私と騎士様の危い愛

月野さと

文字の大きさ
11 / 48

11話

しおりを挟む
 
 夜の8時半。
 ジルさんは、家に帰って来ない。
 いつ帰って来るか聞いておけば良かったな、と思う。

 だって、ご主人様より先に、ゴハン食べて良いのか分からないから、晩御飯食べてない。ハンナさんは、奴隷も使用人も、ご主人様と一緒に食べるわけではないので、残り物を仕事の合間に食べれは良いと言っていた。
 そして、ハンナさんは明らかに2人分つくって、半分は私のだと言って、帰っていってしまった。 
 ますます、食べ辛いのである。どうせなら、素うどん(無いけど)とか、お茶漬け(無いけど)とかの方が、ささっと台所で食べれたのに、なんか、ご主人様と同じものなのに、先に食べるって難しいなぁ。残り物がどっちなのか明白じゃないか。
 
「はぁ~~。おなか空いたぁ~~。ジルさん、早く帰って来ないかなぁ~。」
 独り言を言って、気を紛らわせる。
 そして、本を取り出して、読んでみる。リビングにあった本を勝手に拝借した。週刊誌みたいで、ゴシップなどが書いてある。
 それから、紙とペンを貰ったので、そこに文字を書いてみる。
 なんと!急に文字が読めて書けるようになったのである。不思議だよねぇ~?異世界にトリップすると、知らないはずの文字が読めて、知らないはずの字が書けるようになるのかぁ~?と、面白くなって、文字を書き始めたのである。
 とは言っても、ただの落書きだ。
 内容はこんな感じだ。

❝おなか空いた~。ジルさんはまだかなぁ~?明日からは、朝の時間と帰宅時間を確認。仕事内容はコレでいいか確認。ハンナさんから貰った服が、胸がキツイので買って良いか確認。食事は質素なものにするから、勝手に食べて良いか確認。部屋は、ハンナさんから聞いたキッチンの隣の部屋を貰って良いか確認。はぁ、おなかすいたよぉ!つかれたよぅ。お風呂も入りたいよぉ~❞

 そこまで異世界文字で書いてみて、自分で眺める。
「うーん。凄い。自分が凄すぎる。ちゃんと文字書けるわぁ~」
 しみじみと思い、リビングのテーブルに片方の頬をくっつけたままで、ペンも持ったままで、目を閉じる。
 そのうちにだんだんと、睡魔が襲ってきた。
 掃除洗濯に買い物。慣れない仕事に、慣れない世界。まぁ、疲れた。
 ウトウトしながらも、私はなんとか起きていたと思う。 
 何度かは、睡魔に襲われて落ちていたけど、空腹で目が覚める。 
「だめだぁ~。おなかすいたぁ~。食べちゃおっかなぁ~。」

 その時だった。
 急に後ろから、ジルさんの声がした。
「なんだ。まだ食べて無かったのか?」
 バッ!!と、起き上がって、後ろを振り向く。するといつの間にか、ジルさんが立っていた。
「わ!ビックリしました!お、お帰りなしゃいませ、ごしゅじ・・・ご主人様!」
 言いなれていない言葉で、舌を噛む。
 
 私の顔を見るなり、ジルさんは顔を緩ませた。
「ふっ、なんだその顔は。テーブルで寝ていたな?顔に跡が残ってるぞ。」
「ふぇ?」
 慌てて手で頬を抑えながら、椅子から立ち上がる。すると、気になった様子で、私の落書きを、ジルさんが拾い上げて読み始めた。
「あ、えっと…あの、それはですね…」
 私の落書きを読みながら、ジルさんは肩を震わせて笑い出す。
「ふふっ、なんだこれは。愚痴か?」
 なんだか楽しそうに言われたけど、勘違いされては困るので、訂正しておく。
「めっそうもございません!ご主人様に仕えるべく、きちんと知っておこうと思った次第です!」
「ふふ。だから、その話し方をやめてくれ。…よし、では決まり事を決めよう。」
 そうゆうことになった。

 時計を見ると、夜の9時過ぎていた。
「ご主人様は、ご飯食べますか?」
「あぁ、では頂くよ。」
「はい!ハンナさんと一緒に作ったので、間違いなく美味しいと思いますよ!」
 満面の笑みでそう言うと、ジルさんは、目を細めて微笑んだ。
 その時。
 ぐぅぅぅぅううう!ぎゅるるるるるっ。と、私のおなかが鳴った。
「………」
 その瞬間、ジルさんは大爆笑した。
「あははは!!立派な腹だな!あっはっはは」
「そんな笑います?慣れない家事で、本当に疲れたんですよ。ぺこぺこです。」
 赤面して言うと、彼は笑いながら、こちらを見て言った。
「すまんすまん。そんな立派な音を聞いたのが初めてで、はははっ。よし、私も手伝うから一緒に食べよう。」
「え?いや、結構です。私が準備しますから。ご主人様は、座っててください。」
「いいから。2人でやったほうが、早く食べれるだろう?」
 そう言われた瞬間も、返事をするように、私のお腹が、ギュルルッと鳴る。
「ぷっ。くっくっ。腹で返事するなっ。」
「笑い過ぎです!もう!」
「ははは。あぁ、今日は煮込み料理か。これは美味いぞ。ハンナの料理は絶品だ。」
「美味しそうですよね?この匂いを嗅ぎながら、何時間も待ってたんですよ?ある意味の地獄です。」
「ふふ。食べれば良かったのに。ハンナは、そう言わなかったか?」
「食べて良いって言ってましたけど、そうゆうわけにも行かないですよ!」
「何故だ?」
「何故って、そもそも、誰かと一緒に住んでたら、みんなで揃って食事するのは当たり前でしょう?今日あったこととか、辛いことも楽しい事も、なんでも話しあいながら、今日も1日色々あったねって、そんな話をして、食卓を囲んで生きてきたんですよ。いくら他人様の家とはいえ、1人で先に食べるとかムリです。」
「………」
「あ、でも、私は奴隷なので、ご主人様の言う通りに…」
「遅いときは、先に食べて良い。そうでなければ、一緒に食べよう。」
「え、でも、」
「私も、そんなふうに食事がしてみたい。」
「‥‥」
 それって…そんな風に食事をしたことが、無いのだろうか?
 その後も、私のお腹は鳴っていたし、彼は笑っていたけれど、なんだか突っ込む気持ちがなくなってしまった。


 
 
   
 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒騎士団の娼婦

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

処理中です...