私と騎士様の危い愛

月野さと

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35話 尾行

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 その頃、町の繁華街で、ダンとリオンが変装して、団長を追っていた。
 
「ねぇ、ダン。その恰好、逆に目立ちませんか?」
 リオンが微妙な顔で、ダンを見て言った。
「なんだよ?俺は、まぁまぁ似合ってると思うけどな!」
 ダンは、ダンディな紳士をきめこんで、オシャレなスーツ姿に付け髭と、眼鏡。リオンは、その辺に居そうな良い所の紳士を演じている。
「まぁ、団長の行く所はリッチな店ばかりですからねぇ。正装は大事なんですけど…目立つと尾行がバレそうなんですが…」
「あ、あの店に入って行くぞ?」
 ダンが言うので、前方を確認する。
「あの店って、個室の店ですね!」
「あぁ、誰かと落ち合うのかもしれん。」
 団長が、店に入ったのを確認して、2人は追いかけて行き、入口を覗いて、店の奥の方に入って行ったのを確認してから、店の中に入った。
「いらっしゃいませ。2名様でしょうか?ご予約は?」
 ダンは、聖騎士の証明手帳を提示する。
「?!」  
「ある者を尾行している。協力を要請する。今入って行った男の、部屋の隣を用意してくれ。」
「はっ…はい!」
 店員は慌てた様子で、返事をした。
 リオンは、小さい声で言う。
「…いいんですか?後でバレませんかね?」
「バ~カ。庶民が聖騎士様を売るわけないだろう?それに、バレても何とでも言いようがある。」
 そうして、2人はロドリス団長の入った、隣の部屋に案内された。

 2人は、個室の部屋で、部屋の中を見回す。
「ダン。どうするんです?壁は意外と頑丈ですよ?」
 ダンは、リオンをそっちのけで、壁を触って確認する。
 黙ったままで、何かを取り出した。
 不思議そうにリオンは、その取り出した物を見つめる。
 ダンは、丸い輪っかを壁にくっつけた。そして、輪の中心にある紋章に触れた。
 触れたとたんに黄色く輝き、突然、隣の部屋の声が聞こえ始めた。

「お待たせいたしましたかな?」
「いやいやいや、今、来たばかりです。どうぞ、おかけください。神官長様。」
 リオンは、驚いて目を見開いた。
 ダンも、少し驚いた顔をしてから、リオンに小声で説明する。
「これはな、ジルが持ってた魔法の道具だ。」
「魔法の道具?」
 この国では魔法を使える者が多くはないが、聖騎士と魔法使いは魔力を有している。
「ジルの父親が持っていたそうだ。それを、家を出る時にくすねてきたって言ってた。」
「えっ、ジルの父親って…!」

 その時、隣の部屋から声が聞こえたので、2人とも黙った。
「神官長様。ちゃんとバレないように来られましたかな?」
 ロドリスは嫌らしい声で聞く。
「えぇ。こうしてフードをかぶって来ましたからね。今日はこの後、娼館にお誘い頂けるのでしょうな?」
「もちろんですとも、ナンバーワンを待たせているので、お楽しみ頂けるかと。」
「グフフ。楽しみですな。」
 神官長が気持ちの悪い笑い方をした所だった。

 ガチャッ!

 突然、ダンとリオンが聞き耳を立てている、部屋の扉が開いた。
 個室の扉が急に開いて、2人は心臓が飛び出るほどに驚き、息を飲んだ。
 開いた扉の方を見る。
「え?……あれーー?」
 黒い髪の女性が、目をまんまるにして、へんてこな声を上げて、こちらを見ていた。
 突然、扉をあけて入ってきたのは、ミレイである。
 アクアと個室でお酒を飲んでいて、トイレに立ち、戻ってきたつもりが、ウッカリ部屋を間違えたのだ。
「………?!」
「………っ?!」
 ダンとリオンは、声にならずに焦った。
 ミレイは、声を上げた。
「あーー、部屋を間違えちゃった。って言うか、んーと、あなたたちは、確か…」
 名前を思い出そうと、頭をひねった時だった。

 ダンが瞬発的に動いて、ミレイの口を押さえる。同じく瞬間的に動いたリオンが、扉を閉めた。
「なんで、おまえがいる?!」(小声)
「どうして、ここに?!」(小声)
 2人の雰囲気に、どうやら、静かにしないといけない状況なのだと察する。
 ミレイは、目をパチクリさせて、口をつぐみ、部屋の中を見渡した。
 2人以外に誰も居ない部屋。テーブルも椅子も使用していない形跡。そして、壁に謎の丸い…何かが貼ってある。
「???」
 困惑していると、リオンが言った。
「どうします?」
「どうするも、こうするも……静かにしててもらうしかないだろ?」
 そう言って、2人に見つめられて、戸惑いながらも、ミレイはウンウンと頷いて見せる。
「よぉ~し。お利口だ。このまま、静かにしててくれよ。」
 ダンは、そう言いながらも、私の口から手を離してくれなかった。信用されていない様子だ。
 そのまま、ズルズルと、壁際に引っ張られる。 
 
 すると、隣の部屋から声がした。

「…それで?こんな所に呼び出したのには、何かありましたか?」
 少し間をおいて、神官長は言った。
「ジルヴィスの件ですよ。なぜ、あの男を昇進させたのか?」
「あぁ、その事でしたか。まぁ、こちらにも考えがあるのです。」
「あの男は、裏切り者の息子!」
「ふふっ。しかし、王女の息子でもある。」
「まぁ、確かに…。しかし、裏切り者の息子が、聖騎士の上層部に上がるのは問題ですぞ!」
「まぁまぁ、私に考えがあるのですよ。」
「…ほほう?考えとは?」  
「あの男は、裏切り者の息子とはいえ、勤勉で温厚、誠実な男だ。同じ寮生活を送った騎士達にとって、誰もが目の当たりにし理解している。騎士連中からの信頼が厚いのです。この私でさえ、かなわぬ程の実力もある。こればかりは、認めざるおえない。」  
「それでは、困るでは無いか!」
「はははは。しかし、見つけてしまったんですよ。」
「??見つけた?」
「ええ。あの男の弱点を。」
「おお!それは、なんです?」
「まぁ、見ていてください。近いうちに、あの男は消えます。」
「本当か?」
「えぇ。ジルヴィス・バルフォア。あの男は、産まれてきてはいけなかった。」
「ふん!何度も暗殺者を送ったが、全て返り討ちにあっている!騎士学校で、教師に化けた暗殺者が、何人、あの男にやられたことか。」
「ふはははは。今では、謀反人どもが、王族の血を引くあの男を立太子させようと企てていると、聞き及んでいる。あの男の評判を上げようと、噂を流している輩がいるようだ。だが、そうはさせん!」
「おぉっ!団長自ら、ジルヴィスを殺めるか?」
「何を仰る。私は自らの手は汚さん。神官長様。あの男の弱味を握ったと、言ったではないですか。」
「あぁ~!じれったい!だから、それは何なのです!?」
「これからの、お楽しみですよ。グフフフフ。」
「期待していますよ。」
「さぁさ、時間ですな。娼婦の所へ案内しよう。」
「おふっ。楽しみですなぁ~。」

 ダンと、リオンは、青ざめた顔で、黙って聞いていた。
 私も、口を押さえられたままで、話を聞いた。
 
 その後、隣の2人、ロドリス団長と神官長が部屋を出ていく音がした。

 黙って、魔法の道具を取り外し、ダンはポケットにしまう。

「ダン……」
 リオンが、青い顔をしてダンを見つめる。
「……今日中に、ジルに報告しよう。」
「はい……でも、弱点って…なんでしょうか?」
「知るか!知ってたら、俺がそれをネタに隊長になってんだろ!」
 その言葉には、ツッコミを入れずに、リオンは私を見てボソリと言った。
「弱点……」
 ダンは、溜め息をついて、私に向きなおる。
「で?おまえさんは、なんでココにいたんだ?」

 私は、頭の整理ができす、混乱したままだった。









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