私と騎士様の危い愛

月野さと

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43話 最後の日記

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 俺は、日記を最後まで読み切り、それを閉じた。
 そして、部屋の扉の前まで行くと、その日記をアニエスに手渡す。

「ジル?」
「これは、ルシオの日記だ。」
「ルシオの…」
「なぁ、アニエス。俺はおまえを、決して許しはしない。」

 そう、言って、家を出た。
 
 黙って聞いていたリオンは、玄関を出る時に、ちらりと振り返る。
 侍女に支えられて、泣き出す女性の姿が見えた。

「何があった?」
 ジルの声に、すぐさま反応する。
「それが!ミレイが娼婦に変装して潜入してます!」
「!?何?!」
「とにかく急いでください!」   
 ミレイが娼婦にって、もはや、意味が分からないのだが、とにかく急ぐことにした。
 
 ジルは走りながら、さっき見た、最後のページを思い出す。
 目頭が熱くなり、眉をしかめる。
 こらえきれなくなり、涙が頬を伝う。
 右手で涙を拭いて、リオンに言った。
「おい、リオン!」
「はい!」
「おまえとダンには、本当に感謝している!今、俺が信頼できるのは、お前達だけだ!」
「え?…あ、はい!」  
 リオンは、ちょっと考えてから言った。
「ダンにも言ってあげてください!」
「もう、一生、誰にも言わん!!」
「………え?え~~~?」





 
----------
 
 〇月〇日。 
 ごめん。ジル。本当にごめん。
 俺が、バカだったんだ。
 よく考えればわかる事だ。
 ジルが裏切るわけなんか無かった。
 おまえは、誰よりも、裏切ることが嫌いなやつだ。

 明日、戦場に行く。
 そうなってみて、アニエスが白状したんだ。
 おなかの子の父親は、劇団のジルによく似た青年だそうだ。優しくて、爽やかな青年だった頃のジルに似ていたそうだ。結婚してから、お前が冷たく接するようになって、寂しさと、出来心で、その男と関係を持ち、子供が出来てしまったのだという。
 きっと、今も、アニエスは、お前が好きなんだろう。

 今日は、お前に宛てて、最後の日記を書いている。
 ジル。
 俺は、アニエスを愛してる。出会った時から、ずっと。どうしようも無い位、好きなんだ。
 アニエスが、誰にも知られたく無いって言うんだ。知られるくらいなら死にたいと…。たぶん、特にお前には、知られたく無いのだろう。だから、おまえには言わないで行く。

 ただ、ごめん。
 おまえを殺せる刺客なんて、そうそう居ないだろう?だから、すっごいのを3人も雇ったんだ。あの団長もかなり本気だ。俺が、責任とって刺客をたおしておく。……でも、自信ないなぁ~。あはは。
 なぁ、もしも、俺が生きて帰ってこれたら、おまえは、俺を許してくれるだろうか?
 俺はおまえを、疑った。1年間もだ。殺そうとまでした。そんな俺を、ジルは許してくれるかな?
 こんな俺を、許してくれないか?
 
 それと、もし、帰ってこれなかったら。
 今、おまえは、この日記を読んでいるんだよな。
 ジル。
 ロドリスに気を付けろ。あいつは、皇太子や神官達と手を組んで、お前の命を狙っている。
 とにかく、あいつの言葉に惑わされるなよ。

 ジル。それと、おまえはもう、1人じゃない。
 気づいてないのかもしれないけど、ダンやリオンは特に、おまえを信頼してる。
 あいつらが、きっと、ジルを助けてくれると信じてる。
 
 じゃぁ、ジル。元気で。
  
 また、いつか、一緒に酒でも飲もう。
 










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