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第6話
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「リリアナ?大丈夫?」
午後の授業が終わり、親友のセシルが、心配そうに聞く。
今日は色々あって、授業を殆どさぼってしまって、午後の授業は上の空で、ボーーーっとしていたので、セシルは心配してくれていた。
「ねぇ、セシル。ダンピールって知ってる?」
「え?あぁ、聞いたことあるわよ。吸血鬼を退治できる、唯一の存在よね。」
「知ってるんだ?凄い!」
「授業でもチラッとやったことあると思うけど?あなた、ホラー嫌いだし怖いモノが苦手だから、ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
ダンピール。
それは、吸血鬼と人間の母親を両親に持つ、ハーフだ。そもそも、そんな混血児が産まれてくるのは、あまり無い。ダンピールが発見されると、国は吸血鬼退治の役目を任せ、爵位を与えて丁重に扱って囲い込む。ダンピールが居れば、国は吸血鬼から国民を守る事ができるからだ。その存在は、救世主に近いものがある。
そんな貴重な存在は、公にはされない。他国に知られれば争いの種になり、吸血鬼に知られると、退治することが困難になり逃げられてしまうからだ。だからダンピールが存在していたとしても、誰も知ることは無い。国の重要機密となる。
セシルの説明を聞いていて、リリアナは神妙な顔になる。
どうして、そんな重要機密を簡単に暴露したのだろうか?・・・いや、重要機密を暴露したからこそ、その見返りに体の関係を迫っているのだろう。
例えば、私がそれを断ったとしても、困るのはスペンサー伯爵家だ。
どうしよう・・・。
いいえ、迷う必要なんてあるの?ルナルドが、あの吸血鬼に食い殺されてしまう。それはダメ。迷う事なんてない。覚悟を決めるのよ、リリアナ!私は、ルナルドを見捨てる気?
必死で、自分に言い聞かせるけれども・・・どうしても、決断できない。
嫌だ。
ルナルド以外の男性に、抱かれるなんて・・・絶対に嫌だ!!死んでも嫌!
でもでも、このままじゃ、食い殺されて・・・・あーーーーー!!もう!!どうしたら良いの!?ウジウジ考えて、堂々巡りだなんて、時間の無駄!解ってるはずでしょ?答えは1つよ!セックスなんてたいしたこと無いわ!どうってことない!
冷静に考えましょう?死んでしまったらお終いよ?生きていれば、生きてさえいれば、それでいいのよ?そうでしょう?そう・・・・・だけど・・・・だけど。
やだっーーーーー!!!
ダメ!嫌!!
いやいや、嫌じゃない!ルナルドを助けるのよ!私!しっかりして!!
そんな、葛藤の中にいるリリアナに、セシルが言った。
「ちょっと、大丈夫?本当に、今日はうちに来る?」
下校時刻になり、教室を出て、廊下を歩き、門の前まで百面相しながら考え込む、リリアナを見守ってくれていた。
「・・・家。」
そうか、家に帰れば、ルナルドが居る。
しかも、両親には、こそこそ兄と付き合っていたことが、バレているんだっけ?気まずいけれど、色々と話を聞いた方がいいのもある・・・。
セシルは、自分の馬車の前で待っていた付き人に声をかける。
「ねぇ、今日、リリアナを家に招待しようと思うのだけど、スペンサー伯爵家の馬車はどこかしら?外泊することを伝えなきゃ。」
すると、付き人が伝えて参りますと言う。
「さぁ、乗って。今日は女子会よ♪」
先に馬車に乗り込んで、楽しそうにセシルが言う。
セシルの手をとって、馬車に乗り込もうとした時だった。
急に、グラリと眩暈がする。
・・・え?
馬車に乗り込もうと足をかけた瞬間に、脳裏に映像が浮かんだ。
それは、土砂降りの雨の日だ。
視界が悪くて、灰色の世界。
私は、馬車の中で1人、窓を開けて、震えながら話を聞いている。
ルナルドの声が、響いてくる。
「俺は本気です!リリアナと結婚させてください!」
「バカなことを言うな!そんなものは長い人生で一瞬の気の迷いだ!」
父の伯爵の声だった。それから母の声が続く。
「ルナルド。とにかく屋敷に帰りましょう。それから話しましょう。ね?」
「いいえ、戻りません!リリアナを騙したのは、あなた方だ!信用できない。」
「おまえというやつは!!」
バシッ!!
お義父様が、鞭でルナルドを打った。
これは・・・私の記憶?
ガクガクガク・・・と、勝手に体が震えだす。
馬車から、手を離し、後ずさりする。
「リリアナ?どうしたの?」
セシルは不思議そうに、馬車の中から手を伸ばす。
私は、ゆっくりと、首を振る。
「・・・怖い・・・」
「え?どうしたの?リリアナ?」
「こ・・・怖いの。私・・・馬車が・・・怖い・・・」
勝手に涙が溢れてきて、立っていられなくなる。セシルが飛び降りてきて、リリアナを抱きしめた。
「リリアナ?!大丈夫?」
事態に気がついた、スペンサー家の馬車の御者とセシルの家の付き人が、走って来た。
「リリアナお嬢様!どうされましたか?!ご気分でも?」
ワイワイと騒ぎになってしまい、そこへルナルドが現れた。
「どうした?!」
事情を話すと、ルナルドはリリアナの肩を抱く。
「馬を連れてきてくれないか?俺が乗せて帰る。」
馬に乗り、振り落とされないように、ルナルドに抱きつく。
学園が見えなくなる場所に来るまで、ルナルドもリリアナも、何も話さなかった。
ただ、黙って、体温を感じて抱きしめる。
学園と家の中間位に差し掛かったところで、リリアナは勇気を振り絞って言った。
「ルナルド・・・・」
そう呼んで、ぎゅうっと力を込めて抱きしめる。
「教えて欲しいの。お願い。5日前に何があったのか、教えて。」
すると、ルナルドはスピードを落として、馬を止めた。
馬上で抱き着いたままで、彼の顔を見上げる。
ルナルドも、リリアナを見下ろした。口を開きかけて、そして、ギュッと口を結んで地面に視線を落とす。何か言い難いことがあるのだろう。
だけど、私は、知りたい。
「教えて。私のこと、まだ好き?」
泣きそうな声になってしまって、震える声にも構わずに振り絞る。
「私は、ルナルドが好き!今までも、今も、これからもずっと。大好き。」
目を見開いて、ルナルドは私の言葉を聞いて、最後は目を潤ませて眉をしかめた。
唇が近づいてきて、目を閉じて、抱きつきながらキスをした。
口を開けると舌が入ってきて、互いに絡め合う。
この1ヵ月、あなたにキスの仕方も、男性の受け入れ方も教えられたの。吸い付くようなキスも、噛みつくようなキスも、遊んでいるかのような、ついばむようなキスも。
愛していると、声に出して伝えられない夜でも。何度も、心の中で叫んだ。
いつかの夜のように。
大きな腕で、力強く抱きしめられて、激しいキスをされる。私も必死に、ルナルドに抱きついて、それに答えた。
「リリアナっ・・・愛してる。」
1つになってしまうんじゃないかって位、ルナルドはリリアナを抱きしめて言った。
「この先、何があったとしても・・・リリアナ、約束してくれ。傍にいると。ずっと、一緒にいると。全てを知って・・・俺を・・・許してくれなくてもいいから。」
そうして、ルナルドは話し始めた。
私は、話を聞いているうちに、どんどん思い出していく。
午後の授業が終わり、親友のセシルが、心配そうに聞く。
今日は色々あって、授業を殆どさぼってしまって、午後の授業は上の空で、ボーーーっとしていたので、セシルは心配してくれていた。
「ねぇ、セシル。ダンピールって知ってる?」
「え?あぁ、聞いたことあるわよ。吸血鬼を退治できる、唯一の存在よね。」
「知ってるんだ?凄い!」
「授業でもチラッとやったことあると思うけど?あなた、ホラー嫌いだし怖いモノが苦手だから、ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
ダンピール。
それは、吸血鬼と人間の母親を両親に持つ、ハーフだ。そもそも、そんな混血児が産まれてくるのは、あまり無い。ダンピールが発見されると、国は吸血鬼退治の役目を任せ、爵位を与えて丁重に扱って囲い込む。ダンピールが居れば、国は吸血鬼から国民を守る事ができるからだ。その存在は、救世主に近いものがある。
そんな貴重な存在は、公にはされない。他国に知られれば争いの種になり、吸血鬼に知られると、退治することが困難になり逃げられてしまうからだ。だからダンピールが存在していたとしても、誰も知ることは無い。国の重要機密となる。
セシルの説明を聞いていて、リリアナは神妙な顔になる。
どうして、そんな重要機密を簡単に暴露したのだろうか?・・・いや、重要機密を暴露したからこそ、その見返りに体の関係を迫っているのだろう。
例えば、私がそれを断ったとしても、困るのはスペンサー伯爵家だ。
どうしよう・・・。
いいえ、迷う必要なんてあるの?ルナルドが、あの吸血鬼に食い殺されてしまう。それはダメ。迷う事なんてない。覚悟を決めるのよ、リリアナ!私は、ルナルドを見捨てる気?
必死で、自分に言い聞かせるけれども・・・どうしても、決断できない。
嫌だ。
ルナルド以外の男性に、抱かれるなんて・・・絶対に嫌だ!!死んでも嫌!
でもでも、このままじゃ、食い殺されて・・・・あーーーーー!!もう!!どうしたら良いの!?ウジウジ考えて、堂々巡りだなんて、時間の無駄!解ってるはずでしょ?答えは1つよ!セックスなんてたいしたこと無いわ!どうってことない!
冷静に考えましょう?死んでしまったらお終いよ?生きていれば、生きてさえいれば、それでいいのよ?そうでしょう?そう・・・・・だけど・・・・だけど。
やだっーーーーー!!!
ダメ!嫌!!
いやいや、嫌じゃない!ルナルドを助けるのよ!私!しっかりして!!
そんな、葛藤の中にいるリリアナに、セシルが言った。
「ちょっと、大丈夫?本当に、今日はうちに来る?」
下校時刻になり、教室を出て、廊下を歩き、門の前まで百面相しながら考え込む、リリアナを見守ってくれていた。
「・・・家。」
そうか、家に帰れば、ルナルドが居る。
しかも、両親には、こそこそ兄と付き合っていたことが、バレているんだっけ?気まずいけれど、色々と話を聞いた方がいいのもある・・・。
セシルは、自分の馬車の前で待っていた付き人に声をかける。
「ねぇ、今日、リリアナを家に招待しようと思うのだけど、スペンサー伯爵家の馬車はどこかしら?外泊することを伝えなきゃ。」
すると、付き人が伝えて参りますと言う。
「さぁ、乗って。今日は女子会よ♪」
先に馬車に乗り込んで、楽しそうにセシルが言う。
セシルの手をとって、馬車に乗り込もうとした時だった。
急に、グラリと眩暈がする。
・・・え?
馬車に乗り込もうと足をかけた瞬間に、脳裏に映像が浮かんだ。
それは、土砂降りの雨の日だ。
視界が悪くて、灰色の世界。
私は、馬車の中で1人、窓を開けて、震えながら話を聞いている。
ルナルドの声が、響いてくる。
「俺は本気です!リリアナと結婚させてください!」
「バカなことを言うな!そんなものは長い人生で一瞬の気の迷いだ!」
父の伯爵の声だった。それから母の声が続く。
「ルナルド。とにかく屋敷に帰りましょう。それから話しましょう。ね?」
「いいえ、戻りません!リリアナを騙したのは、あなた方だ!信用できない。」
「おまえというやつは!!」
バシッ!!
お義父様が、鞭でルナルドを打った。
これは・・・私の記憶?
ガクガクガク・・・と、勝手に体が震えだす。
馬車から、手を離し、後ずさりする。
「リリアナ?どうしたの?」
セシルは不思議そうに、馬車の中から手を伸ばす。
私は、ゆっくりと、首を振る。
「・・・怖い・・・」
「え?どうしたの?リリアナ?」
「こ・・・怖いの。私・・・馬車が・・・怖い・・・」
勝手に涙が溢れてきて、立っていられなくなる。セシルが飛び降りてきて、リリアナを抱きしめた。
「リリアナ?!大丈夫?」
事態に気がついた、スペンサー家の馬車の御者とセシルの家の付き人が、走って来た。
「リリアナお嬢様!どうされましたか?!ご気分でも?」
ワイワイと騒ぎになってしまい、そこへルナルドが現れた。
「どうした?!」
事情を話すと、ルナルドはリリアナの肩を抱く。
「馬を連れてきてくれないか?俺が乗せて帰る。」
馬に乗り、振り落とされないように、ルナルドに抱きつく。
学園が見えなくなる場所に来るまで、ルナルドもリリアナも、何も話さなかった。
ただ、黙って、体温を感じて抱きしめる。
学園と家の中間位に差し掛かったところで、リリアナは勇気を振り絞って言った。
「ルナルド・・・・」
そう呼んで、ぎゅうっと力を込めて抱きしめる。
「教えて欲しいの。お願い。5日前に何があったのか、教えて。」
すると、ルナルドはスピードを落として、馬を止めた。
馬上で抱き着いたままで、彼の顔を見上げる。
ルナルドも、リリアナを見下ろした。口を開きかけて、そして、ギュッと口を結んで地面に視線を落とす。何か言い難いことがあるのだろう。
だけど、私は、知りたい。
「教えて。私のこと、まだ好き?」
泣きそうな声になってしまって、震える声にも構わずに振り絞る。
「私は、ルナルドが好き!今までも、今も、これからもずっと。大好き。」
目を見開いて、ルナルドは私の言葉を聞いて、最後は目を潤ませて眉をしかめた。
唇が近づいてきて、目を閉じて、抱きつきながらキスをした。
口を開けると舌が入ってきて、互いに絡め合う。
この1ヵ月、あなたにキスの仕方も、男性の受け入れ方も教えられたの。吸い付くようなキスも、噛みつくようなキスも、遊んでいるかのような、ついばむようなキスも。
愛していると、声に出して伝えられない夜でも。何度も、心の中で叫んだ。
いつかの夜のように。
大きな腕で、力強く抱きしめられて、激しいキスをされる。私も必死に、ルナルドに抱きついて、それに答えた。
「リリアナっ・・・愛してる。」
1つになってしまうんじゃないかって位、ルナルドはリリアナを抱きしめて言った。
「この先、何があったとしても・・・リリアナ、約束してくれ。傍にいると。ずっと、一緒にいると。全てを知って・・・俺を・・・許してくれなくてもいいから。」
そうして、ルナルドは話し始めた。
私は、話を聞いているうちに、どんどん思い出していく。
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