11 / 24
第11話 4日前
しおりを挟む
翌日、目が覚めると、ルナルドの腕の中にいた。
大好きな人の顔が目の前にあって、肌から伝わる温もりも、その穏やかな寝息も、私を幸せな気持ちにした。
もう少しだけ、このままでいたくて、身動きを取らずに寝顔を見ていた。
外はまだ雨が降っているのだろう。雨音が響いている。
このまま、ずっと2人で助け合って、支え合って、きっと・・・。
そんな事を考えていたら、ルナルドの目が、ゆっくりと開いていく。ふぅ~っと、息を吐きながら身動きをとって、視線が私の方を向く。
「・・・おはよう。もしかして、寝顔見てた?」
「うん。少年みたいな、子供の頃みたいに懐かしい顔してた。」
そう言うと、ポッと少しだけ頬を染めて、ルナルドは恥ずかしそうに片手で顔を隠す。
「なにそれ、恥ずかしすぎる。俺がリリアナの寝顔見たかったのに。」
なんだか愛おしくなって、そっと彼の頬に触れて、顔を近づける。
ルナルドも気がついて、唇と唇をかさねる。
抱きしめ合ってから、ルナルドが言った。
「雨・・・降ってるな。」
「うん。」
ルナルドは、リリアナの額にキスをすると言った。
「出来るだけ早めに、ここを出たい。」
真剣な顔を見て、私も頷く。
馬車に乗り込むと、昨日からの豪雨で、あまり道が良くないと言われる。
大きい街道を通りたくなかったルナルドは、渋い顔をしたけれども、しぶしぶその道を選んだ。
馬車が走り出して、30分ほどだっただろうか。
馬の嘶きと、馬車が止まる音がした。
何事かとルナルドは窓の外を見る。すると、大きな声が聞こえてきた。
「ルナルド!!いるんだろう?!出てこい!」
その大きな声は聞き覚えがあった。
「父上・・・」
ルナルドは、そう呟くと、ギリッと歯を食いしばる。
「ルナルド!!家と領地をどうする気だ!!さっさと出てくるんだ!」
お義父様の声に、体が震える。
馬車の外に出ようとする、ルナルドの手を握った。
ぎゅうっと握りしめて引っ張る私を、彼は見て、そっと手を乗せて言った。
「大丈夫。ここで待ってて。」
そう言って、雨の中に彼は出て行った。
「ルナルド!おまえ、どうする気だ?駆け落ちでもする気なのか?!」
お義父様の声が、雨と共に聞こえてくる。
「その通りです!俺の事は死んだとでも思ってください!」
「馬鹿な事を言うな!!家を捨てるなど、そんな身勝手なことなど許さん!!」
そこへ、ガラガラガラと、もう1台の馬車が到着して、雨の中を出て来たのは母だった。
「ルナルド!リリアナ!もうやめてちょうだい!お願いだから家に戻って!」
「リリアナ!いるんだろう?!お母様を悲しませるんじゃない!」
義父と母の声に、馬車から出て自分も話をしなくてはと思った瞬間、ルナルドの声がした。
「リリアナを、帰す気はありません!!!」
馬車の扉に手を置いて、私は開けようとした手を止めた。
「俺は、彼女無しで生きていけない!リリアナは、俺の全てです!ここまで頑張って来れたのも、笑って生きて来られたのも、リリアナが居たからだ。俺にはリリアナが特別な存在なんです!!」
そこまで・・・そんなふうに、私を思っていたなんて。
全然知らなかった。
嬉しくて、目頭が熱くなる。
ルナルドの声が、響いてくる。
「俺は本気です!リリアナと結婚させてください!」
少しの間があってから、お義父様の声がした。
「バカなことを言うな!そんなものは長い人生で一瞬の気の迷いだ!」
それから母の声が続く。
「ルナルド。とにかく屋敷に帰りましょう。それから話しましょう。ね?」
「いいえ、戻りません!リリアナを騙したのは、あなた方だ!信用できない。」
「おまえというやつは!!」
バシッ!!
お義父様が、鞭でルナルドを打った。
慌てて馬車の扉を開けて、叫んだ。
「やめて!!お義父様!やめて下さい!!」
馬車から降りようと足を延ばした瞬間だった。
ヒヒーーーーーン!!!
馬が大きく嘶き、ガラガラと崖が崩れ始め、馬が後退してぶつかり合い、ちょうど馬の足元に少量の土砂が流れ込んだことで、パニックになった馬が暴れた。
崖に車輪をとられて、グラリと馬車が傾く。
私の目には、急に馬車が覆いかぶさってきたようにしか見えなかった。
そのまま、上と下が解らなくなって、ぐるりと回転して10メートル下へと落ちた。
「リリアナ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
母の悲鳴と、ルナルドの声を聞いた気がした。
そこからは、何も見えない。
何も思い出せない・・・。
ルナルドが話してくれることで、映像のように頭に流れ込んできて、私は1ヵ月前からのことを思い出した。馬車に乗るのが怖かった意味が分かった。だけど・・・。
「私・・・崖から落ちたんだわ。物凄い衝撃で、痛くて、苦しくて・・・・それから」
「思い出さなくていい!その時の事なんか、思い出さないでいい!」
馬の上で、ルナルドはリリアナを抱きしめる。
馬で学校から家に向かって、ゆっくりと進み、もう少しで伯爵家が見えてくるというところだった。抱きしめる、ルナルドの腕に手を置く。
「でも・・・どうして?崖から落ちたはずなのに、私・・・どこもなんともない。」
ルナルドを見ると、眉を寄せて、少し言いずらそうにして口を開きかけた。
その時、スーーーッとコウモリが飛んで来て、言った。
「話は終わったのかい?」
コウモリは女の声で、しゃべった。
ルナルドは、警戒する様子を見せて、馬の手綱を持ち直す。
「話しかけてくるな!」
ルナルドが言うと、コウモリはリリアナを見て、目の前で飛びながら言った。
「話は終わったんだろう?今日は、ルナルドじゃなくて、お前に話があるんだ。ついてきな。」
「え?私?」
「そうだよ。コウモリに変身するのは、簡単だ。念じるだけだ。さっさとしな!」
ルナルドは叫んで、リリアナを片手で抱え込む。
「ダメだ!やめろ!リリアナ!こいつの話を聞くな!」
もはや、なんの話をしているのか、わけがわからなくなる。
「イライラさせるんじゃないよ!このあたしが、面倒見てやろうってのに!仲間同士の話に人間が入ってくるんじゃない!!」
くるりと、私の方に向き直って、コウモリは言った。
「ほら、何ぐずぐずしてるんだい。あんた、吸血鬼として、一生生きていくんだ。早くコウモリに変身しな。」
・・・・え?
「私・・・?」
「・・・はぁ。まだ話してないのかい。リリアナ。あんたは吸血鬼になったんだ。教えてやるから、早く来な。」
・・・・え?
大好きな人の顔が目の前にあって、肌から伝わる温もりも、その穏やかな寝息も、私を幸せな気持ちにした。
もう少しだけ、このままでいたくて、身動きを取らずに寝顔を見ていた。
外はまだ雨が降っているのだろう。雨音が響いている。
このまま、ずっと2人で助け合って、支え合って、きっと・・・。
そんな事を考えていたら、ルナルドの目が、ゆっくりと開いていく。ふぅ~っと、息を吐きながら身動きをとって、視線が私の方を向く。
「・・・おはよう。もしかして、寝顔見てた?」
「うん。少年みたいな、子供の頃みたいに懐かしい顔してた。」
そう言うと、ポッと少しだけ頬を染めて、ルナルドは恥ずかしそうに片手で顔を隠す。
「なにそれ、恥ずかしすぎる。俺がリリアナの寝顔見たかったのに。」
なんだか愛おしくなって、そっと彼の頬に触れて、顔を近づける。
ルナルドも気がついて、唇と唇をかさねる。
抱きしめ合ってから、ルナルドが言った。
「雨・・・降ってるな。」
「うん。」
ルナルドは、リリアナの額にキスをすると言った。
「出来るだけ早めに、ここを出たい。」
真剣な顔を見て、私も頷く。
馬車に乗り込むと、昨日からの豪雨で、あまり道が良くないと言われる。
大きい街道を通りたくなかったルナルドは、渋い顔をしたけれども、しぶしぶその道を選んだ。
馬車が走り出して、30分ほどだっただろうか。
馬の嘶きと、馬車が止まる音がした。
何事かとルナルドは窓の外を見る。すると、大きな声が聞こえてきた。
「ルナルド!!いるんだろう?!出てこい!」
その大きな声は聞き覚えがあった。
「父上・・・」
ルナルドは、そう呟くと、ギリッと歯を食いしばる。
「ルナルド!!家と領地をどうする気だ!!さっさと出てくるんだ!」
お義父様の声に、体が震える。
馬車の外に出ようとする、ルナルドの手を握った。
ぎゅうっと握りしめて引っ張る私を、彼は見て、そっと手を乗せて言った。
「大丈夫。ここで待ってて。」
そう言って、雨の中に彼は出て行った。
「ルナルド!おまえ、どうする気だ?駆け落ちでもする気なのか?!」
お義父様の声が、雨と共に聞こえてくる。
「その通りです!俺の事は死んだとでも思ってください!」
「馬鹿な事を言うな!!家を捨てるなど、そんな身勝手なことなど許さん!!」
そこへ、ガラガラガラと、もう1台の馬車が到着して、雨の中を出て来たのは母だった。
「ルナルド!リリアナ!もうやめてちょうだい!お願いだから家に戻って!」
「リリアナ!いるんだろう?!お母様を悲しませるんじゃない!」
義父と母の声に、馬車から出て自分も話をしなくてはと思った瞬間、ルナルドの声がした。
「リリアナを、帰す気はありません!!!」
馬車の扉に手を置いて、私は開けようとした手を止めた。
「俺は、彼女無しで生きていけない!リリアナは、俺の全てです!ここまで頑張って来れたのも、笑って生きて来られたのも、リリアナが居たからだ。俺にはリリアナが特別な存在なんです!!」
そこまで・・・そんなふうに、私を思っていたなんて。
全然知らなかった。
嬉しくて、目頭が熱くなる。
ルナルドの声が、響いてくる。
「俺は本気です!リリアナと結婚させてください!」
少しの間があってから、お義父様の声がした。
「バカなことを言うな!そんなものは長い人生で一瞬の気の迷いだ!」
それから母の声が続く。
「ルナルド。とにかく屋敷に帰りましょう。それから話しましょう。ね?」
「いいえ、戻りません!リリアナを騙したのは、あなた方だ!信用できない。」
「おまえというやつは!!」
バシッ!!
お義父様が、鞭でルナルドを打った。
慌てて馬車の扉を開けて、叫んだ。
「やめて!!お義父様!やめて下さい!!」
馬車から降りようと足を延ばした瞬間だった。
ヒヒーーーーーン!!!
馬が大きく嘶き、ガラガラと崖が崩れ始め、馬が後退してぶつかり合い、ちょうど馬の足元に少量の土砂が流れ込んだことで、パニックになった馬が暴れた。
崖に車輪をとられて、グラリと馬車が傾く。
私の目には、急に馬車が覆いかぶさってきたようにしか見えなかった。
そのまま、上と下が解らなくなって、ぐるりと回転して10メートル下へと落ちた。
「リリアナ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
母の悲鳴と、ルナルドの声を聞いた気がした。
そこからは、何も見えない。
何も思い出せない・・・。
ルナルドが話してくれることで、映像のように頭に流れ込んできて、私は1ヵ月前からのことを思い出した。馬車に乗るのが怖かった意味が分かった。だけど・・・。
「私・・・崖から落ちたんだわ。物凄い衝撃で、痛くて、苦しくて・・・・それから」
「思い出さなくていい!その時の事なんか、思い出さないでいい!」
馬の上で、ルナルドはリリアナを抱きしめる。
馬で学校から家に向かって、ゆっくりと進み、もう少しで伯爵家が見えてくるというところだった。抱きしめる、ルナルドの腕に手を置く。
「でも・・・どうして?崖から落ちたはずなのに、私・・・どこもなんともない。」
ルナルドを見ると、眉を寄せて、少し言いずらそうにして口を開きかけた。
その時、スーーーッとコウモリが飛んで来て、言った。
「話は終わったのかい?」
コウモリは女の声で、しゃべった。
ルナルドは、警戒する様子を見せて、馬の手綱を持ち直す。
「話しかけてくるな!」
ルナルドが言うと、コウモリはリリアナを見て、目の前で飛びながら言った。
「話は終わったんだろう?今日は、ルナルドじゃなくて、お前に話があるんだ。ついてきな。」
「え?私?」
「そうだよ。コウモリに変身するのは、簡単だ。念じるだけだ。さっさとしな!」
ルナルドは叫んで、リリアナを片手で抱え込む。
「ダメだ!やめろ!リリアナ!こいつの話を聞くな!」
もはや、なんの話をしているのか、わけがわからなくなる。
「イライラさせるんじゃないよ!このあたしが、面倒見てやろうってのに!仲間同士の話に人間が入ってくるんじゃない!!」
くるりと、私の方に向き直って、コウモリは言った。
「ほら、何ぐずぐずしてるんだい。あんた、吸血鬼として、一生生きていくんだ。早くコウモリに変身しな。」
・・・・え?
「私・・・?」
「・・・はぁ。まだ話してないのかい。リリアナ。あんたは吸血鬼になったんだ。教えてやるから、早く来な。」
・・・・え?
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。
黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、
妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。
ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。
だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。
新たに当主となった継子は言う。
外へ出れば君は利用され奪われる、と。
それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、
私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。
短いお話です。
恋い焦がれて
さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。
最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。
必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。
だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。
そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。
さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。
※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です
※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません)
※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。
https://twitter.com/SATORYO_HOME
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる