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36話
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ダンは、団長をもう少し尾行すると言って、すぐに居なくなってしまった。
すると、リオンは真剣な顔で言った。
「今、聞いたことは、他言無用に。もし、誰かに話したら、命は無いと思ってくださいね」
私は神妙な顔で、頷いた。
でも、あの人達……団長って言ってた?もう一人は、神官って言ってた?つまり、ジルの職場の上司じゃない??
「あ、あの、ジルは、無事ですか?大丈夫ですよね?」
私は、急に怖くなって震えながら、リオンの腕を引っ張る。
すると、リオンは低い声でハッキリと言った。
「僕らが隊長を守ります。あいつらの思い通りにはさせません!」
それを聞いて、いくらかは、ホッとする。
とにかく、聞かなかった事にするように念を押されて、リオンと別れを告げた。
それから、アクアの待つ部屋に戻り、酔ってしまったので、もう帰ると伝えた。
すると、危ないからと、家の前まで馬車で送ってもらうことになった。
頭の中では、色々なことがグルグルと回っていた。
「ミレイ?家の前についたよ?」
送ってもらった馬車の中で、アクアが言う。
「あ、もう着いたのね。送ってくれてありがとう。じゃぁ、また。」
馬車を降りようとすると、アクアが言った。
「ミレイ…待って…!」
私は振り返ると、アクアは私を見つめて、何かを差し出して来た。
「?」
「これ、他の劇団のチケットなんだけど、ペアチケットなんだ。一緒に行く相手が居なくてさ、もしよかったら、一緒にどうかな?」
「わぁ、嬉しい!ありがとう♪行く行く!」
嬉しい!無料で観劇できるんだ!!
「…良かった。じゃぁ、一緒に観よう。楽しみにしてる。」
そうして、別れた。
馬車を見送って、私は家を見上げる。
どの窓にも明かりは無く、まっくらだ。
「まだ…帰って来て無いか…」
ボソリとつぶやいて、家の中に入った。
お風呂に入り、部屋に戻る。
ボーーッとクローゼットを見つめて思った。
「あ、せっかくここまで送ってもらったんだから、アクアの上着、返せば良かった…」
そう呟いてから、ベッドに体育座りをして、顔を埋める。
ジルヴィス・バルフォア。
これが、ジルの名前。
私は、彼のフルネームすら知らなかったのだ。
みんながジルって呼んでたから、それが名前だと思ってた。
そして…伯爵の父と、王女様の母。王族の血…かぁ。
あの人たち、『暗殺者を送ったが…』って言ってた。
じゃぁ、ジルは、命を狙われていた?
その時、廊下の方から「ギシッ!」と、床が軋むような物音がして、私はビクッ!!っと飛び上がる。
そうっと、部屋を出て、エントランスの方向を見る。
だけど、真っ暗だった。何の変化も無い。
真っ暗なエントランスと、2階に上がる階段を、交互に眺める。
でも、何も変わらない。
気のせいだったのか、家が軋む音だったのか?
「………」
私は、部屋の中に入って、また、ベッドに戻る。
ジルは、ずっと、この家で1人で生活してきたんだ。
たった、1人で……ずっと……。
あの人たち、ジルの事を“裏切り者の息子”って言ってた。
マダムも、“裏切り者の父親を軽蔑して、縁を切った”って言っていた。
『ミレイの家族は、良い家族だったんだな。』
あの時……ジルが、そう言った時、私は何て言った?
自慢げに、満面の笑みで、「そうですね。温かい家族だった」と言ったんだ。
無神経だ。
ジルが1人で生活しているのを知ってるくせに、なんて無神経なことばかり言っていたんだろう?
孤独な人だった。
その上、親友まで失ったばかりで…。
『あの男は産まれてきてはいけなかった』
さっき聞いた、男の声を思い出す。
『ジルヴィスを殺めるか?』
『あの男の弱味を握った…』
なんとかしなきゃ…!
ジルの弱味?なんのことだろう?
その時、ハッと私は思いつくものがあった。
そうだ!ジルの弱い部分。ジルの大事な物!それは、彼女だ!
親友の子を身ごもっている、アニエス様だ!
彼女が危ないのかもしれない!
私はそう思って、ある決心をした。
◇
翌日、私は、アニエス様の家に来ていた。
応接室に通されて、彼女と対面している。
朝、職場に来てから、マダムに聞くと、ルシオさんの家を知っていた。お得意さんなのだそうだ。
「アニエス様に、もう1度だけお会いしたくて…。」
そう言うと、マダムは言った。
「あらぁ。じゃぁ、今日は呼ばれてないけど、お得意様だし、行っちゃおうかしら?新作のご紹介にね!ミレイ、1人で行ける?」
そうゆうことに、なったのである。
ジュエリーを幾つか持って、尋ねたのだ。新作が入ったから、是非見るだけでもと言うと、中に入れてくれた。
「確か、あなたは、神殿でお会いしたかしら?」
アニエスは、ニコニコと微笑んだ。
「はい。そのせつは、突然失礼しました。お体のお加減はいかがですか?」
お腹に手を当てて、アニエスは視線を落として微笑む。
「もう5ヶ月になったわ。順調よ。」
「そうですか、安心しました。」
私は、そう言いながらも、どうしようかと、考えあぐねた。
思わず、ここに来てしまったが『危険が迫っているかもしれないから気をつけて?』って言う?どう、説明したら良いだろうか?
悩んでいると、アニエスの方から話をふられた。
「あなた、確か、お名前はミレイ様と言ったかしら?」
「あ、はい!」
「実はね、あなたにお会いしたいと思っていたのよ。」
「え?私に?ですか?」
意外すぎて、素直に驚く。
「えぇ。気になっていたのだけれど、ミレイ様は、どちらのご令嬢かしら?」
「あ、えーと、私は…」
「調べても、あなたの素性が、全くわからなかったわ。」
……調べた?
すると、リオンは真剣な顔で言った。
「今、聞いたことは、他言無用に。もし、誰かに話したら、命は無いと思ってくださいね」
私は神妙な顔で、頷いた。
でも、あの人達……団長って言ってた?もう一人は、神官って言ってた?つまり、ジルの職場の上司じゃない??
「あ、あの、ジルは、無事ですか?大丈夫ですよね?」
私は、急に怖くなって震えながら、リオンの腕を引っ張る。
すると、リオンは低い声でハッキリと言った。
「僕らが隊長を守ります。あいつらの思い通りにはさせません!」
それを聞いて、いくらかは、ホッとする。
とにかく、聞かなかった事にするように念を押されて、リオンと別れを告げた。
それから、アクアの待つ部屋に戻り、酔ってしまったので、もう帰ると伝えた。
すると、危ないからと、家の前まで馬車で送ってもらうことになった。
頭の中では、色々なことがグルグルと回っていた。
「ミレイ?家の前についたよ?」
送ってもらった馬車の中で、アクアが言う。
「あ、もう着いたのね。送ってくれてありがとう。じゃぁ、また。」
馬車を降りようとすると、アクアが言った。
「ミレイ…待って…!」
私は振り返ると、アクアは私を見つめて、何かを差し出して来た。
「?」
「これ、他の劇団のチケットなんだけど、ペアチケットなんだ。一緒に行く相手が居なくてさ、もしよかったら、一緒にどうかな?」
「わぁ、嬉しい!ありがとう♪行く行く!」
嬉しい!無料で観劇できるんだ!!
「…良かった。じゃぁ、一緒に観よう。楽しみにしてる。」
そうして、別れた。
馬車を見送って、私は家を見上げる。
どの窓にも明かりは無く、まっくらだ。
「まだ…帰って来て無いか…」
ボソリとつぶやいて、家の中に入った。
お風呂に入り、部屋に戻る。
ボーーッとクローゼットを見つめて思った。
「あ、せっかくここまで送ってもらったんだから、アクアの上着、返せば良かった…」
そう呟いてから、ベッドに体育座りをして、顔を埋める。
ジルヴィス・バルフォア。
これが、ジルの名前。
私は、彼のフルネームすら知らなかったのだ。
みんながジルって呼んでたから、それが名前だと思ってた。
そして…伯爵の父と、王女様の母。王族の血…かぁ。
あの人たち、『暗殺者を送ったが…』って言ってた。
じゃぁ、ジルは、命を狙われていた?
その時、廊下の方から「ギシッ!」と、床が軋むような物音がして、私はビクッ!!っと飛び上がる。
そうっと、部屋を出て、エントランスの方向を見る。
だけど、真っ暗だった。何の変化も無い。
真っ暗なエントランスと、2階に上がる階段を、交互に眺める。
でも、何も変わらない。
気のせいだったのか、家が軋む音だったのか?
「………」
私は、部屋の中に入って、また、ベッドに戻る。
ジルは、ずっと、この家で1人で生活してきたんだ。
たった、1人で……ずっと……。
あの人たち、ジルの事を“裏切り者の息子”って言ってた。
マダムも、“裏切り者の父親を軽蔑して、縁を切った”って言っていた。
『ミレイの家族は、良い家族だったんだな。』
あの時……ジルが、そう言った時、私は何て言った?
自慢げに、満面の笑みで、「そうですね。温かい家族だった」と言ったんだ。
無神経だ。
ジルが1人で生活しているのを知ってるくせに、なんて無神経なことばかり言っていたんだろう?
孤独な人だった。
その上、親友まで失ったばかりで…。
『あの男は産まれてきてはいけなかった』
さっき聞いた、男の声を思い出す。
『ジルヴィスを殺めるか?』
『あの男の弱味を握った…』
なんとかしなきゃ…!
ジルの弱味?なんのことだろう?
その時、ハッと私は思いつくものがあった。
そうだ!ジルの弱い部分。ジルの大事な物!それは、彼女だ!
親友の子を身ごもっている、アニエス様だ!
彼女が危ないのかもしれない!
私はそう思って、ある決心をした。
◇
翌日、私は、アニエス様の家に来ていた。
応接室に通されて、彼女と対面している。
朝、職場に来てから、マダムに聞くと、ルシオさんの家を知っていた。お得意さんなのだそうだ。
「アニエス様に、もう1度だけお会いしたくて…。」
そう言うと、マダムは言った。
「あらぁ。じゃぁ、今日は呼ばれてないけど、お得意様だし、行っちゃおうかしら?新作のご紹介にね!ミレイ、1人で行ける?」
そうゆうことに、なったのである。
ジュエリーを幾つか持って、尋ねたのだ。新作が入ったから、是非見るだけでもと言うと、中に入れてくれた。
「確か、あなたは、神殿でお会いしたかしら?」
アニエスは、ニコニコと微笑んだ。
「はい。そのせつは、突然失礼しました。お体のお加減はいかがですか?」
お腹に手を当てて、アニエスは視線を落として微笑む。
「もう5ヶ月になったわ。順調よ。」
「そうですか、安心しました。」
私は、そう言いながらも、どうしようかと、考えあぐねた。
思わず、ここに来てしまったが『危険が迫っているかもしれないから気をつけて?』って言う?どう、説明したら良いだろうか?
悩んでいると、アニエスの方から話をふられた。
「あなた、確か、お名前はミレイ様と言ったかしら?」
「あ、はい!」
「実はね、あなたにお会いしたいと思っていたのよ。」
「え?私に?ですか?」
意外すぎて、素直に驚く。
「えぇ。気になっていたのだけれど、ミレイ様は、どちらのご令嬢かしら?」
「あ、えーと、私は…」
「調べても、あなたの素性が、全くわからなかったわ。」
……調べた?
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