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Vol.45・東方の巫女
しおりを挟む東の果ての、小さな島国に、一人の巫女がいる。
未来を予知し、何もない空間から金を出し、念で巨石を動かし、天候をも操る。人の心の内まで見通すとあって、人々から敬われ畏れられ、いつしか神のように祀りあげられてしまった。
しかし、巫女は退屈であった。
毎日毎日、頼み事願い事ばかり持ち込む民人たち。かといって邪な心の内を読まれては敵わぬと神殿の奥深くに閉じ込められ、自由に外を歩くことさえままならない。
巫女の力をもってすれば、抜け出すことは容易いのだが、面倒なことになりそうなので、とりあえず今はおとなしくしているだけなのだ。だが、そろそろ飽きてきたなと溜め息をつく。
さて、どうしようか。
誰もが皆、そのような力を持っている筈なのに、何故自分だけを特別視するのか、彼女にはわからない。
何故、忘れてしまったのか。
世の中は願ったことは叶う仕組みになっているし、人の心は表情を見れば大概わかる。嘘をつく者もいるが、清らかな眼で見れば大体のところはわかる。
彼らはわからないという。それが彼女には理解できない。
幼い頃より力を発揮した巫女は、親兄弟からも引き離され神殿に閉じ込められた。
そろそろ潮時かもしれない。
抜け出すのはいいが、身の振り方を決めねばならぬ。
家に帰りたい気持ちもあるが、家族も彼女の力を畏れて、幼き頃のように受け入れてはくれないだろう。
周辺の地理は完璧に頭に入っている。食べることも寝ることも、巫女には何一つ困ることはない。望むことはすべて手にすることが出来ると知っているからだ。
考え始めると楽しくなってきた。
深夜に荷造りをし、重い装束を脱ぎ捨て、長い髪も切り落とした。
それから筆を取ると、短い置き手紙を書く。
巫女は力を喪い天に帰ることになった。民の息災を願っている。と。
こうしておけば、無駄に捜索されることもないだろう。
軽くなった体を揺すって、巫女であった少女はにこりと微笑んだ。そして静かに目を閉じ、村の外を思い描く。
次の瞬間、少女は村の門扉を背中に立っていた。振り返り長い年月を過ごした神殿をしばし見つめる。
感傷はない。
ただ胸に沸き起こるのは、歓喜であった。
目指すのは海辺の町だ。初めからそこに跳ぶことも出来たが、出来る限り自分の脚で歩きたいのだ。
今日から私は、ただの娘として生きるのだ。
どこまでも、自由だ!
あなたは?
Fin
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