとめくっていた手を思わず止めた。最初首に何か巻き付けられているのかと思ったが、それはどす黒く変色した皮膚の色であった。首筋に赤や青や黄色のひも状の痣や乾いた血が何重にも重なってついており、一番太いものは首輪のように深く刻まれ彼の首をほとんど一周していた。
美里は自分の呼吸が荒くなっていくのを感じた。頭の奥の方に何かを押し込まれたかのように頭痛がした。目を閉じ、呼吸を整えから毛布をめくりあげた。
幸い首ほどひどい痣はなく、胸をなでおろす。脇腹あたりにいくらか蹴られた痕がある程度であった。それも痛々しいものだが、首の物をみてからではもはや大したものに見えなかった。手首は後ろではなく前で拘束され、手の下ではペニスが膨張していた。朝勃ちしている。
尻からはしっぽのように一つだけローターの紐が飛び出ており、スイッチがつけたままになっている。二条がやったにしては可愛いものである。ここだけは。
美里は霧野の頭を抱えるようにし、口枷を外そうと手を触れた。同時に霧野の目が開いた。彼は最初何かを探すように目をあちこちに向けていたが、美里の顔を確認すると目に見えて落ち着き、目を伏せた。目の下には薄っすらとクマができていた。
口枷を外してやると霧野は吐くようにして口の中から黒い塊を床に吐き出し、激しく呼吸をした。
それはなにか丸められた布のようであった。
「なんだよこれ」
「……」
「何だって聞いてるんだよ」
霧野はバツの悪そうな顔で言った。
「……二条の下着」
美里は嫌悪感をあらわに、しかし手つきはそれをおそるおそるつまみ、部屋の隅に押しやった。
霧野は黙っていたが、下着は口に詰められる前に何度も二条と霧野自身の精液を上からかけられており、一晩中呼吸をするたびにすさまじい性の臭いが呼吸器官全体を満たしていた。
そのせいで何度か身体が勝手に反応し半勃起と嫌悪感による萎えの波を繰り返し、身体が気持ち悪くうずいてたまらなかった。
さらには刺激や圧迫というほどには物足りない微弱なローターの振動が体の中にあり続けるせいで、自分の内壁が収縮と弛緩を繰り返しているのを嫌でも感じられた。二条がその場にいないのがせめてもの救いだった。
「本当に最低だなお前ら。きもい遊び方しやがってまったく信じられねぇ。」
美里は霧野を膝立ちにさせ口を開かせた。呼吸に合わせて顫動する口内からすさまじい性の臭いがした。
「随分汚い穴になったな、今日も便所に使ってやるからそれでアイツの精液を洗い流すんだな。」
美里が半勃起したペニスを霧野の前につきつけると、霧野は嫌そうな顔をしながらの先を咥え込んだ。
「そんな浅く咥えたらこぼれると思うけどなぁ。こぼれた分も全部舐めとらせるからちゃんと喉で飲んだほうがいいぞ。」
霧野の口内に美里の尿が勢いよく噴射され、身体が驚いてむせかえり、口と鼻から尿が零れ出て顎をつたった。
「あーあー、言わんこっちゃないな」
美里はまだ半ば柔らかいペニスが無理やり霧野の喉奥まで押しむと、喉を掴んだ。
「ほら、この状態で喉を自分で動かせばちゃんと飲めるから。次からはこうするんだ。」
霧野が言われた通りに喉を一定の速さで動かすと口の中にたまらずに喉の奥を液体が流れて行き、むせかえることは無かったが、口の中から器官にかけて昨日以上に美里の尿の感覚で満たされた。
しかし、性の臭いの上に尿と美里の臭いが上書きされただけで、洗い流されるどころか気持ち悪さと性的な臭いが一層増しただけだった。舌を動かすと口の中で軽く美里の物が膨張し、先端が軽く口内をこすりあげた。
口の中をこすられると奇妙な感覚が下半身を襲い、身体の中に染み込んで抜けない匂いが一層強くなったように感じられた。匂いを吐き出そうとすると必然的に呼吸が荒くなり、荒くなった呼吸は身体を昂らせた。
霧野は自分の身体の反応がおかしいことに気が付き、軽く眩暈がし始めていた。
美里の手の中で喉が上下に蠢く。その度にざらついた皮膚の傷が手の平をこすった。美里は尿を全て出し切るとペニスをそのまましまい込んだ。そのまま視線を下げると驚いたように口を開けたままにしている霧野と目が合い、それから朝勃ちしたまま萎えることなく勃起し続けているペニスが目に入った。寧ろ更に反りあがっているのが見えた。美里は意地悪く笑った。
「お前何俺に小便飲まされて興奮してんだよ。マジで気持ち悪いな。」
「……ちがう、朝だから無意識に」
「じゃあ、早く抑え込めよ。」
そういわれて抑え込めるものでなく、膨張し熱くなったペニスはすでに痛みを持ち始めてさえいた。どうでもいいことを考えて抑え込もうとすればするほど身体や周囲に漂う淫猥な臭いを意識させられる。
「できねぇじゃねぇか、この変態野郎。そのままそこで自分でシコっていいぞ。見ててやるから。」
霧野は最初ためらっていたが、勃起が治まらずたまらないのと、いつまでも美里が威圧的に彼を見下し続けるのに負け、右手で自身の物をしごきはじめた。
手を動かすたびに右手と左手を繋ぐ鎖が擦れてカチカチと音を立てた。
すぐに肉棒の先端から透明な汁がこぼれおち、部屋に淫猥な湿った音が響きはじめた。
「なんだ?さらに大きくなったな。見られながらしてますます興奮してるのか?この変態が。」
「……うるせぇな」
霧野はしばらくの間悔しそうな顔で美里を見上げていたが、息が上がってくると視線を逸らして下を向いた。
「イキそうなのか?俺だったら知っている男の目の前でシコって抜くなんて恥ずかしくてとてもできないけどなぁ。」
何を言われても最早手が止められそうになかった。
美里はそう言って霧野の前から消え、戻ってきたときには昨日水を入れていた深めの皿を手にしていた。彼はそれを霧野の目の前に置いた。
「汚いゴミ精子ぶちまけてもいいが、ここに出せよ。床が汚れる。」
昨日床に出した精液を舐めとらされた記憶がフラッシュバックし、丁寧に皿の上に精液を吐き出した。普段の2倍程度の量が出ており、ゆっくりと嫌悪感に全身が満たされていく。
そのまま顔を上げると、顔面に生暖かいものがぶちまけられ、それが美里の精液だとわかるまで1秒もかからなかった。顔から垂れた精液が顔と喉を伝い、喉を伝うときには痛みを伴い、皿の中に落ちていった。
美里は呆然としている霧野の目の前から皿を回収し、テーブルの上に置いた。自分の出したものと霧野が出したものが皿の中で混ざり合い、どろどろと溶け合っていた。紙袋の中身をテーブルの上にひっくり返し、グラノーラの箱を開けると皿の上に中身をざっとそのままいれ、上から牛乳を流し込んだ。
皿をもって戻り霧野の目の前に置くと、彼は正座した状態で信じられないものを見るような目つきで美里を見据えていた。
「うれしいだろ、昨日から何も食べてなかったもんな。残さずきれいに食えよ。食わないなら明日から精液だけで栄養とってもらうぞ。」
霧野の返事を待たずに、彼の頭を押さえつけ皿に直接顔をつけさせた。しばらくそうしていると、霧野はあきらめたのか中身を口に入れ始めた。最初はいやいや食べていたが、空腹状態が続いた居たのも手伝い徐々に犬のような姿勢で必死に中身を舐めとるようになるのを見て、美里は頭の悪い犬に感じるような歪な愛おしさを覚えた。
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