吸血鬼と愛の鍵

月野さと

文字の大きさ
4 / 24

第4話

しおりを挟む
 ルナルドは、ジルベールを睨みつけた。
 しかし、ジルベールは見せつけるように、リリアナの髪にキスをした。

「貴様!」
 ルナルドが怒りを露わにすると、ジルベールはニッコリと笑う。
「そんなに怒ることはないだろう?彼女に一目惚れしてしまったんだよ。」
「なんだと?!」
 ルナルドは、ジルベールの胸ぐらを掴む。
「おいおい。何もおかしなことじゃないだろう?君の妹は、とても魅力的だ。純真無垢な感じが、男心をくすぐるし、好意を抱いてもおかしく無いだろう?それとも何かい?君の妹を口説くには、お兄様の許しが必要なのかい?」

 周囲の生徒たちがザワつきはじめる。
 私は立ち上がって、お兄様の手を握った。
「お兄様、私は大丈夫です。手を離して。」
 ルナルドは、周囲に目を移して、仕方ないと言わんばかりにジルベールの服から手を離した。
「ジルベール。二度と妹に触れるな。名家の令嬢として最良の婚約者をこれから決めるところだ。変な噂が立っては傷がつく。」
 そう言い捨てると、ジルベールは立ち上がって、ルナルドを睨む。
「由緒正しき伯爵家ということは知っているよ。だけど、爵位は僕の方が上だよ?口には気を付けたまえ。」

 ジルベール・ロジャーは、ロジャー侯爵家の長男だ。1代で侯爵位を得たロジャー家と、歴史の長いスペンサー伯爵家では、社会的な力関係は微妙ではある。しかしながら、侯爵家は侯爵家だ。敬意を示さなければならないだろう。

 微妙な状況をなんとかしようと、リリアナは立ち上がった。
「あの、私、もう教室に戻ります!ジルベール様も、戯れはよしてください。」
 その場を離れようとしたリリアナの手を、ジルベールは掴んだ。
「待って!僕は本気だよ。冷やかしで、君に近づいたんじゃない。それだけは、解って欲しい。」
 ジルベール様の真剣な顔に、リリアナは火がついたように顔を真っ赤にした。
「し・・・失礼します!!」

 恥ずかしくなって、いたたまれなくなって、その場を走って逃げた。


 走って逃げて行くうちに、校舎の裏にある厩に来てしまう。
 紳士淑女の通う学園らしく、乗馬クラブもあり、良い馬が学園に飼育されていた。

 リリアナは、白馬や美しい毛並みの真っ黒くて、賢い馬も好きだった。
 どうしたの?と聞いてくるように、黒い毛並みの馬が、顔を出してくる。リリアナは鼻筋をさすって、頬を寄せる。
 馬の体温を感じて、ホッとする。

 ホッとして、なんとなく思う。

 お兄様は、まだ、私の事を思っていてくれる?
 だから、あんなに怒った?

 なんとなく、馬に乗りたくなって、手慣れた動作で鞍をとりつけて外に出す。
 スカートのままで、馬の背中に乗ると、手綱を引いて走らせた。

 走らせているうちに、不思議な気持ちになる。
 風を切って、広がる景色に目を移していると、ふわふわと記憶が蘇ってきた。


 1度、一線を越えてしまった私達は、歯止めが利かなくなっていた。
 3日と置かずに、兄は深夜になると私の部屋に来た。

 両親も寝静まった深夜。真っ暗な部屋の中に静かに入って来て、ベッドに潜り込んで来る。
 私が眠ってしまっていると、キスをしたり服の中に手を入れてきて、激しく愛撫するので、寝ていられなくなる。目を開けると、ルナルドは嬉しそうに笑って言う。
「好きだ。」
 息づかいさえも響き渡るような、シンと静まり返った深い夜。私たちは、声を押し殺して抱きあった。
 シーツの擦れる音にすら、バレてしまうのではないか?と、私は気が気じゃ無かった。部屋には、チュッというキスの音や、秘部を吸われる水音。自分の心臓の音までもが気になってしまう。
 緊張感からなのか、体を固くしてしまい、挿入する時にはいつも、ルナルドは少しキツそうに声をもらした。

「好きだ。リリアナ。」
 耳元で小さく囁かれて、それがいつもの合図で、ゆっくりと挿入してくる。
 私は、必死で声をこぼさないように耐えた。徐々に激しく挿抜されていって、水音が部屋中に響き渡り、どうしようもなく気持ち良くなる。
 熱くて固い男性器が、私の弱い部分を容赦なく貫いてくる。
 大好きな人と1つになっているという幸福感と、与えられる快感に、涙がこぼれてくる。
「はぁっ。はぁっ。はぁっ。はぁっ!」 
 なんとか息を吐いて、懇親の力でシーツを握りしめて、必死で声を我慢してきたのに。ある日、私は小さく声をこぼしてしまった。

「・・・はっ・・ぁんっ。」
 その瞬間、ルナルドの動きが一瞬止まった。
 うつ伏せだった私の顔を、大きな手で後ろに向かせて唇で唇を覆われる。そのまま、激しく後ろから突かれた。パン!パン!パン!と大きな音が鳴って、強い衝撃に体が壊れそうだと思った。

 あまりの激しさに、私はその後のことが朦朧としていて覚えていない。


 次の休日に、ルナルドは「遠乗りに行こう」とリリアナを誘った。
 馬に乗って、人気の無い林に入ると、ルナルドはリリアナを抱きしめて言った。

「ここなら、誰も来ない。リリアナの感じてる声が聞きたい。」
 天気の良い昼間の外で、何を言うのかと驚いた。
「ルナルド!何言ってるの?こ・・こんな所でっ。」
 顔を真っ赤にして慌てふためいて言うと、ルナルドは真剣な顔で、木にリリアナを押し付けて逃げられないように追い込む。
「嫌?いつも、リリアナは声1つたてないだろう?最中に、好きだとも言ってくれない。」
「そ・・・それはっ!だって、気がつかれたら大変だもの!」
「解ってる。だけど、俺だけじゃないって実感が欲しい。リリアナが、俺を愛してるって、感じたい。」
 我慢がきかなくなったルナルドは、噛みつくようにキスをしてくる。
 体を密着させて、服の上からでもわかるほどに、ゴリゴリと固くなった男性器を押し付けてくる。お尻を優しく包み込む様に触りながら、懇願する。
「リリアナ・・・リリアナっ!俺の事、好きか?ここに触れたら、気持ちいい?知りたいんだ。何もかも。教えてくれないか?」
 半ば強引に、ルナルドはリリアナを抱いた。

 誰か来はしないかと、気が気じゃ無くて、恥ずかしくて、結局は必至で声を出来るだけ堪えた。


 
 馬を走らせながら、そんな事を思い出していた。

 自然と涙が出て来る。

「お兄様・・・ルナルド・・・。どうして?なんで?恋人って、何よ?」
 
 両親を説得してくれるって、言ったじゃない。

「好きよ。大好きよ!」
 馬を降りて、地面にうずくまる。


 
 頭上に、コウモリが1匹、飛び回る。


 顔を上げて、空を見上げた時だった。
 馬が駆けて来る音がする。
 その音の方に顔を向けると、馬に乗った誰かが近づいて来た。

「・・・お兄様・・?」
 そうだったら良いのに、と思った事が言葉になってしまう。だけど、ルナルドではなかった。

「リリアナ嬢?」
 白馬に乗ったその人は、ジルベールだった。
「どうしたの?こんな所で。午後の授業は始まってしまったよ?」

 ばつが悪く、俯きながら立ち上がる。
「授業をさぼりたい時って、誰にでもありますでしょう?」
 場を胡麻化すために、そんなことを言ってみた。すると、ジルベールは笑った。
「あはは。なるほどね。」

 ジルベールは、空を見上げる。
 コウモリが、スーーーッと飛び去って行く。

「でもね。この物騒な世の中で、女性1人は危ないよ。吸血鬼だって街をうろついているんだから。」

 リリアナは、自分の乗って来た黒い馬の手綱を手に取る。
「吸血鬼?こんな昼間にですか?」
 リリアナの質問に、ジルベールは得意げに不適に笑って言う。
「今の吸血鬼はね、日光に当たっても灰にならないし、十字架を怖がらない。ニンニクだって平気なんだよ。知らぬ間に、近づいて来て襲われてしまうよ。」
 へぇ、そうなんだ。

 馬に乗って、2人で学校に戻る。

 ジルベールの隣を走りながら、リリアナは思った。
 この若者は、どこか不思議な感じがする。何が?と言われると解らないのだけれど。
 なんて言うのだろうか?
 体中の血が、ゾワゾワとしだす感じ。

 優しそうな感じなのに、何故なんだろうか。



 厩舎に馬を戻して、校舎に戻ろうとする。

「・・・」
 強い風が後ろから吹き抜けて来て、なにか聞こえたような気持ちになる。
 なんだろう?と、後ろを振り向く。
 校舎の裏には厩舎があって、その後ろには、今は使われていない旧校舎がある。
 
 ジルベールも立ち止まり、リリアナの視線の先を見る。そして、言った。
「旧校舎が気になる?」
「気になるというか、なんか・・・怖いですよね。薄暗いし。旧校舎って、取り壊さないのかしら。」 
「確かに、そうだね~。まぁ、でも夏場になると、学生たちが肝試しに入って遊んでるらしいよ?行ったことない?」
 ニコニコと楽しそうに言うので、ジルベールは怖くないようだった。
「そうゆうの嫌いです。話を聞くだけでも、夜にトイレに行けなくなります。」
「へぇ~。確か、君の住んでる伯爵邸なんかは、築年数も古いから、夜のトイレは怖そうだね?」
 そうゆう話をしたくないのに、この男は、どうやら怪談話が好きなくちらしい。
「そうですよ。母が再婚して、今のお屋敷に来たばかりの頃は、お兄様に、よくトイレに一緒に行ってもらってました。」
 ジルベールは、噴き出して笑い出す。
「本当に仲の良い兄妹なんだね!」 
「子供の頃の話ですよ?」
 バカにしてるのかなぁ~と、彼を見上げた時だった、その先に、人影を見た。

 旧校舎に向かって歩いて行く人が居た。
 
「お兄様・・・?」

 人気の無い旧校舎に、1人。
 ルナルドは、周囲を気にしながら入って行った。




 
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

〖完結〗終着駅のパッセージ

苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。 彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。 王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。 夫と婚姻してから三年という長い時間。 その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。 ※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。

氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募予定作品です。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。

黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、 妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。 ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。 だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。 新たに当主となった継子は言う。 外へ出れば君は利用され奪われる、と。 それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、 私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。 短いお話です。

処理中です...