46 / 71
Vol.46・リアルゲーム
しおりを挟むヘッドセットを装着して暗闇の中しばし待つ。やがて視界の中央に〝READY?〟と白い文字が浮かび上がってくる。
更に数秒待つと、その下部に少し小さなフォントで、左側に〝YES〟右側に〝NO〟と浮かび上がる。視線で左を選ぶと、一度瞬きをする。
すると文字は消え、全体に〝GO!〟と大きく浮かんだかと思うと、そのままどんどん拡大して僕の身体を突き抜けていく。同時に四方八方すべてに巨大な『街』が現れた。
僕は前に出した両手を見下ろして、何度か握って開いてを繰り返す。視線を上げると、軽くジャンプして、それから走り出した。初めは自分の脚で、それからついてくるエアボードに飛び乗って街を駆け巡る。
今は夜。暗闇を切り裂くように鮮やかな街の照明が眩い。ただ空が黒いだけで時間など関係がないみたいだ。
「セン、今日は何をする?」
いつの間にか隣を走って来たランが声をかけてきた。
「そうだなあ、昨日声をかけそびれたクラブの美女にリベンジするのはどう?」
「いいね!」
僕らは笑いながらエアボードを方向転換して、お気に入りのクラブへ繰り出す。
ここは電脳空間、REAL。五感も体感もリアルに感じられるヴァーチャルリアリティーの世界だ。僕らは夜毎日毎ここに繋がっては遊興にふける。
遊ぶだけじゃない、勉強だってスポーツだって何でも出来る。飲食も普通に出来るし気に入った相手とメイクラブすることも可能だ。
例え現実世界の僕が、長い間病院のベッドで、幾つもの管が身体と機械を繋いでいて、僕が生まれてこのかた、自分の口で食べ物を食べたことがなくても。
かつてはヴァーチャルリアリティーの端末は、実体にも大きく影響を与えるとして、健康な者にしか使えないという矛盾があった。改良に改良を重ねて出来上がったREALは、心臓にもまったく影響を与えないと、特に僕のような病床にある者に爆発的に広まった。ランもその一人だ。
それを批判する者も当然出てきたが、知ったこっちゃない。大体そういうことを言う人間に限って健康体だったりするものだ。
お陰で僕らは自分の肉体で経験できないことの殆どを体験することが出来ている。
美女と体を絡ませながら楽しく飲んでいると、ふ、っと、身体が軽くなった感覚があった。
直後、遠くからサイレンが鳴り響き、どんどん近づいてくる。
静かにクラブのドアが開くと、ポリスが僕に近寄ってきて何かを手渡した。ランが慌てたように走ってくる。
「……セン、これからどうするの?」
「そうだな、田舎にでも行って畑でもやろうかな」
何でもありのこの世界、もっと美しく清らかな場所だってある。
僕は、永住許可証という名の、死亡証明書を見せながら笑った。
「もう、帰らなくていいんだ」
fin
1
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる