私と騎士様の危い愛

月野さと

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24話 アクア

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 私は町に戻ると、預かってもらっていた荷物を受け取って、丁寧にお礼を言い、お店を出た。
 家に向かおうとした、その時だった。
「よお、お姉さん。どこかの使用人か?」

 声をかけて来たのは、柄の悪そうな男。2人組だった。
 男達は、私の胸元を見つめながら、ニヤニヤと近寄って来た。
 私は、荷物を抱きしめるようにして持ち、睨みつける。
「急いでますので」
 そう言って、間をすり抜けようとすると、腕を掴まれた。
「何するの?!」
 ニィッと、笑う男達。
「荷物を持ってやるよ?どこまで行くんだ?」
「結構です!離して下さい!」
 1人の男が、私の腕を掴んで離さない。もう1人の男は、私から荷物を奪う。
「ん~?なんだ袋の中は食材かぁ。やっぱり、どこかの使用人か!」
 勝手に袋の中身を見て、男達は目配せする。
「なぁ?使用人なんか、そんなに稼げないだろ?もっと良い仕事、紹介してやろうか?」
 仕事?
「そうそう!俺達が、もっと楽で稼げる仕事を紹介してやるよ。」
 …楽で稼げる?
 そんな、仕事があったら是非ともお願いしたいけど、そのフレーズは、怪しい以外の何者でも無い。
「離してって、言ってるでしょ!」
 私は、思いっきり腕に力を込めて、引っ張られている腕を、そのまま相手の男の腹部を目掛けて、肘鉄をくらわした。
「ぐっ!」
 男が驚いて、私から手を離した。
「あっ!この野郎!」
 もう1人が、私の荷物を投げ捨てた。
 !!
 なっ!私の小麦粉!!
 食べ物をそんな風に扱うなんて!
 カッとなった私は、勝てっこ無いだろうに、キレた。睨みつけて拳に力を入れる。
 そこへ、私の前に立ちはだかった人がいた。
「女性相手に、何をしている!俺が相手になるぞ!」
 突然。
 私の目の前に現れたのは、ジルと同じ髪色の、スラッとした、スマートな男性だった。
 背中には、大きな鎌のような武器を背負っていた。
 それを見た、柄の悪そうな男達は、急に困った顔をする。
「なっ、なんだよ!」
「お、俺達は、ただ、仕事を紹介しようとしてただけだ!」
「そ、そうだ!それだけだ!じゃ、じゃあな!!」
 男達は、あっという間に逃げて行ってしまった。
 ホッとして、男達を見送る。

 すると、振り向いた男性は、驚くほどの美形だった!
 なんて表現していいのか?そうだ!アイドルグループみたいな顔!
 そんな素敵な顔で、男性は私の顔を覗き込んだ。
「大丈夫でしたか?」
「はっ、はい!ありがとうございます!本当に助かりました!なんと、お礼をしたら良いか!」
 照れながらお礼を言うと、彼は、アイドルさながらに、爽やかに笑う。
 そして、なぜか、その場にしゃがみ込んだ。
「あぁ、良かった~。本当は、助けられるか自信なかったから。俺は、腕力はからっきしだめなんだ。」
「え?」
 腕力はダメ?でも、彼の背中には、大きな鎌の形をした武器が……と、見つめていると、彼は私の視線に気がついて、言った。
「あ~、これは、偽物。」
「偽物?」
「役者をしているんだ。これは小道具。だから、本当に切れたりしないよ。」
「役者さん?!」
 ぽい!それっぽい!どこの世界も、役者は美形!この男の人は、中性的な顔で、そこがまた芸能人っぽい。
 それにしても、役者は体が資本なのに、体を張って助けてくれるなんて!
「本当に、ありがとうございました!」
 彼は、爽やかな笑顔を私に向けて、散らばった荷物を拾い集めてくれた。
 私も一緒に拾って、立ち上がる。
 見惚れてしまう美形。アイドル系だぁ、観に行きたいなぁ。なんて、呑気に思ってしまう。
「あの、どこで役者をしているの?こんど、観に行きたいなと、思って。」
 彼は、また爽やかに笑う。
「ありがとう。国中を回ってたけど、昨日から、王都の劇場で講演してるんだ。」
「そうなのね!近いうちに、観に行きたいわ!」
「お待ちしてます」
「あ、私はミレイ。あなたは?」
「俺は、アクア。あぁ、そうだ!ちょっと待って。」
 アクアは、自分の着ていた上着を脱いで、私の肩にかけた。
「男物の上着だけど、あげる。」
「えっ、でも!」
「無事に帰れたか心配になるから、貰って帰って?」
「……じゃ、お言葉に甘えて…。」
 上着をしっかりと胸元まで、引っ張る。これで、胸元などの体のラインは出ない。
 そうして、彼を見上げた。
 満足げに笑うアクアは、キラキラしていた。
 ジルと同じ髪色の髪が、風にゆらめく。
 屈託のない真っ直ぐな瞳に、ついつい目を奪われる。
 好きになるなら、きっと、何か闇を抱えてそうなジルより、アクアみたいに爽やかな男性の方が、幸せになれるだろうな。
 手を振って別れてから、なんとなく、そう思った。 

 セフレになろうなんて言っておいて、親しくしている女性を見て嫉妬するなんてバカみたい。
 ジルのこと、もっと知りたいと思った。
 あの女性は、ただの幼馴染?どうして、1人で生活しているの?家族は?気になる事は、たくさんある。
 でも、まだ、知り合って間もないから、踏み込めない。 
 ……頭の中では、ジルを好きになっちゃダメだって、警報が鳴ってる。
 なんとなく闇があって難しそうな人だから、やめておいた方が良いって。 
 だから、ジルには近づき過ぎない方がいい。

 この世界で、なんとか幸せに生きていく為に。
 もっと上手く、人生を歩む為に。
 
 あ、そうだ!
 この世界で生きていくなら、アクアの推し活を生き甲斐にしようかな?
 趣味は大事!仕事を早く見つけて、趣味を見つけて、第2の人生を、上手く生きていかなきゃ。

 

 
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