【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅰ.主食編

23.俺は、これだから竜が嫌いだ③

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「そんな重要なこと、俺に教えて良いのか?」
「愚かなことを聞く。きみルルドをどうこうできると思っているのか?」
  
 まあ、普通の竜は、そうなんだろうが。
  
「まぁ、こいつに限れば出来るだろ。こいつは美味い飯で釣れば、あっさり釣られそうだからな」
  
 この無知な食いしん坊に、名前を教えてもらうなんてこと、簡単なことじゃないのか。
  
「ふむ。そんなものか。感情や欲と言うのは、私たちには不合理で不可解だね。でも……それでも君は大丈夫だろうさ」
「何を根拠に。俺は竜に敬意も畏怖も感じねぇぞ」

 俺がこいつを利用するとは思わないのか?

 もっとも、俺は眷属になんぞ頼まれたってなりたくもないから、わざわざ真名を聞き出すつもりはない。

 竜の寿命がどれだけかは知れねぇが……百年……いや、千年単位の可能性だってある。
 人にとって途方もない年月だとしか思えないし、何の魅力も感じない。

「人の感情は不合理だからさ。嫌悪と好意は共存しうるから、かな?」

 にっこりと笑う青い竜は、まるで全てを見透かしているようで、すこぶる居心地が悪い。

「少なくとも、ルルドにとっては君は別格のようだ。だから、君がルルドを満たしてくれていれば、他に傾くことも無いだろう。万事解決だね」
「だから、勝手なことばかり……」
「そうそう。私の竜気をあげたからルルドは急激に成長する。それに伴って、より多くの黒い竜気を必要とするはずだ。
 人の子も成長期には栄養を多く必要とするだろう。あれと同じさ」

 こいつ、マジで人の話聞かねぇな。

「それが、なんだっていうんだ」
「つまり、たくさん君の中の澱みをルルドに注ぐように、ということさ」
「だから……っ!俺は、承諾した覚えはねぇ!!」
「ああ、安心したまえ。人の成長とは違うから、姿が変化するわけでは無いよ」
「いや、んなことは心配してねぇよ!」
「竜の人型は衣を纏っている姿で完成形なんだが。ルルドは“迷い星”の影響だろうね、裸体が基準のようだから。服が必要だろう?」
「だから、そういう問題じゃねぇ……」

 いや、服は確かに必要だろうが。俺が言ってんのは、もちろん服だとかの必要経費の問題じゃなく。

 つーか、竜も服の心配するんだな。

「何を怒っているのか、全く理解できないな。君にとって、何が不都合なんだい?」
  
 何が不都合って……不都合しかねぇよ。
 いきなり、拾った犬が実は竜で、しかもいきなり人の形になった上、腹すかせてるからセックスしろ、なんて。

 まともな神経の奴は、気が触れたとしか思わない。
  
「“澱み”は排出されなければ、いずれ生物の心身を蝕む。人の肉体や精神なんてあっという間だよ」

 ずっしりと体が重くなった気がした。
 いつも感じているはずの頭痛が、胸痛が、腹痛が、全身の軋む感覚が、ありありと意識の上に思い出されて。

 あー……クソっ。わかってるさ。そんなことは、俺だって、理解してる。
 この身体がとっくに限界だってことくらい。俺自身が、一番よくわかってる。

 言葉の通り、死ぬ程な。

「ただでさえ人族の寿命が短いのに。本当に、人の考えることはわからないな」
「……俺だって、わからねぇよ」
「そんなに交わることを厭うならば、早くルルドを成熟させることだ。
 ルルドが自ら“澱み”を取り込めるようになれば、君の“澱み”もおのずとルルドへと流れるようになる」
  
 つまり……竜の長を探せってことか。

 畜生が。結局、やることは変わらないじゃねぇか。

 と、その時。

 俺の腕の中の存在がもぞもぞと動いて、俺の服をむしゃむしゃと噛む。
 「うーん……ご飯」などと、安定の寝言にうなされる奴に自然と視線がいった。

 これまで寝ながらガウガウ言っていたのも、きっと同じようなことを言ってたんだろうな。 
 ったく……本人には、深刻さの欠片もねぇ。
  
「君も、随分とこの子に懐いているじゃないか」
  
 自然と、気づかぬうちに頬が緩んでいたらしい。

 ああ……クソっ。竜も、竜気も……いつだって、俺を苦しめてきた元凶だってぇのに。
 こいつは、何だって……よりにもよって、竜なんだ。

 青銀竜の長は、ダメ押しとばかりに、
  
「いずれにせよ、君に選択肢はないだろう?」
  
 と、真実を語る。
  
 わかってる。だから、気に入らねぇ。

「……じゃあ。他の長には、どうしたら会える?」
「さあね。ルルドの一件以来、私も会っていないから。今、どこでどうしているやら」
「はぁ?」

 じゃあ、どうやって探せっていうんだ……。

 そして、青銀竜の長は、「ルルドをくれぐれもよろしく」と、最後まで勝手なことを言って、駄竜を俺に押し付けて、全部諸々丸投げにして消えていった。



 やっぱり竜なんて……横暴で、無情で、いけ好かない存在だ。
 こちらの都合なんてお構いなしに、ただただ一方的に押し付けて、搾取してきやがる。

 だから、竜は嫌いなんだよ。
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