腹ペコ海香のひとりぼっち料理帖

黒猫

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3品目 いつだってカルボナーラ

てんこもり披露宴

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 腹ペコだったのを、すっかり忘れてました。
 挙式が終わった途端に、思い出しました。腹ペコです。
 緊張が解けたというか、気が抜けたというか、安心したというか……そのせいだと思います。腹ペコです。
 だというのに、チャペルを出て、かのサンドイッチの待つ控え室に戻るかと思いきや、親族一同は大きな写真スタジオに集められ、集合写真を撮られました。
 とんだ意地悪です!
 もちろん、お姉ちゃんと涼太郎さんも再登場です。
 二人とも、ひと山越えた感じでリラックスした顔をしていました。
 でも、お喋りしてる暇はありませんでした。
 すぐに、外に出てフラワーシャワーや風船飛ばしなんかのイベント? があったのです。お姉ちゃんは、ずっとドレスの裾を気にしないといけないみたいで、なんだか大変そうでした。わたしはお腹がすいてました。――さて!

 やっと次は、披露宴です!
 それはすなわち、ごはんです!

 私はずっと、この時を待ってました……なんて言うと、語弊がありますね。
 大丈夫です、わかってますとも!
 今日はお姉ちゃんの結婚式のために、ここに来たんです!
 ……でも、ごはんも楽しみにしてたっていいですよね?
 それに、もう、本当に、限界なんです……お腹がすいてるんです……。

 披露宴の会場にやってきました。
 テーブルは完璧にセットされていて、飾ってあるお花からはいい匂いがしました。
 高砂席にはもっと大きなお花がありました。いいですね。腹ペコがちょっと紛れました。
 よく見ると、カトラリーが全部、ステンレスではなくシルバーです!
 長年使い込まれてきたシルバーならではの柔らかみのある優しい光沢に、わたしはとても心惹かれました。
 早くこれを使って食べたいです!
 ワイングラスも、いかにも高そうなのがスタンバってます。
 わたしは、赤も白もどっちも大丈夫です!

 ――そしてわたしは、とてもすばらしいひとときをすごしました。

 喜怒哀楽がてんこもり……いえ、違いますね、「怒」は無いです。代わりに、「食」がありました。あ、あと「飲」ですね。
 料理はどれもとてもおいしかったです。びっくりしました。さすがにちょっと素人には再現不可能なハイレベルな味覚でした。
 まずスープのラビリンスに迷い込みました(いい意味でです!)し、白身魚があんな濃厚な味がすることを初めて知りました。お肉は無敵すぎました。野菜もパンも、何を食べても楽しくなっちゃいました。ワインはワインで、赤白どっちもすごかったです。それに、あちこちお酌して回った瓶ビールさえ、今までに飲んだどのビールよりもおいしく感じて……しあわせでした。

 あ、もちろん、お姉ちゃんはお色直しもキマってましたし、両親への手紙は大洪水でした。なつかし映像には、わたしも出演しちゃってました。ケーキ入刀なんてのもありましたね。どれもこれも大ウケ、大盛り上がりでした。

 よかったね、お姉ちゃん!

 ……さて、お開きです。披露宴会場を出たところで、新郎新婦とうちのお父さんお母さん、涼太郎さんのご両親が来席者のお見送りです。
 わたしは若干、蚊帳の外です。
 ウェディングケーキのおすそ分けを受け取って、お姉ちゃん涼太郎さんと軽く挨拶しただけで、向こうのご両親にお辞儀して、そそくさとロビーに出てきちゃいました。改めて周りを見てみると、知らない人ばかりです。当たり前ですね。顔を知ってるうちの親戚勢は、みんなそれぞれの家ごとに一緒に出てきて、そして帰っていきました。わたしはなんとなく手近にあったベンチソファに腰掛けて、手を振って見送ってました。叔母さんのところも、先に行っちゃいました。

 そのままどのくらいぼーっとしてたでしょうか。
 やがて、お姉ちゃんたちが出てきました。もちろんですが、これから着替えるそうです。お父さんお母さんも、お着替えです。
 そして、お姉ちゃんと涼太郎さんはこの後は二次会で、お父さんとお母さんは新幹線で実家へとんぼ帰りだそうです。おばあちゃんに報告しないといけませんもんね。

「そっかー。じゃあ、わたしは帰るね」

 わたしはそう言って、みんなと別れました。
 ちょうど送りのバスが出るところでした。
 そこからわたしのアパートまで、ひとりで帰りました。
 お腹はとても満足してましたが、なんだか寂しい気分にもなってました。
 お酒の酔いが少し回って、色んな気持ちをごちゃまぜにしてくれちゃってました。
 ようやくアパートに着いて、鍵を回してドアを開けて、中に入ってパンプスを脱いで、そして今日のフォーマルな装いを、ひとつひとつ解除していきました。



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