【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅱ.体に優しいお野菜編

22.僕、8割がヴァルでできています③

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「ここ、ヴァル兄の好きな野菜ばっかりだな」

 おお。お兄さんお目が高い!
 当たり前だよ。そういう野菜を、あえてたくさん植えたんだから。

 どうやらこのお兄さん、ヴァルのことを『ヴァル兄』て呼んでて、とっても親しそうだ。
 さらにヴァルのことをよく知ってるみたい。

 で、一番重要なことは、ヴァルのことが好きそうだってこと。
 だって、ヴァルの話をするとき、ふんわり蒸かし立てのお芋みたいないい匂いがするから。

「いや、予想以上に広い畑だね。これを全部、ルルド君が管理をしてるんだ?」
「うん。そうだよ。いい感じに育ってるでしょ」
「ここの土は、どうしてこんなに柔らかいんだ?」
「ここにはたくさんのワームがいて、土を耕して、いい土にしてくれるからだよ」
「え!?ワームが土を良くしてくれるって!?」
「そうだよ。え?知らなかったの?」

 ワームは細長い土の中にいるうねうねした生物だ。茶色く湿ってて、にょろにょろしてて、てかてかしてる。
 葉っぱなどを食べて、土を柔らかくしてくれる。

 ちょっと気持ち悪いけど、お野菜美味しくしてくれてると思えば、かわいく見えてくるんだよねぇ。

「ええっ!?じゃあ、あっちにあるゴミの山も……もしかして何か意味が?」
「ああ、あれは堆肥を作ってるところで――」
「えっ……堆肥!?ゴミが堆肥になるのか!?」
「うん。孤児院だから、野菜くずとか果物の皮とかが残るからね」
「じゃ、じゃあ……あっちの白い粉は何?あれも何か特殊な肥料?」
「あ、あれは灰だよ。植物が育ちやすいような土に変えてくれるんだ」
「ええ!?そうなの!?」

 うん。すごくリアクションのいい元気なお兄さんだな。ヴァルと、全然違う。

 土は雨や農作物の影響で酸性に傾きがちだ。そこでアルカリ性の灰を混ぜることで、より畑として適した土地に再生する。
 作物の種類によって、当然量は調整するってだけ。

 このあたりは、あんまり農業技術が発達してないのかな?

 うーん……正直、ああいうのを使わなくても、僕は良い感じにあっという間にお野菜成長させられるんだけど。

 ヴァルが簡単に力を使うなっていうから。お前の力はいろいろ影響が大きすぎるから、て。

 影響って何だろう?どんな影響があるのかな。

 僕には理解できない。
 だって、僕がしていることは、僕たち竜にとっては、歩くことや息をすることと同じような事象だから。

 でも、「いつまでもお前がここにいるわけじゃねーだろ」て。だから、僕がいなくても畑を維持できるようにしなきゃダメなんだって。
 それは………まあ、確かにそうかも?て思ったから。

 ヴァルがそう言うから、僕はそれに従う。

「それで、こんなに作物が早く育つんだ……すごいな」
「……………うん、まあそんな感じデス」

 多少、僕が竜気でいじったのは内緒だ。ヴァルにバレたら怒られちゃう。

 本当に多少なんだよ?
 だって、僕がつかう竜気は、あくまで僕の中の黒い竜気を使ったものだ。僕はまだ、外にたゆたう竜気を扱えるわけじゃないから。

 つまり、僕はまだ未熟だから、竜気を使うと、すぐにお腹が減っちゃうのだ。

 つまり………すぐに、ヴァルが欲しくなるってこと!

 要するに、あんまりヴァルに迷惑かけたくないってこと。

 今日の畑の作業をさっさと済ませていく。
 雑草を抜いたり、間引きしたり、色々だ。やることはいっぱいある。

「二人は孤児院の裏の住んでるんだよね?あそこで困ってることはないの?」
「え?ないよ」
「でも、あそこ古いだろ?」
「古いけど、ヴァルと一緒だし」

 そもそも竜である僕に、家なんて必要ない。ヴァルがあれでいいって言うんだから、あれでいいんだ。

「ふーん」

 あ。お芋の間にワームくん発見。うん。君はワームくん10号……ワージュくん、と名付けよう。土をいっぱい耕しておくれよ。

「俺さ。この孤児院に来る前から、ヴァル兄のこと知ってるんだ。今、自警団でも一緒で」
「へぇ、そうなんだね」

 その言葉に、もやっと嫌な気分が心の奥から湧いてきた。

 さっきから、ちょいちょい気になる。

 ……もしかして、自慢?昔からヴァルのこと知ってるよ、っていう自慢なの?
 
 しかも、ヴァルが自警団に派遣されてからは、夜勤とかあって、僕はあんまり会えてないのに、この人はヴァルと一緒にいられるらしい。

 ずるい。そんなの、ずる過ぎる!
 あのいい匂いをずっと嗅いでいられるなんて!!

 このお芋の匂いがするお兄さん……もうお芋お兄さんでいいや。
 お芋お兄さんが何のつもりでこんなことを言い出したのかわからなけど。なんだかすごくもやもやする。

 そりゃあさ。僕とヴァルの関係は、たった1年くらいのものだよ。僕が生きてきた200年で、たったの1年。

 知らないことだっていっぱいある。年齢だって知らないくらい、知らないことばっかりだよ。そんなの当然だって、わかってる。

 わかってるけど、でも、僕よりヴァルのことわかってるよ、なんて顔されるのすごくもやっとする。

 僕だって、ヴァルのみんなが知らないこと知ってるし!

 あんなこととか、こんなとことか、そんなこととか。
 ああいうときのヴァルは、いつもに増してものすっごく雄っぽくて。
 だけど、最後に「うっ……」て声を一生懸命我慢してる時は、すごく色っぽくて可愛いとか。
 ほかにも、あれやこれやそれとか!

 お芋お兄さんは知らないでしょ。

 ……………………………………。

 ……………あー。ダメだね。これ。
 そろそろ、いただきますしなくちゃいけない感じだね。

「昔のヴァル兄のこと聞きたくない?」
「へ?」

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