君の矛先

月野さと

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第10話

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 ビビアンの次は、メアリーのお茶会が開催された。
 
 流石はロッソ伯爵家といった所か、ふんだんにお金を使った豪華なお茶会だった。
 貴重な薔薇の花が各所に飾られて、部屋のカーテンや装飾も、昼のパーティーにはピッタリな物に変更し、楽師たちを呼んで、生演奏まである。王都で人気のある老舗の菓子職人まで呼んで、作らせたらしいお菓子たちは、見た目も素晴らしくて、貴族たちを喜ばせた。

 レオノーラは周囲を見渡して思う。 
 依然と明らかに違って、警備兵が増えた。
 普段のお城の中も、お茶会でも、とにかく警備兵によく会う。立て続けに不審なことが起こったのだし、致し方ないだろう。犯人は誰なのか?ジュリア様の件と、皇太子暗殺未遂事件は、同じ人物の犯行なのか?

 そんな事を考えながら、王妃様を見ると、その隣にはウィンチェスター侯爵が座っていた。
 今日はエドワードじゃないんだな・・・・。と、少しがっかりする。
 よく見ると、王妃様のチィーカップだけ銀製の物だ。連日の事件から、警戒態勢が敷かれているんだわ。
 ここまでの警戒態勢で、犯人もそう簡単には手が出せないはず。今日のお茶会は大丈夫だろうと、少し安心した時だった。

 どこか動作のおかしな女官が目に付く。
「?」
 注意して見ていると、お茶やお菓子を取り替えたり、普通に仕事をしているように見えて、何かを気にしているように見える。何が気になるのだろう?つい気になって、目で追っていると、ふとウィンチェスター公爵様と目が合った。
 視線で何かを伝えてきている。 
「??」
 侯爵が目配せする方向には、兵士が居る。その兵士を注意して見ていると、王妃様しか見ていないことに気が付く。

 妙だ。そう思った時だった。
 
 ガシャン!!
 王妃様の隣に居た夫人が、クッキーを食べて苦しみだす。
 
「毒だ!医師を!医師を呼べ!」
 先ほどの騎士が叫んだと思うと、王妃様に駆け寄って来た侍女が、ナイフを取り出す。そのままナイフを王妃様に振り上げた瞬間に、隣に居たウィンチェスター侯爵が、侍女に剣を突き立てる。
 その瞬間に、不振だった兵士が剣を抜いて、王妃様をめがけて剣を振り上げた。
 レオノーラは、食事用のナイフを思いっきり兵士をめがけて投げる。
「ぐはっ!!」
 うまく命中すると、そのまま、ウィンチェスター侯爵が兵士を取り押さえる。
 
 兵士たちが、わっと集まってきたけれど、取り押さえられた兵士は、ガリッ!と口の中で何かを嚙み砕く。
 そのまま動かなくなった。
「毒を飲んだか・・・。」
 ウィンチェスター侯爵は、悔しそうに顔を歪めて立ち上がる。

 令嬢たちが悲鳴を上げたり、泣き崩れたりと、騒然となる。

 また、事件が起きた。
 レオノーラは侯爵様を見ると、侯爵も傍まで歩いて来る。

「レオノーラ嬢。ありがとう、助かったよ。」
 いつものように微笑んで見せる侯爵様は、おそらくレオノーラを安心させるためだ。
「侯爵様のお役に立てて良かったです。」
 お辞儀をすると、侯爵様は、小声で言ってきた。
「私は、あなたが皇太子妃になることも、また国の為と理解している。」

 侯爵様のその言葉を聞いて、心が凍り付く。

「侯爵様・・・!」
 顔を上げて、レオノーラが反論しようとすると、侯爵様は笑って手を上げ、背を向けてしまった。

 
『どうだい?息子のエドワードと結婚してくれるかい?』
 そう言って笑った侯爵様。両親の嬉しそうな顔。
 好きだと言ってくれた、あの日。

 もう、あの日には戻れないのかもしれない。

 侯爵様も、エドワードも、もう、私の事なんて・・・・。



 こうして、メアリーのお茶会は中断されて終了した。


 
◇◇◇◇◇ 
 


 翌日、
 問題が落ちつくまでは、何もすることがなくなってしまった。
 次は、レオノーラとジュリア様のお茶会が予定されていたはずだが、こう立て続けに事件が起こったので、延期になった。

 先に、王妃様へプレゼントする、刺繍の審査を行うことになった。


 レオノーラは、お城の散歩に出ていた。
 運動と称して、お城を歩き回った。
 広さと美しさを誇るお城の庭園は、見事でテーマパークのようだった。

 だいぶ歩いて行くと、林もあって木陰が気持ち良い。
 並木道の隣は小川が流れていて、水がキラキラと光っていた。
 侍女の1人が「あまり歩き回るのはよくありません。」と言った。
「硬い事言わないで。散歩をしながら刺繍のデザインを考えている所なの。」
 なんて言いながら、そんなことは考えていない。

 このままでは、エドワードは他の誰かと婚約してしまうのではないか?と思えてきた。
 私が戻ってくるまで待っていてくれると思っていた。でも、そんな保証はない。自分の甘い考えが嫌になる。

 
 しかも、ここまで事件が起きてしまい、皇太子妃選びが難航している。
 ジュリア様の毒殺未遂、フィリックス皇太子暗殺未遂、王妃様暗殺未遂・・・。
 王族狙いということか。

 いったい誰が? 
 
 色々と考えていたら、広い広い庭園の隅にまで、来てしまった。

「あれ?ここは・・・」
 急に横道があった。

 高い塀に囲まれていて、門は空いていた。
 先を見てみると、協会のような建物が建っている。

 侍女が言う。
「教会ですね。お城に隣接されている教会があって、王族たちがお祈りに訪れたりするそうです。」
 王族専用ってことかぁ。
 門をくぐると、ユリの花や、名も知らない白い小さい花が咲く花畑があった。

 花畑まで行くと、花畑で花を摘んでいる司祭がいた。

「綺麗。」
 つい、そう呟いてしまったほどに、それは、美しい出で立ちだった。

 司祭の真っ白い服装。
 真っ白い花畑に1人で立っている。
 銀髪の肩までの髪が、風になびいている。
 真上に近い太陽の光が、全てを白銀に包んでいた。

 その1枚の絵のような姿に、レオノーラは目を奪われた。

 司祭様が、レオノーラに気が付いて、こちらを向く。


 目が合った瞬間、時間が止まったかのようだった。

 風が吹いて、白い花びらが舞い上がる。

 綺麗な顔で、司祭が天使のように見えた。


「レオノーラ?」


 司祭様にそう言われて、レオノーラは驚く。


「え?」

 司祭様は、レオノーラの前まで、ゆっくりと歩み寄ってくる。
 銀髪が、キラキラと輝いてなびく。

「久しぶりだね。レオノーラ。私を覚えていない?」
 目の前に、女性のように美しすぎる男性の顔があって、戸惑う。
 司祭様は、レオノーラに天使の微笑みを見せる。

 こんな美しい男性と、会ったことなんか・・・・あ。

「アル?」


 うっすらと記憶が蘇る。

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