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28話
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ジルヴィスは、ミレイの言葉を、ボーーッと聞いていた。
「ミレイの家族は、良い家族だったんだな。」
そう言って、ワイングラスを空けたので、私は再びワインを注いであげる。
「そうですね。みんな仲良しで、穏やかで温かい家族だったと思います。」
「あぁ。そんな感じがするな。ミレイを見ていれば、わかる。」
「…私の家族は、私がいなくなって、すっごく悲しんでると思う。今のジルみたいに。きっと、どうしようも無いくらい、泣いてくれてると思うんです。」
亡骸はあるのか?行方不明なのか?分からないけれど。
「…ミレイ…」
「でも、私はココで生きてる!だから、思ったように、自由に精一杯に生きようと思います!」
本当は、家族みんなに言いたいけど、もう言えないから、勢いで、ジルに言う。
「だから、みんなには、いつまでも悲しまないで、幸せになって欲しい。そう願ってます!そうじゃなきゃ、私も悲しいし、前を向けない。」
それが、大事な人の為でもある。
そう、信じるのだ。
「…勝手なことを言う。」
「勝手、ですよね。でも、私は、そう信じたい。」
ジルヴィスは、ふと生前のルシオの言葉を思い出す。
「ジルにも、いつか一生を共に出来る人を見つけて、幸せになって欲しいな。」
「いらん。俺は1人が合ってる。」
ルシオは、苦笑して言った。
「そうかな?俺達さ、ずっ~と一緒だっただろ?最初の頃は、そうは思わなかったけど…ジル、おまえ寂しがりだろ?でも俺は、生涯を共にする人を見つけたから、これからは、ジルより、アニエスを1番に考えると思う。」
「当たり前だ。何言ってる?」
「だからさ…」
その時、ルシオは寂しそうに笑って言った。
「ジルを1人にするのが、心配なんだ。」
余計なお世話だ。
俺は、ずっと1人だった。
物心ついた頃から、ずっと。
だから、慣れてる。そう思っていたのに、後から気がつく。
初恋のアニエスを取られたことよりも、親友との今までの関係が変わってしまうことの方が、寂しかったのだ。
「ルシオは、勝手な男だ。」
急にジルヴィスは、声に出して言った。
ミレイは驚いて、ジルヴィスの顔を見つめる。
「あいつも、幸せな家庭で育ち、明るい性格で、屈託ない笑顔を周囲にふりまけるような男だった。」
そう言うと、ジルは私を見つめた。
「そんなところは、ミレイに少し似ている。」
「私に?」
「バカみたいな正義感を振りかざして、人の心にズカズカ入り込んで来て、笑顔で絆しにかかって、その後は勝手に俺の前から消える。」
そう言うと、ジルヴィスはワイングラスを傾けて、飲み干した。
その人のことを嫌いみたいに言うので、そうっと、ワインを注ぎながら聞く。
「でも、その、ルシオ?様のことは、好きだったんですよね?親友だったんでしょう?」
すると、遠くの方を見ながら、ため息混じり答えた。
「…好きだったよ。」
苦虫を噛み潰すみたいな表情で、続ける。
「ずっと……これからも、どんなに歳をとっても、ずっと、あいつは…!一緒に……」
『ジル!
おーい!ジル!
やった!やったぁ~!俺たち聖騎士に選ばれた!!一緒だよ!マジで信じられねぇ!職場も一緒になったぞ!!あはははっ!なぁ、ジル!俺達、マジでありえねぇだろ!もうこれは、あれだな!運命の相手ってやつだ!切っても切れないぞ、俺らの関係は!最強だろ?な?ヨボヨボのジジイになるまで、一緒だな?』
自分勝手で、真っ直ぐで、誰よりも俺が好きだった男。
自分から、ずっと一緒だなんて言って、1人にするのが心配だなんて言って、自分が先に居なくなる男。
「ジル…」
ふと顔を上げると、ジルヴィスの隣にミレイが立っていた。
頬からは、涙が流れ落ちた。
流れ落ちるのと同時に、ミレイはジルヴィスを抱きしめていた。
慰めたかった。
だけど、それだけじゃない。自分の家族を思い浮かべた。きっと、悲しんでいるだろう。悲しむ家族に、何もしてあげられない。私は、もう、戻れないのだ。もう2度と会うことも無い。だから、重ねてしまうのだ。
「ごめんね、ジル。」
私は、ジルを抱きしめたままで言う。
「私ね。なんだか、ホッとしてる。」
ギュウっと力を込めて、彼を抱きしめる。
「だって、自分の為に泣いてくれなかったら、やっぱり、寂しいから。」
その時、ジルヴィスの中で、また1つの記憶が蘇った。
『なぁ、ジル。
俺のこと好きだよな?俺ら親友だろ?』
『おーい、ジル。
おまえ、俺がいないと寂しいだろ?
え?そんなこと言うなよぉ~。』
「……っ!」
俺は、どうして。
どうして、1度だって返してやらなかったんだ?
あいつは、いつも言っていたのに。
俺の親友は、お前だけだと、おまえのことが、大好きだと。
どうして、どうして俺は…
ミレイに縋りつくようにして、抱きしめた。
ジルヴィスは、涙を止めることが出来なかった。
ミレイの言葉が、いつしか、ルシオの声になっていた。
あいつなら、きっと、同じ事を言うだろう。
『ジル。な~んだ。泣いてんのか?
ほら、やっぱり俺のこと好きだろ!
良かったぁ。そうだよな?俺ら親友だもんな。
…そんなに泣くなって。
悪かったよ。ごめんな』
「ミレイの家族は、良い家族だったんだな。」
そう言って、ワイングラスを空けたので、私は再びワインを注いであげる。
「そうですね。みんな仲良しで、穏やかで温かい家族だったと思います。」
「あぁ。そんな感じがするな。ミレイを見ていれば、わかる。」
「…私の家族は、私がいなくなって、すっごく悲しんでると思う。今のジルみたいに。きっと、どうしようも無いくらい、泣いてくれてると思うんです。」
亡骸はあるのか?行方不明なのか?分からないけれど。
「…ミレイ…」
「でも、私はココで生きてる!だから、思ったように、自由に精一杯に生きようと思います!」
本当は、家族みんなに言いたいけど、もう言えないから、勢いで、ジルに言う。
「だから、みんなには、いつまでも悲しまないで、幸せになって欲しい。そう願ってます!そうじゃなきゃ、私も悲しいし、前を向けない。」
それが、大事な人の為でもある。
そう、信じるのだ。
「…勝手なことを言う。」
「勝手、ですよね。でも、私は、そう信じたい。」
ジルヴィスは、ふと生前のルシオの言葉を思い出す。
「ジルにも、いつか一生を共に出来る人を見つけて、幸せになって欲しいな。」
「いらん。俺は1人が合ってる。」
ルシオは、苦笑して言った。
「そうかな?俺達さ、ずっ~と一緒だっただろ?最初の頃は、そうは思わなかったけど…ジル、おまえ寂しがりだろ?でも俺は、生涯を共にする人を見つけたから、これからは、ジルより、アニエスを1番に考えると思う。」
「当たり前だ。何言ってる?」
「だからさ…」
その時、ルシオは寂しそうに笑って言った。
「ジルを1人にするのが、心配なんだ。」
余計なお世話だ。
俺は、ずっと1人だった。
物心ついた頃から、ずっと。
だから、慣れてる。そう思っていたのに、後から気がつく。
初恋のアニエスを取られたことよりも、親友との今までの関係が変わってしまうことの方が、寂しかったのだ。
「ルシオは、勝手な男だ。」
急にジルヴィスは、声に出して言った。
ミレイは驚いて、ジルヴィスの顔を見つめる。
「あいつも、幸せな家庭で育ち、明るい性格で、屈託ない笑顔を周囲にふりまけるような男だった。」
そう言うと、ジルは私を見つめた。
「そんなところは、ミレイに少し似ている。」
「私に?」
「バカみたいな正義感を振りかざして、人の心にズカズカ入り込んで来て、笑顔で絆しにかかって、その後は勝手に俺の前から消える。」
そう言うと、ジルヴィスはワイングラスを傾けて、飲み干した。
その人のことを嫌いみたいに言うので、そうっと、ワインを注ぎながら聞く。
「でも、その、ルシオ?様のことは、好きだったんですよね?親友だったんでしょう?」
すると、遠くの方を見ながら、ため息混じり答えた。
「…好きだったよ。」
苦虫を噛み潰すみたいな表情で、続ける。
「ずっと……これからも、どんなに歳をとっても、ずっと、あいつは…!一緒に……」
『ジル!
おーい!ジル!
やった!やったぁ~!俺たち聖騎士に選ばれた!!一緒だよ!マジで信じられねぇ!職場も一緒になったぞ!!あはははっ!なぁ、ジル!俺達、マジでありえねぇだろ!もうこれは、あれだな!運命の相手ってやつだ!切っても切れないぞ、俺らの関係は!最強だろ?な?ヨボヨボのジジイになるまで、一緒だな?』
自分勝手で、真っ直ぐで、誰よりも俺が好きだった男。
自分から、ずっと一緒だなんて言って、1人にするのが心配だなんて言って、自分が先に居なくなる男。
「ジル…」
ふと顔を上げると、ジルヴィスの隣にミレイが立っていた。
頬からは、涙が流れ落ちた。
流れ落ちるのと同時に、ミレイはジルヴィスを抱きしめていた。
慰めたかった。
だけど、それだけじゃない。自分の家族を思い浮かべた。きっと、悲しんでいるだろう。悲しむ家族に、何もしてあげられない。私は、もう、戻れないのだ。もう2度と会うことも無い。だから、重ねてしまうのだ。
「ごめんね、ジル。」
私は、ジルを抱きしめたままで言う。
「私ね。なんだか、ホッとしてる。」
ギュウっと力を込めて、彼を抱きしめる。
「だって、自分の為に泣いてくれなかったら、やっぱり、寂しいから。」
その時、ジルヴィスの中で、また1つの記憶が蘇った。
『なぁ、ジル。
俺のこと好きだよな?俺ら親友だろ?』
『おーい、ジル。
おまえ、俺がいないと寂しいだろ?
え?そんなこと言うなよぉ~。』
「……っ!」
俺は、どうして。
どうして、1度だって返してやらなかったんだ?
あいつは、いつも言っていたのに。
俺の親友は、お前だけだと、おまえのことが、大好きだと。
どうして、どうして俺は…
ミレイに縋りつくようにして、抱きしめた。
ジルヴィスは、涙を止めることが出来なかった。
ミレイの言葉が、いつしか、ルシオの声になっていた。
あいつなら、きっと、同じ事を言うだろう。
『ジル。な~んだ。泣いてんのか?
ほら、やっぱり俺のこと好きだろ!
良かったぁ。そうだよな?俺ら親友だもんな。
…そんなに泣くなって。
悪かったよ。ごめんな』
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