3 / 15
1品目 腹ペコ手作りギョーザ
走れ海香!
しおりを挟む
「ありがとうございましたー」
「気をつけて帰るんだぞー」
ここ、わたしのアパートの目の前ですけど。
叔父さんのアルフォート号が見えなくなるまで手を振ります。
さて……よし、ここからが正念場です。すでにわたしの心は決まってます。
今夜はギョーザにします!
ギョーザを自分で作ります!
なぜだか知りませんがそんな気分になってました。叔母さんにもらった白菜がわたしの背中を後押ししてくれてます。ちょうどギョーザに使いますからね、白菜!
そうと決まればこっちのものです。腹ペコですが勇気が湧いてきました。これでも料理は得意なんです。ひと通り揃ってますからね、調味料!
ちなみに言っておきますと、わたしはコンビニごはんで適当に済まそうなんて、元々全然考えてません。なんだか負けた気がしますから。ましてや、餃子の王将なんてもってのほかです。こんな遅い時間に花の女子大生がひとりで王将なんて、大事なものを失くしちゃいそうな気がしますから。
なので! さあ、急ぎますよ! わたしのいつものあのスーパーへ! 閉店は十時です! 今から行って着く頃には、残り時間は十分少々でしょうけど、買うものは決まってますから十分です! 頑張れます! わたしは、腹ペコに報いなければなりません! いまはただその一事です! 走れ! わたし!
行って帰ってきた道をまた自転車をこいで行きながら、ふとわたしは考えました。この向かう先で待っているのは、セリヌンティウスさんとかではなくて、食材です。そのためにわたしは走っています。わたしには彼氏なんていません。思い起こせば、中学生のとき、それに近い人がいたことがありました。部活を引退してから、なんとなくその人と、毎日ふたりで一緒に下校するようになりました。かといってそれで何をした、とかそういう話ではないんですけど……。
すっごい前の話ですね。ああ、あの時は、何年後かに自分がこうして夜遅くに腹ペコのために疾走してるなんて、全然想像もつかなかったな……ぎゃひー……。
そんな苦悶もありましたが、十五分後、わたしは愛しのいつものスーパーにたどり着きました。間に合いました。夜は自転車のライトをちゃんと点けましょうね。
まずは野菜コーナーです。白菜がもうありますから、あとは長ねぎだけでいいですね。わたしの狙いはそれだけです。他の野菜には目もくれません。こっちは腹ペコなんです。それくらい追い詰められているんです。
次はお肉のコーナーです。豚! の挽き肉! です! わたしの狙いはそれだけです。ちょっとだけトンカツ用の分厚いロース肉に目がくらみました。でもうちには今、お米が無いので我慢です。また会いましょう! ロース肉よ!
そしてだいたい、こういう挽き肉コーナーにはギョーザの皮も置いてたりします。ありますね。むむむ。小麦粉コーナーも見てみます。むむむ。
調理時間を短縮するのならギョーザの皮を買っちゃう一択ですが、コスパを考えると小麦粉のほうが全然割安なんですよね。それに、皮はどうせ買っても全部は使い切らないでしょうし。あとうちには今、お米が無いのでごはんも無いですし。それなら、自分でもっちもちの皮を作ってもっちもちのギョーザにしちゃえば、ごはんも要りませんし一挙両得じゃないですか?
これはいい思いつきです。ボリューミーでジューシーでごはんいらずのパーフェクトギョーザなんて最高です! そうです、自作の皮なら大きさも自由です! たまりません。よだれが出ちゃいそうです。出ちゃいました。
という結論に達しましたので。小麦粉をカゴに入れて、わたしはお酒コーナーへ向かいます。ここぞとばかりに、発泡酒と缶チューハイをどさどさと買い込みます。「終わってる」ですって? いえこれはむしろ始まりなのです。王将で同じだけ飲んだらお勘定がアウトするくらいの量を確保しました。いやいや、これを全部飲むわけじゃないですよ?
レジで同い年くらいの男の子に変な目で見られましたが、わたしは動じません。「蛍の光」を背に(今は冬ですが)、無の心で、私は帰途に就きました。でも、家に着いて買ってきたものを置いて眺めてちょっと絶望しました。この先に続くギョーザ完成までの道のりの長さを思って。わたしの今立っているところは、まだ折り返し地点でしかなかったのです。がくりと膝を折りました。何か軽くつまめるものを買って来ればよかったですね……。
「気をつけて帰るんだぞー」
ここ、わたしのアパートの目の前ですけど。
叔父さんのアルフォート号が見えなくなるまで手を振ります。
さて……よし、ここからが正念場です。すでにわたしの心は決まってます。
今夜はギョーザにします!
ギョーザを自分で作ります!
なぜだか知りませんがそんな気分になってました。叔母さんにもらった白菜がわたしの背中を後押ししてくれてます。ちょうどギョーザに使いますからね、白菜!
そうと決まればこっちのものです。腹ペコですが勇気が湧いてきました。これでも料理は得意なんです。ひと通り揃ってますからね、調味料!
ちなみに言っておきますと、わたしはコンビニごはんで適当に済まそうなんて、元々全然考えてません。なんだか負けた気がしますから。ましてや、餃子の王将なんてもってのほかです。こんな遅い時間に花の女子大生がひとりで王将なんて、大事なものを失くしちゃいそうな気がしますから。
なので! さあ、急ぎますよ! わたしのいつものあのスーパーへ! 閉店は十時です! 今から行って着く頃には、残り時間は十分少々でしょうけど、買うものは決まってますから十分です! 頑張れます! わたしは、腹ペコに報いなければなりません! いまはただその一事です! 走れ! わたし!
行って帰ってきた道をまた自転車をこいで行きながら、ふとわたしは考えました。この向かう先で待っているのは、セリヌンティウスさんとかではなくて、食材です。そのためにわたしは走っています。わたしには彼氏なんていません。思い起こせば、中学生のとき、それに近い人がいたことがありました。部活を引退してから、なんとなくその人と、毎日ふたりで一緒に下校するようになりました。かといってそれで何をした、とかそういう話ではないんですけど……。
すっごい前の話ですね。ああ、あの時は、何年後かに自分がこうして夜遅くに腹ペコのために疾走してるなんて、全然想像もつかなかったな……ぎゃひー……。
そんな苦悶もありましたが、十五分後、わたしは愛しのいつものスーパーにたどり着きました。間に合いました。夜は自転車のライトをちゃんと点けましょうね。
まずは野菜コーナーです。白菜がもうありますから、あとは長ねぎだけでいいですね。わたしの狙いはそれだけです。他の野菜には目もくれません。こっちは腹ペコなんです。それくらい追い詰められているんです。
次はお肉のコーナーです。豚! の挽き肉! です! わたしの狙いはそれだけです。ちょっとだけトンカツ用の分厚いロース肉に目がくらみました。でもうちには今、お米が無いので我慢です。また会いましょう! ロース肉よ!
そしてだいたい、こういう挽き肉コーナーにはギョーザの皮も置いてたりします。ありますね。むむむ。小麦粉コーナーも見てみます。むむむ。
調理時間を短縮するのならギョーザの皮を買っちゃう一択ですが、コスパを考えると小麦粉のほうが全然割安なんですよね。それに、皮はどうせ買っても全部は使い切らないでしょうし。あとうちには今、お米が無いのでごはんも無いですし。それなら、自分でもっちもちの皮を作ってもっちもちのギョーザにしちゃえば、ごはんも要りませんし一挙両得じゃないですか?
これはいい思いつきです。ボリューミーでジューシーでごはんいらずのパーフェクトギョーザなんて最高です! そうです、自作の皮なら大きさも自由です! たまりません。よだれが出ちゃいそうです。出ちゃいました。
という結論に達しましたので。小麦粉をカゴに入れて、わたしはお酒コーナーへ向かいます。ここぞとばかりに、発泡酒と缶チューハイをどさどさと買い込みます。「終わってる」ですって? いえこれはむしろ始まりなのです。王将で同じだけ飲んだらお勘定がアウトするくらいの量を確保しました。いやいや、これを全部飲むわけじゃないですよ?
レジで同い年くらいの男の子に変な目で見られましたが、わたしは動じません。「蛍の光」を背に(今は冬ですが)、無の心で、私は帰途に就きました。でも、家に着いて買ってきたものを置いて眺めてちょっと絶望しました。この先に続くギョーザ完成までの道のりの長さを思って。わたしの今立っているところは、まだ折り返し地点でしかなかったのです。がくりと膝を折りました。何か軽くつまめるものを買って来ればよかったですね……。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる