私と騎士様の危い愛

月野さと

文字の大きさ
35 / 48

35話 尾行

しおりを挟む
 
 その頃、町の繁華街で、ダンとリオンが変装して、団長を追っていた。
 
「ねぇ、ダン。その恰好、逆に目立ちませんか?」
 リオンが微妙な顔で、ダンを見て言った。
「なんだよ?俺は、まぁまぁ似合ってると思うけどな!」
 ダンは、ダンディな紳士をきめこんで、オシャレなスーツ姿に付け髭と、眼鏡。リオンは、その辺に居そうな良い所の紳士を演じている。
「まぁ、団長の行く所はリッチな店ばかりですからねぇ。正装は大事なんですけど…目立つと尾行がバレそうなんですが…」
「あ、あの店に入って行くぞ?」
 ダンが言うので、前方を確認する。
「あの店って、個室の店ですね!」
「あぁ、誰かと落ち合うのかもしれん。」
 団長が、店に入ったのを確認して、2人は追いかけて行き、入口を覗いて、店の奥の方に入って行ったのを確認してから、店の中に入った。
「いらっしゃいませ。2名様でしょうか?ご予約は?」
 ダンは、聖騎士の証明手帳を提示する。
「?!」  
「ある者を尾行している。協力を要請する。今入って行った男の、部屋の隣を用意してくれ。」
「はっ…はい!」
 店員は慌てた様子で、返事をした。
 リオンは、小さい声で言う。
「…いいんですか?後でバレませんかね?」
「バ~カ。庶民が聖騎士様を売るわけないだろう?それに、バレても何とでも言いようがある。」
 そうして、2人はロドリス団長の入った、隣の部屋に案内された。

 2人は、個室の部屋で、部屋の中を見回す。
「ダン。どうするんです?壁は意外と頑丈ですよ?」
 ダンは、リオンをそっちのけで、壁を触って確認する。
 黙ったままで、何かを取り出した。
 不思議そうにリオンは、その取り出した物を見つめる。
 ダンは、丸い輪っかを壁にくっつけた。そして、輪の中心にある紋章に触れた。
 触れたとたんに黄色く輝き、突然、隣の部屋の声が聞こえ始めた。

「お待たせいたしましたかな?」
「いやいやいや、今、来たばかりです。どうぞ、おかけください。神官長様。」
 リオンは、驚いて目を見開いた。
 ダンも、少し驚いた顔をしてから、リオンに小声で説明する。
「これはな、ジルが持ってた魔法の道具だ。」
「魔法の道具?」
 この国では魔法を使える者が多くはないが、聖騎士と魔法使いは魔力を有している。
「ジルの父親が持っていたそうだ。それを、家を出る時にくすねてきたって言ってた。」
「えっ、ジルの父親って…!」

 その時、隣の部屋から声が聞こえたので、2人とも黙った。
「神官長様。ちゃんとバレないように来られましたかな?」
 ロドリスは嫌らしい声で聞く。
「えぇ。こうしてフードをかぶって来ましたからね。今日はこの後、娼館にお誘い頂けるのでしょうな?」
「もちろんですとも、ナンバーワンを待たせているので、お楽しみ頂けるかと。」
「グフフ。楽しみですな。」
 神官長が気持ちの悪い笑い方をした所だった。

 ガチャッ!

 突然、ダンとリオンが聞き耳を立てている、部屋の扉が開いた。
 個室の扉が急に開いて、2人は心臓が飛び出るほどに驚き、息を飲んだ。
 開いた扉の方を見る。
「え?……あれーー?」
 黒い髪の女性が、目をまんまるにして、へんてこな声を上げて、こちらを見ていた。
 突然、扉をあけて入ってきたのは、ミレイである。
 アクアと個室でお酒を飲んでいて、トイレに立ち、戻ってきたつもりが、ウッカリ部屋を間違えたのだ。
「………?!」
「………っ?!」
 ダンとリオンは、声にならずに焦った。
 ミレイは、声を上げた。
「あーー、部屋を間違えちゃった。って言うか、んーと、あなたたちは、確か…」
 名前を思い出そうと、頭をひねった時だった。

 ダンが瞬発的に動いて、ミレイの口を押さえる。同じく瞬間的に動いたリオンが、扉を閉めた。
「なんで、おまえがいる?!」(小声)
「どうして、ここに?!」(小声)
 2人の雰囲気に、どうやら、静かにしないといけない状況なのだと察する。
 ミレイは、目をパチクリさせて、口をつぐみ、部屋の中を見渡した。
 2人以外に誰も居ない部屋。テーブルも椅子も使用していない形跡。そして、壁に謎の丸い…何かが貼ってある。
「???」
 困惑していると、リオンが言った。
「どうします?」
「どうするも、こうするも……静かにしててもらうしかないだろ?」
 そう言って、2人に見つめられて、戸惑いながらも、ミレイはウンウンと頷いて見せる。
「よぉ~し。お利口だ。このまま、静かにしててくれよ。」
 ダンは、そう言いながらも、私の口から手を離してくれなかった。信用されていない様子だ。
 そのまま、ズルズルと、壁際に引っ張られる。 
 
 すると、隣の部屋から声がした。

「…それで?こんな所に呼び出したのには、何かありましたか?」
 少し間をおいて、神官長は言った。
「ジルヴィスの件ですよ。なぜ、あの男を昇進させたのか?」
「あぁ、その事でしたか。まぁ、こちらにも考えがあるのです。」
「あの男は、裏切り者の息子!」
「ふふっ。しかし、王女の息子でもある。」
「まぁ、確かに…。しかし、裏切り者の息子が、聖騎士の上層部に上がるのは問題ですぞ!」
「まぁまぁ、私に考えがあるのですよ。」
「…ほほう?考えとは?」  
「あの男は、裏切り者の息子とはいえ、勤勉で温厚、誠実な男だ。同じ寮生活を送った騎士達にとって、誰もが目の当たりにし理解している。騎士連中からの信頼が厚いのです。この私でさえ、かなわぬ程の実力もある。こればかりは、認めざるおえない。」  
「それでは、困るでは無いか!」
「はははは。しかし、見つけてしまったんですよ。」
「??見つけた?」
「ええ。あの男の弱点を。」
「おお!それは、なんです?」
「まぁ、見ていてください。近いうちに、あの男は消えます。」
「本当か?」
「えぇ。ジルヴィス・バルフォア。あの男は、産まれてきてはいけなかった。」
「ふん!何度も暗殺者を送ったが、全て返り討ちにあっている!騎士学校で、教師に化けた暗殺者が、何人、あの男にやられたことか。」
「ふはははは。今では、謀反人どもが、王族の血を引くあの男を立太子させようと企てていると、聞き及んでいる。あの男の評判を上げようと、噂を流している輩がいるようだ。だが、そうはさせん!」
「おぉっ!団長自ら、ジルヴィスを殺めるか?」
「何を仰る。私は自らの手は汚さん。神官長様。あの男の弱味を握ったと、言ったではないですか。」
「あぁ~!じれったい!だから、それは何なのです!?」
「これからの、お楽しみですよ。グフフフフ。」
「期待していますよ。」
「さぁさ、時間ですな。娼婦の所へ案内しよう。」
「おふっ。楽しみですなぁ~。」

 ダンと、リオンは、青ざめた顔で、黙って聞いていた。
 私も、口を押さえられたままで、話を聞いた。
 
 その後、隣の2人、ロドリス団長と神官長が部屋を出ていく音がした。

 黙って、魔法の道具を取り外し、ダンはポケットにしまう。

「ダン……」
 リオンが、青い顔をしてダンを見つめる。
「……今日中に、ジルに報告しよう。」
「はい……でも、弱点って…なんでしょうか?」
「知るか!知ってたら、俺がそれをネタに隊長になってんだろ!」
 その言葉には、ツッコミを入れずに、リオンは私を見てボソリと言った。
「弱点……」
 ダンは、溜め息をついて、私に向きなおる。
「で?おまえさんは、なんでココにいたんだ?」

 私は、頭の整理ができす、混乱したままだった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。

いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。 ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、 実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。 だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、 王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。 ミレイにだけ本音を見せるようになり、 彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。 しかしレオンの完璧さには、 王宫の闇に関わる秘密があって—— ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、 彼を救う本当の王子に導いていく。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。

黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、 妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。 ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。 だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。 新たに当主となった継子は言う。 外へ出れば君は利用され奪われる、と。 それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、 私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。 短いお話です。

恋い焦がれて

さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。 最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。 必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。 だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。 そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。 さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。 ※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です ※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません) ※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。 https://twitter.com/SATORYO_HOME

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...