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42話 ルシオの鍵
しおりを挟む私は、あっという間に、男達に取り押さえられた。
紐で両手を縛られて、大きなベッドの上に放り投げられた。
男たちは、ベッドの周りに立ち、ニヤニヤと視線を送って来る。
「ふふふ。怖いか?子ネズミちゃん。」
震えあがっている私を見て、団長が笑う。
「あ、あなたたちが、ルシオを殺したのね?!絶対に、許さない!」
私が言うと、全員が声を出して笑った。
「許さないって、どうするんだ?お前に何ができる?」
ロドリスを睨みつける。
けれど、私の胸元の服を掴み、グイっと服を引っ張られ、胸があらわになった。
「!!」
恥ずかしさで泣きそうになったけれど、必死に堪える。
な…なくもんか!
「おぉ!これはまた、大きい!」
神官長が嬉しそうにして、ヨジヨジとベッドに上がってくる。
それをよそに、ロドリスは私に言う。
「で?おまえは誰だ?ジルヴィスの仲間か?何のためにココに来た?」
「あんたみたいな黒ダヌキと、話したくも無い!人間のクズ!キモオヤジ!」
バシッと、平手打ちをくらう。結構、痛い。
「口が過ぎる女だ。ほら、言え!言わないと、ここにいる全員に犯されるぞ?」
ゾッとした。
こんな、気持ち悪い男達に囲まれて、好き放題されるなんて、ゴメンだ。
だけど……私は目を閉じて、口をつぐんだ。
「ふふふ。強情な女だ。まぁ、ただの雑魚だろう。最初から怪しかったしな。」
「あ、思い出しました!この女、神殿に来ていた女です!ジルヴィスの、確か、遠い親戚の、知り合い??」
「?……なんだそれは?」
「いや、詳しくは……」
「遠い親戚っておまえ、そうなると、まさか!王女様の?!」
なにやら、言い合いになり、長くなりそうだった。
その様子を見ていたのは、ダンだった。
例のごとく、隣の部屋で聞き耳をたてて、ヒヤヒヤしていた。
早く!早くジルを呼んで来い!!リオン!!早くしろ!
ダンは、必死に息をひそめていた。
◇
ジルヴィスは、ルシオの部屋で、探し物をしていた。
「ジル…何を探しているの?」
「……あぁ、仕事の事でな。それより、アニエス。身重なんだ、リビングに戻ってゆっくりしていろ。」
「えぇ、そうね。」
アニエスは、そう言いながらも、部屋の入り口に立ったままで、ジルヴィスを見ていた。
一通り見たが、どこにも見当たらない。もう1度、引き出しの中を見て、気がつく。
これは、からくりの引き出しだ。
そのことに気がついて、やっと見つけ出した。中には、木箱が入っていて、鍵穴があった。自分の首にあった鍵を取り出して、差し込んでみる。すると、カチッと空いたのである。
「……!」
ジルヴィスは、息を飲んだ。
机のランプを近づけて、箱の中から本を取り出す。
それは、ルシオの日記だった。
------------
〇月〇日。
今日は結婚式だった。
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結婚式から書いているのかと、少し微笑ましく思う。
ただ、長くなりそうだったので、日付が半年前の所を探してめくっていくと、ふと、ある文字が飛び込んでくる。
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〇月〇日。
もう、終わりかもしれない。
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気になって、その前のページを読む。
1年も前の日記にたどりつく。
------------
〇月〇日。
アニエスは、ジルを愛していた。
団長が言った。2人は恋人同士だったのだと。
2人の気持ちを知らずに、引き裂いたのは俺だ。
なぜ、俺は気がつかなかったのだろう?よく考えてみれば、ジルが唯一心を許している女性だった。俺はバカだ。親友なのに…!
でも、どうして?どうして、ジルは俺に言ってくれなかったのだろう。どうして、アニエスは、そう言ってくれなかったのだろう。
…いや、ジルは、そうゆう事を言うやつじゃないか。
気がつかないフリをしよう。知らないフリをしよう。
------------
ジルヴィスは、次のページを見る。
------------
〇月〇日。
俺は、心の狭い男だ。
確信は無いのに、ジルを無視した。
団長が、町でアニエスを見たと言うのだ。ジルと同じ髪色の男が、アニエスとホテルに入って行くのを見たと。
確かめなくても、ジルだと思った。アニエスはジルを愛している。彼女はいつも、ジルの話を聞きたがる。彼女はいつも、ジルばかりを見つめている。
寝言で、ジルを呼んでいた。きっと、そうなのだろう。
それでもいい。知らないフリをしよう。いつか、きっと、俺を見てくれるようになるまで。
------------
ジルヴィスは、ちらりとアニエスを見る。
アニエスは、小首をかしげた。
「見つかった?」
「………いや。」
そのまま、視線を落とし、日記を読む。
------------
〇月〇日。
アニエスが妊娠した。
俺の子では無いことは明らかだ。
ジルの子か?と問い詰めた。けれど、泣くばかりで答えなかった。
もう、終わりだ。
明日、ジルに言おう。俺は、冷静でいられるだろうか?
------------
〇月〇日。
ジルには言えなかった。
朝から団長に呼び出された。
アニエスの子は、ジルの子だと知っていた。最悪だ。
公表すると言うので、要求通りに金を払った。
どうして、金を払ったのか、自分でも不思議だ。意味が分からない。
ただ、もし、公表されれば、アニエスは社交界から抹殺されてしまうだろう。生きているのも辛くなるだろう。
そうなってはいけない。なんとかしなくては…。
ただ、自業自得だろう?と、そんな声が頭をよぎる。
それなのに…あぁ、おれは、今もまだ、アニエスを愛しているのか。
なぁ、ジル。おまえは、どうして……。
------------
〇月〇日。
アニエスが、自殺未遂をした。
間一髪だったが、侍女が気がついて止めてくれた。子供にも問題ないそうだ。よかった。
ジルに相談したい。けれど、アニエスはジルの子では無いと言う。ただただ、彼女は泣くばかりで、それ以上は話にならない。
どうすればいいんだ。
-----------
〇月〇日。
団長から、ジルを殺せと言われた。
前線に出て、ある場所に誘き出せと。そこで刺客が待っている手はずだそうだ。
なんだか、ホッとした。
ジルなんて死ねばいい。
親友だと思っていたのに。信じていたのに。俺が、どれだけ苦しんで来たか、あいつは何も知らない。何も知らずに俺を裏切った。裏切ったのは、あいつだ。
そうだ。ジルなんか、死ねばいいんだ。
-----------
ジルヴィスは、そこまで読んで、自分の手が震えているのに気がついた。
ルシオ。
おまえは俺を、1年も前から疑っていた。
ずっと、俺を憎んでいた。
その時だった。廊下をバタバタバタッ!と駆け抜けて来る音がした。
「ジル!!」
突然現れたのは、リオンだった。
血相変えて部屋に飛び込んで来た。
「リオン?」
「大変です!ジル!早く来てください!緊急事態です!」
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