腹ペコ海香のひとりぼっち料理帖

黒猫

文字の大きさ
2 / 15
1品目 腹ペコ手作りギョーザ

ギョーザ爆弾とイケメン叔父さん

しおりを挟む
海香うみかーちゃん、クラブラやろうよ」
「んんー、まあ、ちょっとだけならいいですよ」

 叔母さんには、顔色悪いよとちょっと心配されちゃいました。合間の休憩時間には、お茶ではなくオレンジジュースが出たのでラッキーでした。一緒に頂いたせんべいは、残さず全部むさぼりました。それでちょっと潤っちゃいましたので、イトコの挑戦を受けちゃいました。クラブラというのは、スマブラもどきの格闘ゲームのことです。
 ちなみに、この家では、「海香ちゃんも一緒に晩ごはん食べていきなさい」とはなりません。六時開始のわたしの授業に合わせて、なんと五時台に済ませてるのです。早すぎです。あとわたしは、山育ちなのに海香うみかです。

「ギョーザ爆弾……食らえ……ギョーザ爆弾……食らえ……」
「海姉ぇ、しつこいって!」

 わたしのメインキャラはチン・ジャンファンです。チャイニーズレストランのコック長です。丸っこい体型で耐久が高いわりにスピードもあります。手数で言ったらお玉ナックルですし、中華鍋ファイヤーは当てやすくて相手の動きを鈍らせられますが、やっぱり今日の気分はギョーザ爆弾なんです……理由はわかりますよね……。

「ギョーザ爆弾……食らいたい……ギョーザ爆弾……食べさせて……」
「だからしつこいってーの!」

 奏太かなたは文句たらたら言うくせに、全然私のギョーザを避けきれてません。というか、避けきれてないから文句を言うんですね。あ、奏太というのはイトコのことです。オレンジジュースの効果は、とっくに切れちゃいました。わたしは腹ペコでちょっとイライラしてます。奏太の使ってる緑色のカエルみたいなトカゲの顔が、いつもより憎たらしく見えてきちゃいました。いつもより多めにギョーザをぶつけまくります。お腹は満たされません。とりあえず、これ(クラブラ)が終わったらスーパーに行くことにします。帰り道なのでちょうどいいです。

「帰ったぞー。お、海ちゃんいらっしゃい。なんだ、クラブラやってるのか。よしちょっと俺にもやらせてくれ」
「あっあっ。叔父さんお邪魔してます……」

 叔父さんが帰ってきました。そして参戦してきました。かっこいいんですよね叔父さん。そして強いです。剣と盾を持った金髪のイケメンキャラに、わたしのギョーザは当たりません。もちろん奏太のトカゲなんて手も足も出ません。二人がかりでもコテンパンです。腹ペコなのを忘れるくらい、イケメンの叔父さんを倒そうと夢中になっちゃいました。あれ、叔父さんは晩ごはんはいいのでしょうか?

「俺は外で食ってきたから」
「あっあっ。そうなんですか……」

 そうですね、もう九時過ぎてますし、何のお仕事してるのか知らないのですが、そうなんですね。って、もう九時です! そろそろいつものスーパー行かないと、閉まっちゃいます!

「お、海ちゃん帰るの? じゃあ送ってくよ」
「えっえっ。いいですいいです」
「ほらもう外寒いし」
「あっあっ。わたし今日自転車なので……」
「一緒に積めるから平気だよ。いつもそうしてるよね?」
「はっはい……」

 数分後には、わたしは叔父さんのアルファードに乗ってました。叔母さんから頂戴した3000円を握りしめて。あと、どういうわけか、白菜も丸々一個もらっちゃいました。これは嬉しいです!

「海ちゃん今日の髪型いいじゃん、それ。サイドテールっての?」
「あっあっ」
「大人っぽいってかさ。いいよ。可愛い」
「あっあっ」

 車に乗ったとたん急に何を言い出すんですかこの人は! 叔母さんに怒られます! 大丈夫なのでしょうか! 叔母さんは怒ったらきっと恐いです! 首を絞められちゃいます! 女子プロレスラーみたいな体をしてますし。叔母さんは姉さん女房なんです。
 ちなみに残念ながら、奏太は叔母さん似です。なんて言ったら叔母さんに失礼です、わたしもぶっ飛ばされちゃいます!

「そういや海ちゃんさ、好きな食べ物って何かある?」
「あっあっ」

 こ、今度はなんですか! もしかして「今から一緒に食事でもどう?」ってやつですか!? い、いや、それは無いですね、さっき食べてきたって言ってましたし。それに、送っていくだけなのに遅くなったら、叔母さんに何と思われるでしょうか。というかその質問! ここでそれが来るとは思いませんでした! しまった! いやまだ大丈夫です。よし、言いますよ!

「かっ、かっ……」
「俺さ、ギョーザが好きなんだよね。さっきも部下たちとラーメン食ってきたんだけどさ、俺ん中じゃ、ギョーザがメインだったね」
「そっそっ……」

 そうなんですか……。
 ちょうどその時、餃子の王将の看板が車の窓から見えました。窓から見えて、見る見る後ろへ過ぎ去っていっちゃいました。あ、そういえば! 行くつもりでいたスーパーはもっと前に通り過ぎてました! 今さら戻ってくださいなんて言えません……!

「ぎゃひー」
「なんだ? どうした?」
「いっいえ、なななんでも……」

 ドナドナドーナードーナー。そんな歌が頭の中に流れました。かわいそうなわたしを載せた叔父さんのアルフォート号がわたしの家に着く頃には、九時半を過ぎてました。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...