【本編完結】迷子の腹ぺこ竜はお腹がいっぱいなら今日も幸せ〈第10回BL小説大賞エントリー〉

べあふら

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Ⅳ.お腹いっぱいで幸せ編

29.僕、美味しい思いをさせたいんです④

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 僕が、決意も新たに息巻いてる間に、食べ終わったお皿が手際よく片付けられていて。
 ヴァルがデザートのお皿を僕の前においてくれる。

 ああ、また僕が幸せにしてもらっちゃってる。

「ん?なに……これ?」
「何って、クレープだよ。見りゃわかんだろ」
「これが、クレープ?」

 僕の知ってるクレープは、中にクリームとは果物が入ってて、くるくる巻いてあって、手にもって食べるヤツなんだけど。

 お皿の上でキレイに折りたたまれた生地は、確かにクレープの生地みたい。
 で、きっとこれにも、ヒクイドリの卵とウッシーのバターがたっぷり使われてるんだろうな。

 オレンジ色のソースの中にひたひたにつかった焼き目のきれいな薄い生地の上に、オレンジの果実が添えられて宝石みたいにキラキラしてる。

「カラメルと、オレンジジュースとオレンジリキュールで味がついてる」
「へぇ……」

 オシャレ。なんだか、ヴァルに似合わないくらい、オシャレ。
 この不釣り合いな感じが、特別にもてなされてる感をひしひしと伝えてくる。

 なんでかな。よくわからないけど、とっても恥ずかしくなってきちゃった。むずむずする。ドキドキしてきた。

「……食わねぇのか?」

 ヴァルの声に滲んだ不安で、僕ははっとして、

「食べるよ!見とれてただけ!」

 ナイフとフォークでかぶりついた。

「はわあぁ~……卵とバターに、オレンジの香りが……じゅわっとして……これ、最高」

 僕、無限に食べれる。毎日食べたい。
 さすがヴァルは、僕の好みをよくわかってる!

 ヴァルが僕を見て、ほっと息をつくと淡く微笑んで、自分も一口大に切ったクレープをフォークにさして、パクリ、と一口食べる。

「ん……美味いな」

 その様に、ごきゅり、と僕の喉が鳴った。

 うっ……。なんか……ヴァルがすごくエッチく見えるんだけど。

 食べてるところって、こんなにやらしいものだったっけ?

 フォークがヴァルの口に近づくと、ぱかり、と形の良い唇が開いた。
 白い歯と、赤い舌がひどく艶めかしくて、ゆっくりと閉じられた口内でもぐもぐと咀嚼する様に思わず見入ってしまう。

 うん。すごく、エッチ。

 変なの。なんだか身体がうずうずしてきた。とくとくと全身に血だか竜気だかが巡ってるのがわかる。お腹の奥がきゅうっとなる。

 ぺろり、と唇を舐めるヴァルの舌に、僕の欲望が疼く。何度も繰り返しヴァルを受け入れてたとこが、熱くなってひくひくとねだってるみたい。

 だって、あの唇が、舌が、口内が、僕のことをたくさん好きだって伝えてくれて、僕のことをたくさん気持ちよくしてくれて……。
 全身、心の奥まで触れられてないところがないくらい、とろとろに溶かしてくれたから。

 いいな。僕も、クレープになりたい。
 僕、今、ヴァルの口の中でとろけてるクレープになって。

 また、たくさん食べられたい。もっと、もっと――

「ところでルルド」

 と、紫色の双眸が僕を見て、ヴァルを見つめていた僕と、ばっちりと視線がぶつかった。

 ――はっ……心臓が止まるかと思った。さっきまでとは違う、やましいことでいっぱいの胸中に、鼓動がドキドキとはやる。

「どうした。ぼーっとして」
「ど……どうもしてないよっ!」

 僕ってば、また変なこと考えちゃってた!
 ダメダメっ!せっかくヴァルの美味しいご飯食べてるのに。
 でも、ヴァルがあんまり美味しそうだから……って違うでしょ!
 
「……顔が赤いぞ。アルコールは、飛ばしたはずだが」
「大丈夫だよ!ぼくは酔わないし!」

 まぁ、ヴァルに酔っちゃってるんだけどね!
 なんちゃって、なんちゃって!!

「……ま。いいけどよ。お前の挙動不審は今にはじまったことじゃねぇし。
 んなことより、あの鞄のことなんだけどよ」

 ………………え?

「か……鞄……?」

 え?ええ?それってもしかして、僕の鞄のこと?だよね……?

「俺がやった、お前の鞄だよ」

 あ。だよね。ヴァルが僕に聞く鞄なんて、あれしかないから。

 あれ……?そう言えば、僕、鞄どうしたっけ?
 ………あ。ヤバい。寝室に置きっぱなしじゃない。

「えーっと……あの鞄が、どうかしたの……?」
「俺、気になってたんだよ」
「き……気になってた……?」

 何が?なんで??

 ………はっ。もしや、ヴァル…僕の眷属になったことで、これまで感じなかった匂いを感じ取ってるとか……?

 僕がヴァルのことイイ匂いだって思うみたいに、ヴァルにも自分の匂いがわかるとか?

 もしかして、僕の秘蔵のお宝が見つかっちゃったとか!?
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