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Vol.44・U・F・O
しおりを挟むテレビから流れてきた半世紀近く前の人気アイドルのヒット曲に、あたしは釘付けになっていた。
当然生まれてもいない頃に流行った曲だけれど、懐かしのヒットソング、なんて番組で何度も映像を見たり曲も聴いたことはあるから知ってはいた。でも、じっくり歌詞を聴いたことはなかったかもしれない。
まさかね。
思い浮かんだ言葉をそっと胸にしまって、あたしは彼との待ち合わせ場所へ向かう。
見つめ合うだけで愛し合えたり話が出来たりするらしいその曲は、要するに恋人が宇宙人らしいのだけれど、あくまでも歌謡曲、非現実的過ぎる。
それを面白がって笑うのに何か引っ掛かってしまうのは、ダメな男に散々振り回されて出逢った今の彼が、少々、いやかなり不思議な人だからだ。
電話しようと思った瞬間に向こうからかかってくるとか、偶然駅で出逢うとかしょっちゅうだし、欲しいなぁと思って忘れてたようなものを記念日でもないのにプレゼントしてくれたり、友達と出掛けた場所をヒントなしで当てられたりすることが続くと、シンクロニシティね、運命かしらと浮かれてたのを通り越してちょっと怖くなってくる。
気は合うし話も合うし、ストーカーじみた不審な行動があるわけじゃないけれど、もしかして黙ってるだけで超能力者なのだろうか、などと思ったりして非現実的だなと自嘲するけれど、少なくとも未確認飛行物体に乗ってくるような人よりは全然現実的だと思う。
そんな彼が大事な話があると言うので、これはいわゆるプロポーズなのか、それともカミングアウトなのか、無駄に心配してしまう。
いつもより高級なレストランで食事をして、四角い小さい箱を彼が差し出した時、ああ良かった前者だったわ、と胸を撫で下ろしたものだけれど。
「実は、今日故郷から両親が来るんだ。逢ってもらえないかな?」
「もちろん、喜んで」
両親と待ち合わせをしているという展望台のある高台の公園に車を走らせて、田舎のご両親に夜景でも見せるつもりなのか、タクシーでここまで来てもらうのか小さな疑問が浮かび上がり始めた頃、何故か彼は展望台の駐車場より更に山の奥に車を走らせる。ここから先は誰も通らない、人家もない、整備用の道路があるだけだ。ざわり、と胸が騒ぐ。
車を降りて程なく、上空から眩い光。そこには、映画で見たような巨大な光る円盤が浮かんでいた。入口のようなものが開き、人影が二つ。
「このまま、僕たちの星に一緒に行ってほしい」
私はごくり、と唾を飲む。あの歌謡曲の最後は確かこういうのではなかったか。
―――最近、地球の男に飽きてきたところだと。
Fin
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