私と騎士様の危い愛

月野さと

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34話 給料日とジルの噂

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 ミレイは、とうとう給料日を迎えた。

「ミレイ。今月のお給料よ。」
 マダムから直接、お金の入った封筒を頂く。
「わぁ~♬マダム!ありがとうございます!」
 私は、封筒の分厚さに少し驚く。
 すると、マダムが私の表情を見て言った。
「あのバルフォア卿から聞いてるからね。1人で生計建てようとしているんでしょ?頑張りなさい!たくさん期待も込めて上乗せしておいたわよ。」
 ??バルフォア卿??誰?
 すると、同じ職場の女性が横から声を上げた。
「え?バルフォア卿のご紹介だったんですか?マダム、よく受け入れましたね?」
「だまらっしゃい!あんたね、バルフォア卿は、今じゃ聖騎士の隊長を任されているのよ?聞けば、本人は10歳で生家を出て、騎士学校に入り、以降バルフォア伯爵とは縁を切っていると言うじゃ無いの。」
「まぁ!そうなんですか?」
「そうよ!社交界の噂になってんのよ。裏切り者の父親を軽蔑して、縁を切って家を出たってことらしいわ。」
「まぁ!では、彼はまともな方なんですね!確かに、子供は親を選べませんものね。」
 ???
 バルフォア伯爵?
 え?……どうゆう意味?バルフォア卿って、ジルのこと?ジルのお父さんが、つまり伯爵?縁を切った???
「ミレイ、あなた、バルフォア卿とは、どのような関係なの?」
 同僚に質問されて、私は完全にパニックになる。
 え?なんて答えればいい?正直に言って大丈夫?いやいや、ダメだよね?えーと、えーと…。
「遠いご親戚の知り合いと聞いたわよ。あんた、あまり人の素性を聞くのやめなさいな。」
 マダムにたしなめられて、同僚は言った。
「え~、気になりますよぉ。遠い親戚ってことは、王女様の?」
「…え?」
 王女?
「バルフォア伯爵に親戚なんていないだろうから、やはり母君の、王女様の親族関係ってことなのでしょう?」

 ここで、私は完全にフリーズした。

 は?
 え?王女?
 なに?
 ジルは、王女様の息子?

 マダムは、同僚に言う。
「まぁ、そうゆうことだろうね。だから、素性を探るのやめなさいな!王族関係者の問題を詮索すると、抹殺されちゃうわよ?」
「え~~?!ひえぇ~!!」
 マダムは、カッカッカと笑った。

 このマダムは、何を考えているのか、謎多き人だ。
 私は、一気に入ってきた情報で、頭がパンクしそうになっていた。
 そこへ、マダムが私に言う。
「あぁ、ミレイ。あんたが注文したやつ届いてたわよ」
 私はそれを受け取り、放心状態で職場を出る。
 てくてく、と歩いて帰路につきながら、ふと思いだす。
「…そうだ。今日は、遅くなるから晩御飯いらないって言ってたっけ…」

 さっき受け取った、自分の注文した商品の箱を眺める。
 ジルへのプレゼントである。
 初任給で、彼への日々のお礼を買おうと決めていた。
 まぁ、でも、渡すのは明日でも良いか。

 立ち止まったまま……考える。

 今から帰っても1人なんだよなぁ~。
「あっ!そうだ!」
 私は急に思い立って、劇場に向かった。
 お金も手に入ったし、自分にご褒美だ♡
 興味があった演劇を見ようと思いつく。
 私は、職場で言われた話を考えないようにして、劇場までスキップした。
 
 劇場にたどり着くと、さっそく受付でチケットを購入して、席に座った。
 夕方の講演に間に合って、運よく席が空いていたのだ。平日だし、もしかするのそのせいかもしれない。

 真っ暗になって、緞帳が上がる。
 ドキドキワクワクしながら、私は夢中になって、その劇を見た。
 TVも無い、これといった娯楽も無いこの世界で、久しぶりの娯楽だった。
 劇の内容は、恋愛ものだった。

 ヒロインと青年の出会いは、月夜の晩で運命的。一瞬で恋に落ち、愛し合う2人。
 しかし、彼女は本当に愛する人が別に居ると言うのである。
「ごめんなさい。あなたが、あまりにも、あの人に似ていたから!本当にごめんなさい!」
「そんなの嘘だ!君を、君だけを、こんなに愛しているのに!」
 ヒロインの浮気相手(青年)を演じているのは、アクアだった。
 ヒロインの婚約者は、他に愛人をつくっていたが、本物の愛に気がつき、よりを戻して結婚して去ってしまう。しかし、アクア演じる浮気相手は、諦め切れずに女性を追いかける。
「何故だ。僕は、本気だったのに!」
 こうして、ヒロインの夫である王子と、アクア演じる浮気相手は、戦うのである。
 最後は、王子が勝ち、アクアは命果ててしまう。
 アクアは、息を引き取る瞬間、呟くのだ。
「いいんだ。これで良いんだ。僕の愛した、愛おしい人。あなたが幸せならば…」
 そう言って、アクアの出番は終わる。
 王子は、ヒロインの不貞を許し、ヒロインも王子の不貞を許し、2人は大きな愛情で幸せに暮らすという話で終わってしまった。

 劇場が明るいライトで照らされて、お客さんが帰って行く中。
 私は、心の中が、モヤモヤしていた。
 おいおい…なんなんだ?このストーリー?おかしくない?

 そう思いながら、ボーっとしていると、あっという間に、お客さんが居なくなっていた。
 私は慌てて劇場を出ようとすると…

「あの!ねぇ、君!」
 呼び止められて、私は振り返った。

 そこには、アクアが立っていたのである。

「!!アクア!」
「あぁ、やっぱり、ミレイだ♪本当に見に来てくれたんだね。」
 私は思わず駆け寄った。
「いつぞやは、ありがとう」とお礼を言い、また次回、上着を返しに来ることを約束する。
 すると、またしても……
「ぐぅぅぅぅ~」
 と、私の腹が鳴り、アクアは笑いながら食事に誘ってくれた。
 劇団員も時々行くという個室の有るお店に、2人で向かった。
 
 それから、演劇の内容にについて語る。 
「ねぇねぇ、なんなの?あの話は!酷すぎる!アクア死んじゃったし!それに、不貞行為した2人が幸せになるとか意味わからないわ!それにそれに!不貞行為を許すのが美徳みたいな感じも嫌!!」
 私は、すすめられるままにお酒を飲みながら、アクアに言った。
 すると、アクアは、笑った。
「ミレイは、純粋だなぁ。王都では、こうゆうのが好まれるんだよ?実際問題、不倫とか浮気は、多くの人がしていることさ。」
 私は、その言葉に眉間に皺を寄せて、批判した。
「絶対にゆるせない!なんなの!不倫と浮気が当たり前なら、私は、この国で一生結婚なんかしないわ!」
 
 ミレイの怒りにアクアは、可笑しそうに笑った。
 食べた事の無い美味しい料理に、お酒。久しぶりの娯楽に、なんだかんだ楽しくなり、私はすっかり飲み過ぎてしまった。



 
 


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