【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅲ.大好きな卵編

28.俺は、予言を歩んでる③

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 それに、ユーリが言ってた予言の解釈は、一体何なんだって話になんだろ。

異界の者ユーリが『物語』で知ってる予言の意味は……。
 黒き竜がこの世に“澱み”を溢れさせて危機に陥れる。異界の者が現れてこの世の者では力の及ばぬ竜に対抗し、竜の力を借りる竜騎士と力を合わせて黒き竜を討ち、この世を救う。
 そういう内容だぞ」

 ユーリが確信を持っていた点からして、『物語』でこう解釈されていたんだろう。

 しかも、この見解自体は、何もユーリが言い出したことじゃない。
 以前から、信じられてきたことで……なんだって、こんな解釈が出てきたんだ。

「ははは。人とは誠に愉快な生き物だ。
 黒き竜ルルドは、この世で黒い竜気、すなわちこの世の乱れた竜気を司り還元する唯一の存在なのだぞ?ルルドが在らねば、この世は滅ぶ」
「いや、なんも笑えねぇから」

 俺は思わず赤銅竜の長に突っ込んでしまう。

「挙句の果てに、この世に在る人がこの世そのものである竜を討つ、とは。滑稽にもほどがあるな」

 俺だって、そう思うよ。

「んなこと言ったって、あいつの知ってる『物語』の結末は、異界の者が黒き竜を討って、この世を救うことになってんだよ」
「あちらにどの時、どの場所のこの世が流れ語られているかは知らんが。
 何が変わろうとも、この世の理が変わることは有り得ぬ」

 つまり、どうあっても黒き竜ルルドがいなくなれば、この世が滅びることは決定事項。覆しようがないってことか。

 まぁ、ユーリの知ってる『物語』に、具体的にどう書かれてるか、知ることは不可能だから。
 何を言っても、想像の域を出ない。つまり、ここでああだ、こうだ言い合っても、正解は分かんねぇっつーことだ。

「思いこんでるんだよ。絶対最後は自分がハッピーエンドになるはずだって。
 あの人にとっては、いつだって、どこだって、あの人が主人公だから」

 ルルドの静かな淡々とした声に、俺は息をのんだ。

「………は?」
竜に神子あの人が主人公のお話なら、あの人が勝って讃えられれば、その過程で他が傷ついても、当たり前だとしか思わないから。
 結末が自分にとってハッピーエンドなら満足で、この世にとってもハッピーエンドに間違いないって、そう思い込んでる。
 だから、正しいか、間違ってるかなんて、考える発想すらないんだよ」

 黒光りする瞳が、いつになく真剣に見開かれ、強く確信をもって断定する。
 真実を語るような口調は、一切の迷いがない。目の前の白い竜が、あまりに浮世離れした凛々しさをたたえていて、俺はただ見入ってしまった。



 なんだよ。その言い方。

「ルルド、お前……」

 なんだ。その、まるでずっと前からユーリを知っているみたいな、言い方。

「一体、“迷い星”ルルドとユーリ……どんな関係なんだよ」

 お前、あいつに何されてきたんだよ。何か覚えてんのかよ。

「生物学的に言えば、一卵性双生児、かな」
「んん?……なんだ?イチランセイ……?」
「えーっと、つまり……双子、って言えばわかるかな?お母さんのお腹の中に二人の赤ちゃんが一緒に育って、一緒に生まれてくるやつ」
「双子……だと?あれと、“迷い星”が……?」
「でも、おんなじ遺伝子の体がなくなっちゃってるんだから、もはや、ただの他人だよね?」

 何かしら関わりのあった関係だとは思ってたが……双子なんて……。
 近いにもほどがあんだろ。

「うん。決めた。僕も、一緒に行くから」 
「は?……いや、お前なぁ……」 
「知ってるよ。ヴァルがあの人たちと一緒にいたの、僕見たから。
 だから絶対に、ヴァルと一緒に行く。どんなに不味い匂いでも、我慢する」
「でも、竜の神子……異界の者ユーリは、お前が黒き竜だと、気づいてるぞ」

 さらに、双子の片割れなんだろう?
 もし……お前が………ユーリとお前ふたごだってバレたら、どうすんだよ。

「あ、やっぱり僕が黒き竜なんだねー」

 そこかよ。
 こいつ、ホントに話、聞いてねぇな。

 お前、“迷い星”として……魂だけでこの世に来たってことは……あっちでは、既に死んでるってことじゃねぇのか。

 俺は前にお前がうなされた時のことが、どうしても忘れられんねぇんだよ。あの……怯えて、恐れるお前の姿が。こびりついて、どうしても離れねぇ。
 もしかして……“迷い星ルルド”が死んだのに、ユーリが関与してんじゃないのか……?

 俺は、なぜかそう確信してる。そして、ユーリはこの世界でも黒き竜ルルドを討つなんて、ほざいてる。

 お前は……黒き竜は、“迷い星”は……お前は、ユーリに会って大丈夫なのかよ。

「お前の竜の力は、あいつには通用しないんだろ?何されるか、わかったもんじゃねぇぞ」
「それは、ヴァルだって一緒でしょ。
 どうせヴァルのことだから、一人でどうにかするつもりだったんじゃないの?」

 それは………その通りだった。
 一人で、というよりも、ルルドを関わらせずに、という方が正しいんだが。

 単純にお前が傷つくなんて、見たくもないってだけで……。
 万が一にでもユーリにルルドが害されるなんて冗談じゃねぇ。

「僕たち二人で一緒にいた方がいいんでしょ?
 心配しないで。僕、竜だけど、普通じゃない竜だから。
 絶対に、ヴァルを傷つけさせないし、僕も傷つけられたり、させないから」 
  
 いつものふわふわとした白い竜の懐こい雰囲気とは違う真摯な物言いが、俺をひるませた。

「はぁ……わかったよ。好きにしろ」  
「うん!ヴァル、ありがとう」 

 礼なんて……ルルドが俺に礼を言う必要なんて何もない。
 そもそも、俺にルルドの行動をどうこうできる力もなければ、命じる権利もねーんだから。

 まぁでも、目の付くとこにいる方が、安心だわ。
 ………ちょいちょい、いつもと違うルルドの態度が気になるけどよ。
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